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なぜ、40代を過ぎると疲れが取れにくくなる? 疲労度のチェックリスト

2025年07月11日 公開
2025年07月11日 更新

中野崇(スポーツトレーナー)

『40代からの脱力トレーニング』

年齢を重ねるごとに感じる「疲労の蓄積」は、無意識の緊張が原因かもしれません。スポーツトレーナーの中野崇さんは著書『40代からの脱力トレーニング』にて40代からは「鍛えずに体力をつける」必要性を説きます。

本稿では同書より、40代を超えてから感じる疲れについて分析した一節をご紹介します。

※本稿は、中野崇著『40代からの脱力トレーニング』(大和書房)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

なぜ、年とともに疲れは取れにくくなるのか?

●不十分な「疲労回復プロセス」

年を重ねると、睡眠の質が低下することが知られています。具体的には、「深い睡眠(徐波睡眠)」の時間が短くなるのです。若い頃は、眠りの前半に深い睡眠がしっかりと確保され、そこで身体の修復が行なわれていました。

しかし、加齢とともに深い睡眠が減少し、夜間に何度も目が覚める「中途覚醒」が増えていきます。その結果、体内での疲労回復プロセスが十分に行なわれず、翌日に疲労感が残るのです。

さらに、加齢によってメラトニンという睡眠を促すホルモンの分泌が減少することも、睡眠の質を悪化させる要因です。メラトニンが不足すると、入眠しづらくなったり、睡眠が浅くなりやすい状態に陥ります。

●心身が緊張したまま入眠する

一日中、仕事をして心身が緊張した状態のまま眠ってしまうと、睡眠の質はもちろん、本来の回復機能が発揮されないまま翌朝を迎えてしまいます。

「疲れていたら、休養を最優先することの何がいけないんだ?」と思われるかもしれませんが、問題は心身の緊張が残ったまま眠りにつくことです。

近年、私たちの生活は脳を酷使する方向へと偏ってきました。

肉体労働に従事する人であっても、スマートフォンを見て過ごす時間が長くなっており、膨大な情報を目にすることによる脳や身体の負荷は計り知れません。

私自身、本業はスポーツトレーナーという肉体労働がメインとなる業種にもかかわらず、選手のパフォーマンスの分析などでさまざまなデバイスを使用するなど、脳を使う作業が多い働き方へとシフトしています。

このような膨大な情報を受け取る、脳を酷使する作業が続くような状態は、無意識のうちに緊張・興奮状態をつくります。

その状態のままに睡眠に入ると、適切な回復機能が発揮されずに疲労が残ってしまうのです。

身体の緊張においても同様で、とくにデスクワークなどで一日中座り続けると、肩や首、股関節などの関節や筋肉を動かす回数は非常に少なくなります。その結果、全身の血流は低下し、細胞に酸素や栄養が効率よく届かなくなり、疲労物質が体内に滞留しやすくなります。

そのような状態のまま入眠しても、疲労は思うように回復せず、疲れが取れない・倦怠感が強いといった状態になりやすいのです。

若い頃はこのような状態で眠っても、回復能力が日中の疲労を上回っていたので気にならなかったはずです。

いわゆる「無理がきく状態」です。しかし加齢によって徐々に代謝などが落ち、回復能力が低下してくると、日中の疲労を上回ることができず、その結果として疲労が蓄積していきます。

ですから、起きたときに疲れが取れにくいという感覚は、何かを変えるべき重要なサインなのです。

 

恐ろしいのは「疲れを自覚できない」こと

私たちが最も注意すべきなのは、実際には心身のエネルギーが消耗してるのに、疲労を感じられず、疲労状態を長期間続けてしまうケースです。

身体から「疲れている!」というアラートが出ているにもかかわらず、仕事への使命感や責任感などによって、この信号から目を背け続けてしまうのです。そうすると、知らないうちに、どんどん疲労が蓄積してしまいます。

そんな人がある朝、突然起き上がれなくなって仕事に行けなくなったり、急激に身体のどこかが痛くなる、高熱を出すケースは、実はけっこうたくさんあるのです。

読者のなかにも、大きなプロジェクトが終わった瞬間に、体調を崩す人などは多いのではないでしょうか?だからといって、疲れていても、自分の代わりがいないから休めない。この気持ちは痛いほどわかります。

実際に、仕事や育児では「休んでいる場合ではない」場面がたくさんあります。ですが、そうしたときでも、自分の身体の声を無視しないでください。

身体からのアラートに気づけないくらい目の前のことに没頭している人は、簡易的ではありますが、次に紹介する「疲労度チェックリスト」を活用してください。大切なのは「疲労を自覚すること」です。

