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安定か転職か...悩む50代に“昼スナック”ママが伝える「セカンドキャリアの心構え」

2025年09月18日 公開
2025年09月18日 更新

木下紫乃(株式会社HIKIDASHI代表取締役)

セカンドキャリア

東京・赤坂にある「スナックひきだし」は、キャリアに悩むミドルが集まる昼スナック。そこで数多のミドルの転職や転身を見守ってきた"ママ"の木下紫乃氏に、ミドルが納得できるセカンドキャリアを見つけるための心構えを前後編にわたって話を聞いた。

※本稿は、前後編の前編です。『THE21』2024年10月号の掲載記事より、内容を抜粋・編集しています。

 

「本音で話せる場所」をミドル世代に提供したい

キャリアのモヤモヤ解消の鍵は「納得感」

自分の強みに自信が持てず、今後のキャリアに悩んでいる。安定は手放したくないけど、今のキャリアは理想的とは言い難い──。ミドルが抱えがちなそんなモヤモヤを吐き出せる場所として、平日昼に営業しているのが「スナックひきだし」です。

元々、ミドル世代のキャリア再構築を支援したいと立ち上げた会社でした。以前、企業研修の設計をする会社に勤めていて、そこで企業にいながら「ほったらかし」にされたまま細々と働くミドルを多く目にしてきたのが起業の理由。その世代がもっといきいきすれば、本人たちも幸せですし、同時に若い世代にも「あんなふうに歳を重ねたい」というモデルを提供できて一石二鳥だ、と考えました。

それを実現するには、まずミドル世代が「ホンネ」で話す必要があるなと。事業の一環としてセミナーやキャリア相談会も実施しましたが、どうも本音を聞けている気がせず......。それで、もっと気軽に集まれる場を作ろうと、友人のスナックを間借りして「スナックひきだし」をオープンしたんです。

当初の入店条件は、「45歳以上で、モヤモヤを抱えている」こと。すると、想像以上に多くの方が来てくださって、隣り合った人同士で自然と自己紹介が始まり、気軽に悩みや夢を話す、そんな場が勝手に生まれて。そこで「そうか。こういう場所を提供するだけでも、キャリア支援になるんだ」と気づき、20年に赤坂に、自分のお店を出しました。

見ず知らずのお客さん同士が自然につながり、モヤモヤを話したり、会社ではまず見かけないような生き方に触れたりできる──そんな場所になったらいいな、と。

 

選択肢を増やして納得できるものを見つける

来店される方の悩みは千差万別ですが、比較的よくいらっしゃるのは「自分のキャリアを他人と比べてしまい、モヤモヤしている」という方。私に言わせれば、キャリアに良いも悪いもありません。一度きりの人生、他人の目を気にしてしたいことをしないのは、あまりにもったいないと思います。

大事なのは、自分の選んだ道を納得して進むことです。そのためには、多くの選択肢があったほうがいいですよね。そこで必要になるのが、同僚でも家族でもない、様々な世代・業種の人と話せるサードプレイス。スナックひきだしもその一つです。

また、納得できる選択肢を選ぶには、柔軟に考える力も大切です。新しい挑戦に対して「自分には無理」とやる前から思い込んだり、特定の業種や職種に固執したりして、自ら選択肢を狭めてしまう方がいますが、それでは納得できる仕事と出合える確率は下がります。ミドルの転職や転身は一発勝負で決まるものではありませんよ。「数打ちゃ当たる」の心意気で、色々な選択肢を視野に入れたらいい。

実際、スナックのお客さんの中にも、思いもよらない転身を遂げた方が多くいます。先日お店にいらした、大手メーカーで長年デザイナーをしていたという50代の男性は、まったく未経験のタクシー運転手に興味を持ち、先日面接にも行ってきたと言っていました。少し前にガンが見つかり、幸い寛解したものの、それを契機に「より自分らしく生きたい」という思いが強くなり早期退職された方。

しかも、「ただの運転手ではつまらない」と、介護ヘルパーの資格を取り、ゆくゆくは介護タクシーにも挑戦したいという夢も語られていました。

このように、新しいことに好奇心を持って取り組む柔軟な姿勢は、心から満足のいくセカンドキャリアを築くために欠かせないものなのです。実際、そんな姿勢を持つ人のもとにこそ、思いがけない良いご縁が舞い込んでいるように思います。

 

定年後に複数の職場を渡り歩くのも大いにあり

50代からの「転職」のコツ

次のキャリアに飛び込むときは、めげない気持ちを持つことも重要です。先ほども述べましたが、いくら人手不足の時代と言ってもミドルの転職は簡単ではありません。失敗を恐れず、「ダメ元」でどんどん挑戦していくことが成功の鍵です。

リストラ予告を受け、背水の陣で臨んだ転職に成功されたお客様などはその好例でした。この方も当時50代で、実際は大変な思いもされたでしょうに、転職活動の「星取表」をブログで公開するなど、転職という一大イベントを努めて楽しもうとされていたように思います。

そうやって心に余裕を持ち、めげずに挑戦し続ける人は応援されますし、失敗した経験を次に活かすこともできるのです。

それと、歳を重ねているからといって「次の職場で最後」と思う必要はありません。世の中には、会社や組織がごまんとあります。転職してみて「なんか合わないな」と思ったら、また転職しちゃえばいいんです。

うちのスナックの常連にも、定年後だけで3回も転職された70代の方がいます。定年後もまだまだ人生は続くのですから、「最後にひと花」などと言わず、二花、三花と次々咲かせてしまえばいいんです。

 

まずは「実践」から一歩を踏み出してみよう

50代からのマインドセット1

挑戦を重く捉えすぎる方によくあるのが、新しい仕事をしたいと思っても「でも、うまくいくかわからないし......」と考え込んで、結果的にまったく動けないまま時間が経つパターン。

しかし、そうやって何もしないのが一番のムダです。まずはやってみないと、うまくいくかどうかもわかりません。

同様に、老後の人生計画の立案に時間をかけすぎるのも失敗のもと。例えば「どの業界に転職しようか」と熱心に分析を続けても、あまり時間をかけすぎると、その間に世の中はどんどん変わってしまいます。

大事なのは、とにかくまず一歩「実践」に踏み出してみること。その一歩は、小さなもので構いません。もちろん「とりあえず会社を辞める」はNGですが、ただ考え込むのではなく、転職エージェントに登録したり、ボランティア活動をやったり、少額でも実際にお金を得る経験をしたりなど、具体的な行動に移してください。

なお、こう言うとよく「何か資格を取ってみます」とか「講師に習ってみます」という方がいるのですが、これはこれで要注意です。それをするのに本当に資格がいるのか。そこで習う内容は先々ペイできるのか。単なる「お勉強」で終わらないよう、このあたりはしっかり確認したほうがいい。資格を出している会社は稼ぎ方までは教えてくれません。

 

プロフィール

木下紫乃(きのした・しの)

㈱HIKIDASHI代表取締役

1968年、和歌山県生まれ。大学卒業後、リクルートに入社。数回の転職を経て、47歳で大学院修了。2016年、ミドル世代のキャリアの再構築支援をサポートする会社「HIKIDASHI」を起業。企業研修講師や個人のキャリア相談に乗るかたわら、20年に「スナックひきだし」を開店し、週1日昼間にカウンターに立つ。社会福祉士。著書に『昼スナックママが教える45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(日経BP)がある。

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