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株式より国債の方がリスクは小さい...高橋洋一氏が明かす「長期投資が推奨される背景」

2025年07月28日 公開

高橋洋一(経済学者、元大蔵・財務官僚)

株式投資と国債

政府は国民に対し、投資を推奨する姿勢を取り続けている。とりわけNISAの拡充などを通じて、「株式は長期保有すべきだ」とする考え方が強調されている。

しかし、この政府の主張に対し、元大蔵・財務官僚で経済学者の高橋洋一氏は疑問を投げかける。「日本は国債残高が大きく、財政破綻のリスクがある」とする政府の宣伝は正しいのだろうか。

本稿では、高橋氏の著書『お金のニュースは嘘ばかり』から、その実態を解説する。

※本稿は『お金のニュースは嘘ばかり』(PHP新書)より抜粋・編集を加えたものです。

 

「株は長期的に保有すべきものだ」を検証する

日経平均株価と平均収益率

政府のスタンスは、株式投資は長期的に行なうべきだというものです。「株は短期で売り買いするものではない。長期的に保有すべきものだ」という意見も根強く聞かれます。

では、本当のところはどうなのか。数字で検証してみましょう。

1949年の日経平均株価算出開始時から10年後における、毎月の平均収益率を算出したデータがあります。日経平均を10年間保有した際の利回りを示したものです。

平均収益率は13.2%。データのばらつき、リスクを示す標準偏差を見ると5.2で、トータルで見て収益率はだいたいプラスである、といってよいでしょう。背景には、日本が1990年まで高度経済成長を続け、企業収益が上がりつづけてたことが大きい。

他方で、1990年から現在までの平均収益率を見ると、大きく下がって2.0%となっています。リスクの指標である標準偏差は6.6に上がっています。1990年代以前の日本に比べて経済成長が鈍って企業収益が落ちた結果、株式の収益率が下がりました。

1990年以降のデータを見た結論は、「株式はリスクが大きい金融資産である」ということです。長期的に検証してリスクが見られるのであれば、当然「株は長期的に保有すべきものだ」という「常識」も正しくない、ということになります。

 

国債のほうがリスクは低い

株式投資に加えて、一般向け商品となっている国債についても検証してみましょう。

株と同じく1949年から現在までの平均利回りを見ると、10年国債の平均利回りは1.7%。リスクの指標である標準偏差は1.8です。国債の収益率だけを見ると、配当率1%程度を考慮していないのですが、1990年以降の株とあまり変わりません。しかし、投資のリスクは株よりずっと低い。「国債は株式よりもリスクが小さい金融資産である」ということができます。

以上のデータ検証から得られるのは、「国民に対して政府が奨励すべきなのは、株式ではなく国債である」ということです。

 

背景にあるのは「国債悪玉論」

いわずもがな、投資の基本は、リスクを最小にしてリターンを最大すること。相対的にリスクが低く、収益率の高いものに投資したほうがよい、と考えるのは常識でしょう。

にもかかわらず、現時点で政府が推奨するNISAで投資可能なのは原則、日本株式、外国株式、外国債券、REIT(不動産投資信託、国内と外国)などであり、日本国債が入っていません。投資対象の選択という意味で、きわめて大きな問題ではないでしょうか。

背景には「国債悪玉論」がある、と筆者は見ています。

政府や財務省の御用学者は、もう数十年にわたって「日本は国債残高が大きく、財政破綻する」と宣伝しています。が、日本がいまに至るも破綻していないのはご承知のとおりです。

それでも財務省は自らの間違いを認めず、正当化のために「債務残高の国際比較(対GDP比)」を発表しています。債務残高の対GDP比を見ると、わが国は主要先進国の中で最悪の水準となっている、という。

しかし、IMF(国際通貨基金)債務残高の国際比較(対GDP比)と比べてみると、財務省は日本の「資産」の側はあえて取り上げず、「負債」の側だけを取り上げて比較していることがわかります。もはや国民の多くが気付いている噓、まやかしのロジックです。「資産」をひた隠しにして印象操作を行なうのは、日本を財政破綻国と偽り、もっと増税したいからです。

 

国債をNISAに入れて投資非課税に

日本の新聞記者や評論家は、財務省の噓にまんまと引っ掛かりました。財務省の資料を検証せず、鵜呑みにして記事を書いていたのは、怠惰に加えて官僚に操作されているという自覚症状がないからです。結果、官製発表を伝書鳩のように伝えて事足れりとしている。テレビも同様で、NHKはいまだに国債を減らすべきだという話を国民に流しています。

そして政府もまた、財務省の伝書鳩として国民に噓のメッセージを送っている。日本国のバランスシートでは資産より負債、すなわち国債の影響は小さいことが明らかです。ところが政府は国債を減らすべきという妄念にとらわれているので、NISAの投資対象として国債を薦めることができないのです。何という無知、無策でしょうか。

先ほど示したように、政府が推奨するNISAの株式投資について、そもそも「株は長期的に保有すべきものだ」ということはできません。土台の話が間違っているのに、運用益の一部を毎月分配するタイプの投資は、元本取り崩しにもなりかねないリスクがあります。政府の検討案は、本当に高齢者向きなのでしょうか。

高齢者に対する投資リスクを下げるのであれば、財務省が忌み嫌う国債をNISAのなかに入れ、投資非課税とするのが正しいはずです。にもかかわらず国債をNISAの対象外とするのは、高齢者のことなど考えておらず、生活破綻のリスクを押しつける姿勢である、といわれても仕方ないでしょう。

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