
新しい人を採用したいけれど
知名度がない、休日が少ない、初任給が低い、採用コストもない...
そんな経営者や採用担当者の悩みにこたえる中小企業特化型の採用戦略「ゲリラ採用」とは?
20年間にわたり中小企業の採用を支援してきた窪田司さんが解説します。
※本稿は、窪田司著『小さな会社の採用は「スキマ」を狙え ライバルより低条件でも人が集まる方法 』(秀和システム)を一部抜粋・編集したものです。
狙うべきは、入社後に大きく成長する「化ける人材」です。
私が定義する「化ける人材」とは「総合的」に優れているのではなく、「部分的」に優れており(必須能力)、「即戦力」ではなく「素材型」である(伸びしろ)人材です。
採用・定着の観点からも「化ける人材」は有利です。
まず、採用についてですが、即戦力の採用には高コストがかかりますが、化ける人材の採用は高倍率な争奪戦にはなりにくく、コストも抑えられます。
さらに、定着率の高さも魅力です。自分に自信のある即戦力人材は、少しでも不満があれば転職を選びがちです。一方、化ける人材は「自分は未熟」と思っているため、成長後に企業への感謝や忠誠心が生まれやすいのです。
これは、YouTube にアップされている「新R25チャンネル」の動画でも、ビリギャルの著者である坪田信貴氏が語っていた「できない人を採用すると忠誠心(ロイヤルティ)が生まれる」という話にも通じます。
詳細は動画を視聴してほしいのですが、できなかったことができるようになるとほめることができるという点で、できない人材はできないことを自覚しており、ほめるポイントがたくさんあるので、やる気を発生させやすいという内容です。自己効力感の低い人材を育てて化ける人材に導くという考え方は、私の考えと一致するところです。
さらに、ある有名ベンチャー企業では課題に対して「改善幅」で評価しており、これはまさに「伸びしろ」を見て化ける人材を見抜く評価基準と言えます。
即戦力人材ではなく、化ける人材(一芸に秀でた伸びしろの大きい人材)を採用するという考え方をご理解いただいたと思います。しかし、その一芸を何にするか決めるのが難しいという声もあるでしょう。なぜなら、それは画一的な正解があるものではなく、自社の事業内容や組織構造によって異なるからです。
ここで重要になるのが「自社なりの勝ちパターン」を確立することです。
たとえば、以下のような考え方の違いが、それをよく表しています。
・他社が評価する優秀な人材を、競争倍率の高い中、奪い合う採用
・自社にとって有益な人材を、競争倍率が低い状態で、選ばれる採用
この考え方を具体的にイメージしていただくために、私が感動した事例をご紹介します。
ある食品製造業のC社では、工場で障がい者雇用を積極的におこなっていました。私は当初、法定雇用率や社会貢献の一環としての雇用かと思い、社長に聞いてみました。
すると返ってきた言葉は「彼、彼女らは障がい者だから採用しているのではなく、我々の製造を支えてくれるキーマンとして採用しているのです」というものでした。
C社の工場は、騒音が非常に激しく、通常の会話やインカムを使っても、意思疎通が困難な環境です。そうした中で、口話(読唇術)や手話ができる聴覚障がい者の従業員たちは、非常に高いパフォーマンスで業務に貢献していたのです。
まさに、これは「他社が評価する優秀な人材」ではなく、「自社にとって有益な人材」を採用している好事例と言えるのではないでしょうか。
また「総合的」に優れた人材を採用できるなら、それに越したことはありませんが、そうした人材は競争も激しいです。誰からも好かれる人材は、面接でも「落とす理由が見つからない」ために合格しやすい傾向があります。
一方で「部分的」に優れた人材にはリスクもあります。面接官は、自身が次の面接官(上司など)に「なぜ合格にしたのか?」と問われるリスクを恐れるため「疑わしきは不合格」となりがちなのです。「入社後に問題を起こしたらどうしよう」「活躍しなかったら責任を問われるのではないか」といった不安が、判断を鈍らせます。
これは「ネガティビティ・バイアス」と呼ばれ、ポジティブな情報よりネガティブな情報に注意を向けやすく、記憶にも残りやすいという傾向のことを指します。これらの人間心理を理解したうえで、マインドを整えなければ、他社と同じような普通の採用活動に陥ってしまいます。

では、本当に「部分的に優れた人材」が活躍できるのでしょうか。
私が採用に関わったD社では、学力試験をなくしたところ、3年間でトップクラスのセールスが2人も採用できました。
この2人は、従来の採用基準であれば不合格であり、仮に従来のバランス型評価基準では、合格していなかったかもしれません。
スポーツの世界でも、こうしたアプローチはあります。
たとえば、福岡ソフトバンクホークスの3軍は「育成枠」として、一芸に秀でた選手を獲得し、育てています。実際、メジャーでも活躍中の千賀滉大選手(育成ドラフト4位)や、日本代表の周東佑京選手(同2位)は、その代表例です。
ここまで読むと、採用要件にする要素を絞る気になったのではないでしょうか。
絞り込むときには、上のようなフローで判別できます。
採用要件を絞り込む際には、次のように考えると整理しやすくなります。
・変わりやすく、自社で育成できる要素 → 育成要件
・変わりにくい、もしくは育成が困難な要素 → 採用要件
つまり、育成できる能力が多い企業ほど、採用で求める能力が少なくて済むのです。
たとえば、求める能力が5項目ある場合、すべてを採用段階で満たす人を探すよりも、2つだけ満たしていればOKで、残りは育成で補うという発想のほうが現実的です。
「育成上手は採用上手」とも言えますし、逆に「育成が苦手な組織は採用にも苦労する」というのが実情です。
なお「変わりやすい能力/変わりにくい能力」の分類については、服部泰宏氏の『採用学』で紹介されているブラッドフォードのTopgradingの理論を参考にするのがオススメです。
【変わりやすいもの】
・リスクに対する志向性 ・技術知識的な先端性 ・教育の水準 ・仕事経験 ・自己に対する認識 ・コミュニケーション ・第一印象 ・顧客志向 ・コーチング能力 ・目標設定 ・エンパワーメント(権限移譲、自立促進)
【変わるものの変わりにくいもの】
・判断能力 ・戦略的スキル ・ストレスマネジメント ・適応力 ・傾聴力 ・チームプレー ・交渉スキル ・チームビルディング ・変革のリーダーシップ ・コンフリクトマネジメント(利益の衝突や対立の解消)
【変わりにくいもの】
・知能 ・創造性 ・概念的能力 ・部下の鼓舞 ・エネルギー ・情熱 ・野心 ・粘り強さ
更新:05月19日 00:05