
新しい人を採用したいけれど
知名度がない、休日が少ない、初任給が低い、採用コストもない...
そんな経営者や採用担当者の悩みにこたえる中小企業特化型の採用戦略「ゲリラ採用」とは?
20年間にわたり中小企業の採用を支援してきた窪田司さんが解説します。
※本稿は、窪田司著『小さな会社の採用は「スキマ」を狙え ライバルより低条件でも人が集まる方法 』(秀和システム)を一部抜粋・編集したものです。
「ゲリラ採用」とは"正規軍ではない小部隊が敵の背後で攪乱する"という意味からヒントを得た造語です。この定義を採用活動に置き換えると、次のようになります。
・正規軍でない小部隊で ⇒ 小規模な採用チームで
・敵陣や後方に出没し ⇒ ライバルと違う訴求で勝負する
つまり、普通でない小さな採用チームが、ライバルと違う切り口で人材獲得を仕掛ける戦略、それが「ゲリラ採用」です。大企業のように、潤沢な予算やブランド力で正面から戦うことができない中小企業にとって、王道の採用戦術は不利になりがちです。
そこで、ライバルとは異なるポジションから攻める戦い方=ゲリラ戦略が必要になるのです。
ゲリラ採用を成功させるには、ライバルの情報をしっかり把握することが前提です。
なぜなら、ライバルの「常套手段」と同じことをしていては"普通の採用チームが、ライバルと同じ訴求をしているだけ"になるからです。
そのためには「採用競合を分析する」という視点が必要です。ライバルの情報を知らなければ、無意識のうちに「ごく普通の小さな採用チームで」「ライバルと同じような訴求活動」をしてしまいます。こういうケースが、じつはとても多いのです。
たとえば、インターンシップフェアのような大規模イベントを見てみてください。
多くの企業が、テーブルクロス・椅子カバー・タペストリーといった、定番のブース装飾を揃えています。一見、整って見えますが、よく見ると皆がほぼ同じスタイル。果たしてこのような装飾で、求職者の記憶に残るでしょうか?
おそらく多くの企業は、他社の動きにアンテナを張ることなく、採用支援会社に言われるままに導入しただけでしょう。
実際に私が支援したある企業では、当初そのようなブース装飾を取り入れ「これで来場者数が増える」と期待して臨んだものの、結果は芳しくありませんでした。
そこで発想を転換し、あえて手作り感のあるブース装飾にしたところ、来場者数を大きく伸ばすことに成功しました。
同じようなことは、合同企業説明会の告知ポスターやウェブサイトにも言えます。参加企業の一覧に、大企業や有名企業の名前は目立つ形で掲載されるものの、その後に続く多くの中小企業の名前は省略され、一括りに「その他」扱いされているケースが大半です。
このため、多くの中小企業は「大企業や有名企業を目当てに来場した求職者」の関心を惹きつける必要があります。そうなると、このイベントに「どのような企業が出展しているのか」「どのようなアピールをしているのか」を事前に把握している企業と、そうでない企業とでは、結果に大きな差が出てくるのは明らかでしょう。
会場図をあらかじめ確認し、自社の出展位置だけでなく、近隣にどの企業が並んでいるかを把握して、求職者の動きを予測したうえで臨むことが、成功への第一歩です。
自社の強みを理解すると同時に、他社、つまり採用競合の動きやアピール方法を知ることが、戦いに勝つ鍵となります。まさに「孫子」にあるとおり、採用においても「彼を知り己を知れば百戦殆からず」の姿勢が重要なのです。
つまり、負けないゲリラ採用を実現することが大切なのです。
「採用競合を分析する」
この意識を常に持って臨みましょう。

なぜ、小さい会社ほど「ゲリラ採用」が求められるのでしょうか?
それを明らかにするため、「採用力=企業価値×採用活動力」という考え方に基づき、企業を4タイプに分類しました。採用力とは「企業価値」と「採用活動力」の2軸からなります。企業価値とは、求職者から見た企業の「規模」や「知名度」です。
・企業規模:従業員数300人を基準(ここを境に採用傾向が変わる)
・ 知名度:ランキングやメディア掲載実績などに基づく
※ あくまで「世間一般の価値」ではなく、求職者視点の価値として扱います。
一方、採用活動力は以下のように定義します。
・ 採用担当の人数(採用20人に対して1人が目安)
・ 採用予算(1人あたり100万円を基準とする)
この「企業価値」と「採用活動力」をかけ合わせることで、企業は上図の4タイプに分類されます。当然、各タイプで採用戦略も変化します。
私自身、この挑戦者の採用(Dタイプ)に分類される企業の支援を多くしてきたこともあり、このタイプの採用の難しさは痛感しています。
たとえば、こんな課題に直面します。
・求職者に認知されておらず、そもそも応募が来ない
・採用コストが限られ、十分な情報発信ができない
・条件面で競合に負け、第一志望になれない
・面接精度が低く、問題社員を見抜けない
・ようやく内定を出しても辞退されてしまう
・採用できても定着しない
・採用後に成長できない、活躍しない
企業価値が高い企業や、採用活動力のある企業であれば、こうし
た問題に対してチームでの施策導入や、外部パートナーの活用が可
能です。しかし、人も予算も限られているDタイプの企業は、採用
担当者自身の工夫と行動力が鍵になります。

成功しているDタイプ企業の多くに共通するのが、採用担当者自身の魅力=属人化によって求職者を惹きつけている点です。実際に採用担当者の異動によって、採用力が急に伸びたり、逆に低下したりするケースは珍しくありません。
一般的にビジネスの世界では「属人化=リスク」とされることが多いです。
しかし、熾烈な人材獲得競争の現場では、リスクを取らず、正攻法だけで勝てる企業はごくわずかです。むしろ、ハイリスクを承知のうえで、ハイリターンを狙いにいかなければ勝ち目がない局面も、確かに存在します。
私自身も過去に、あるセミナーで著名な方にこう質問したことがあります。
「中小企業の採用では、採用担当者の個性や対応力が結果に大きく影響していると感じています。こうした"属人化"について、どのようにお考えですか?」
そのとき返ってきた答えが、とても印象的でした。
「採用は、人(採用担当者)が人(求職者)を惹きつける活動。だから、中小企業に限らず、属人化は当然起こり得ると思います」
この言葉に、私は深く納得しました。
だからこそ、小さな会社が取り組むべきなのは、大企業では実施しにくい"採用担当者の個性や想い"という属人化の性質をも活用したゲリラ採用なのです。
もし、あなたが小さな会社の経営者、人事責任者、あるいは採用担当者であるなら、私は声を大にして言いたい。
「ゲリラ採用に取り組んでください。ゲリラ採用に持ち込めば、大企業よりも中小企業のほうが有利になれます」
それは中小企業ならではの戦略だからこそです。
更新:05月19日 00:05