 

\疲労度のチェックリスト/

 深呼吸が気持ちよくできない(息を吸いきれない/吐ききれない)
 へその周りを指で押し込むと痛みがある
 食欲がない、下痢または便秘が多い
 ふくらはぎの中央を指で押し込むと痛みがある
 酷使していないのに、ふくらはぎがだる重い
 肩コリ・首コリ・腰痛のいずれかがある
 人間関係や働き方、将来など悩みがある(気づいたらそのことを考えている)
 疲れを感じているのにいざ眠ろうと思うと眠れない
 朝起きたときに疲労感が残っている

【指標】
0個:疲れていない状態
1〜3個: 疲労している状態(身体の改善が必要な状態)
4個以上: かなり疲労している状態(身体の改善とともに休養が必要な状態)

 

デスクワークで疲れるのは、脳だけじゃない!

デスクワーク中心の生活でとくに筋肉を酷使していないのに疲れる・だるくなる感覚の正体、多くの場合は全身の血流低下、そして脳疲労によるものです。

全身の血流は、運動により、筋肉や関節が動かされることで促されます。

心臓がポンプの役目を果たしているから、自動的に血液が流れているのでは? と思うかもしれません。たしかに、心臓から流れ出す動脈ではその通りです。

一方で、手足など身体の末端から心臓に戻ろうとする静脈については、主に筋肉がポンプの役目を果たします。静脈は動脈に比べて、拍動による圧を得にくく、血流が滞りやすい(流れにくい)という性質を持っています。

とくに、重力の影響を受けやすい脚部(とくに、ふくらはぎ)では顕著で、溜まった血液の水分が血管の外側に浸み出して、むくみを引き起こします。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれます。ポンプ作用という、筋肉の収縮と弛緩によって血流をサポートする機能によって、血液の循環に大きく関与しているためです。

そのため、全身の血流の状態を推おし量はかるバロメーターとして、ふくらはぎは重要なポイントです。身体を動かしていないのに、ふくらはぎがだるくなる感覚やこの部位の筋肉が固まっているときは、注意が必要でしょう。

では、長時間座り続けることで身体にはどんな変化が起こるのか見ていきます。

●全身の血流が低下する

筋肉の活動が減少することによって、全身の血流が低下します。とくに、血流が滞りやすいのは脚、そしてイスに圧迫されている臀部 、つまりお尻です。これらは、脚の筋肉を酷使していないのに脚がだるくなる原因です。

●肩や首が固まる

肩や首が、動かしにくくなります。骨折などで長期間ギプス固定していた関節が動かなくなるように、私たちの身体には「動かさない関節や筋肉は、動かなくなっていく」という性質があります。

これは、使わない部位に余分なエネルギーを使わないようにするという、身体に備わっている省エネ性能によるものです。

●呼吸が浅くなる

細かい作業をするときなど、何かに集中している間、気づいたら呼吸を止めていた経験がある人は多いと思います。そうでなくとも、デスクワークを長時間続けた結果、息苦しさを感じた経験がある人は多いのではないでしょうか。

とくに、腰が丸くなる姿勢で座る癖がついている人は、腹部が圧迫され、横隔膜が十分に動かないために、呼吸が浅くなりやすい傾向があります。

●姿勢が崩れる

とくに、猫背だと背骨の配列が崩れます。実際は、その前の段階として、腰が固まるという症状が出現し、長時間座った後に立ち上がる際、腰が「メキメキ!」というような感覚があったり、つい伸びをしたくなります。上半身を直立させて椅子に座る姿勢というのは、上半身の重さを腰で支える状態を意味します。

長時間、ほぼ静止状態で上半身を直立させていると、腰の筋肉を収縮させ続けることが要求されます。
収縮し続けているので、筋肉のポンプ作用は失われます。それでいて、姿勢の維持に必要な強さで筋肉が使われ続けるため、筋肉はどんどん疲労していきます。

これに耐えきれなくなったとき、背骨の配列を崩して、つまり姿勢を崩して座るという選択をしてしまいます。

それだけでなく、長期間にわたってこれらの状態が続くと、代謝機能の低下や骨密度の低下のリスクも高まっていきます。

だから、座りすぎは死亡リスクを高めるのです。

お気づきになりましたか?多くの方が、デスクワークによる疲労は、脳疲労が原因だと考えています。
しかし、今紹介した長時間のデスクワークによる4つの「身体に起こる変化」は、れっきとした筋肉由来の疲労症状です。脳疲労だけでありません。

つまり、長時間のデスクワークが多い人がやるべき運動には、鍛えるというよりも、これらの疲労をリセットするという視点が必要なのです。

 

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