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「モンハン休暇」は求職者に響くのか? 会社のアピールポイントの見つけ方

窪田司(コォ・マネジメント株式会社 代表取締役)

求職者のベネフィット

新しい人を採用したいけれど
知名度がない、休日が少ない、初任給が低い、採用コストもない...

そんな経営者や採用担当者の悩みにこたえる中小企業特化型の採用戦略「ゲリラ採用」とは?
20年間にわたり中小企業の採用を支援してきた窪田司さんが解説します。

※本稿は、窪田司著『小さな会社の採用は「スキマ」を狙え ライバルより低条件でも人が集まる方法 』(秀和システム)を一部抜粋・編集したものです。

 

自社の強みではなく、求職者のベネフィットを探そう

採用の成功確率を高める「ゲリラ採用」において、ベネフィットの設計は非常に重要なポイントです。この稿では、ベネフィットの考え方と整理の仕方について、より実践的な内容を詳しくお伝えしていきます。

 

求職者はあなたの会社の強みには興味がない

少し過激なタイトルかもしれませんが、残念ながらこれは事実です。もっと言えば、人は自慢話が好きではないため、強みのアピールは逆効果にすらなる可能性があります。

たとえば、次のような企業プレゼンを聞いたら、どのような気持ちになるでしょうか。

 

《弊社は、1983年に上場企業のエリートグループの一員として誕生し、創業当初から世界最高水準の人材を結集してまいりました。ハーバード大学出身者をはじめ、一流のコンサルティングファームでの経験を持つ人材が在籍し、日本最高峰のサービスを提供してきた実績を誇ります。

3年前には、上場企業グループから独立し、自社単独での上場を果たすという快挙を達成いたしました。さらに、ビジネスプランコンテスト最優秀賞の受賞や「日本の注目ベンチャー企業10選」への選出など、当社の実力は業界内外から高く評価されています。

これらの輝かしい実績は、妥協なき人材戦略と、徹底したプロフェッショナリズムに基づく組織運営の賜物であり、弊社が持つ圧倒的な競争力の証です。

今後も、優秀な人材の採用と育成に力を注ぎ、日本を代表するグローバル企業として、さらなる飛躍を遂げてまいります。》

 

この企業に対して、嫌悪感までは抱かないとしても、親近感を覚えない方は多いのではないでしょうか。一部の例外を除き、多くの人にとっては距離を感じる存在に映るはずです。

これは「人は自分の能力や意見の正しさを確認するために、他者と比較する傾向がある」という社会的比較理論にも通じる反応です。

ここまで極端な例ではないにせよ「当社の強みは◯◯です」「業界トップクラスの技術力があります」といったアピールをがんばった結果、求職者に響かない、あるいは反感を持たれるというケースは非常に多いのです。

たとえば、ある製造業の会社が「当社は、業界をリードする最先端の製造技術と圧倒的な生産力を誇ります」とアピールしていたとしましょう。

これに対して、求職者の心の声は「それって私に何の関係があるんですか?」です。企業が誇る「強み」が、そのまま求職者にとって魅力とは限りません。

・強み = 「特徴や長所」(主に企業視点)
・メリット = 「強みがもたらす利点」(主に企業視点)
・ベネフィット = 「求職者が得られる価値」(主に求職者視点)

この違いを把握していることが大事です。採用企業はどうしても「強み=アピールポイント」と捉えがちですが、求職者が本当に知りたいのは「この企業で働くと、自分にどんないいことがあるのか?」なのです。

それを伝えるには"企業視点"ではなく、当然"求職者視点"に立った情報発信が不可欠です。

 

「企業の自慢話」になっていませんか?

強み・メリット・ベネフィットの違い

では、少しトレーニングしてみましょう。それぞれのメリットを考えてみてください。

【練習問題①】
(強み):当社は創業50年の歴史があり、業界トップクラスのシェアを誇ります。
【練習問題②】
(強み):当社は数々の受賞歴があり、技術力には絶対の自信があります。

以下は、あくまで一例ですが、解答例になります。
【練習問題①】
(メリット):安定した経営基盤のもと、長く安心して働ける環境があります。
【練習問題②】
(メリット):高い技術力があるからこそ、未経験者でもしっかりと学べる教育体制が整っています。

いかがでしょうか?
こうして改めて考えてみれば「企業の特徴(強み)」を「求職者にとっての利点(メリット)」へ変換するのはそれほど難しくないはずです。

しかし、いざ採用コンテンツとなると、強みの羅列になっているものが非常に多いのが現実です。
ナビサイト、求人票、採用パンフレット、採用サイト、説明会スライドなどを、ぜひ見直してみてください。

そこにあるのは「企業の自慢話」になっていませんか?
上の表を参考にして、もう一度見直してみてください。

 

メリットをベネフィットに変える

ベネフィットはメリットの芯

では次に、どのようにメリットをベネフィットへと昇華させ、それをどのように活用していくのかを考えていきましょう。

まず、メリットとベネフィットの違いですが、メリットは企業の強みがもたらす利点であるのに対して、ベネフィットは求職者が得られる価値であるという点です。

つまり、ベネフィットは「求職者が得られる価値」であるがゆえに、ターゲットによって異なるのです。

たとえば、学生時代の私は「年間休日」の多さを重要視しており、それは私にとって明確なベネフィットでした。しかし現在、独立して働いている私はワーカホリック気味であり、もはや「年間休日の多さ」はベネフィットとは言えません。

このように「価値のあるメリット」がベネフィットであり「価値のない(薄い)メリット」は単なるメリットにすぎないのです。

たとえば、千葉市のZOZOマリンスタジアムを使って、複数の企業が企業説明会を開催しています。これは野球、特に千葉ロッテマリーンズに興味を持つ層への認知度向上を目的としたプロモーションです。熱烈なファンにとっては大きなベネフィットになりますし、好きな球団と関われる企業で働けることは「働く意味」につながります。

しかし、野球に興味がない人にとっては、さほどメリットにはなりません。

ほかの有名な事例としては、「モンハン休暇」が挙げられます。ある企業が「3月26日はモンスターハンターライズの発売日となり、社員の業務集中が難しいと予想されるため、この日は休暇とする」と社内告知し、SNSを中心に話題を集めました。

ゲーム好きにとっては明確なベネフィットですが、ゲームに興味のない人にとっては、特別感のないメリットでしかありません。
このように、求職者のメリットは「興味があるかどうか」で、ベネフィットに変わるかが決まります。

中小企業の採用活動においては、インパクトの大きいベネフィットを狙うことが重要です。ベネフィットは、スポーツで言うところの「スイートスポット(芯)」のようなもので、最もエネルギー効率のよいポイントです。

このスイートスポットを見つけ、そこに集中してアピールすることが、ゲリラ採用の真髄なのです。

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