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平和は「戦争がない貴重な時期」 言葉の世界観を変える言い換えのスキル

2025年08月04日 公開

グロービス,嶋田毅(グロービス経営大学院教員)

言い換え

「言いたいことを言葉にする」のは容易ではありません。多くのリーダーが以下のような課題を抱えています。

・指示があいまい:わかりづらいから人が思ったように動かない
・考えがまとまらない:要領を得ないから相手に伝わらない
・話の内容がフワっとしている:説得力がないから相手に刺さらない

このような課題を解決するために、数々のビジネスリーダーを育成してきたグロービスが「言いたいことを、瞬時に伝わる言葉に変換する25のトレーニング」を紹介します。本稿は「別の表現に言い換える」レッスンです。

※本稿は、グロービス,嶋田毅著『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

言い換えで、その言葉の持つ世界観を変えよう 

同じ事象を違う言葉で表現するコツ

モノや概念には一般的に名前がついています。そして人間はその名前(表現)を用いて物事を考えます。ただ、決まりきった表現の中で考えていると、創造的な思考が阻害されてしまうことがあります。

そこで役に立つのが、その表現を別の言葉にしてみることです。それにより、それまで見逃していた視点に気づいたり、逆に複雑な概念を単純化して考えられたりなどのメリットが得られます。

たとえば、地球環境の保護を次のように言い換えてみましょう。

「自分の子どもや孫たちへの投資」  

この表現は、環境保護が将来世代に対する責任であることを強調するものです。目先の短期的な利益に囚われるのではなく、将来世代に健全な環境を残すことが私たちの大きな責任であるという意識につながります。

もう1つ考えてみましょう。次のように言い換えるとどうでしょうか。

「地球の健康管理」

このように言い換えることで、地球を単に私たちの住む場所としてではなく、生命体(生き物、死にゆくもの)や生態系として捉えることができます。さらに、環境を守ることが単に資源を節約することではなく、他者への思いやりにつながるなどの意味を持つことを意識できます。

同じ事柄を考えるにしても、別の表現にすることによって見える世界が少し変わることがおわかりいただけるでしょう。

その他にも以下のような言い換えによって見える世界観が変わってきます。
「平和」→「戦争がない貴重な時期」
「子ども」→「小さな冒険家」、「笑顔で世界を明るくする魔法使い」
「親友」→「嬉しさを2倍に、悲しみを2分の1にしてくれる存在」
「大学」→「将来の伴侶を見つける可能性の最も高い場所」
「想像もつかない新しいテクノロジー」→「15年後には当たり前のテクノロジー」
「歴史」→「勝者の伝記をつなぎ合わせたもの」「現代の問題解決のヒントが埋もれている山」

コツとしては、図5─1に示したような点が挙げられます。

このうち、他事例を参考にするというやり方は、ビジネスモデルを考えたりする際にも役に立ちます。
たとえば「〇〇業界のエアビーアンドビー(Airbnb)といえるようなビジネスは考えられないか?」と課題を与えてみると、いくつものアイデアが出てくるでしょう。

単純なことですが、たくさんアイデアを出すという姿勢も創造性を高めます。他人が通常5個で妥協するところを、10個、15個と考えてみることが、半強制的に思考の枠を取り払うことにもつながるのです。

 

演習問題1

■設定

あなたは玩具メーカーの課長。部下の女性社員Aさんから「妊娠しました。5カ月後から産休に入りたいのですが」との連絡を受けました。どのような声掛けをしますか。
相手の状況:「おめでとう」と言ってほしいものの、産休を取ることについて職場に迷惑をかけてしまわないかと心配しているかもしれない。

■回答例・解説
以下は極めて普通の対応例です。悪いというわけではないですが、あまり工夫はありません。

[NG例]
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それはおめでとう。大変だけど頑張ってね。どこかで引き継ぎの話などしようか。
----------------------------------------------- 

このケースの設定は玩具メーカーということなので、子どもは将来の顧客である、という新しい見方を提示しつつ、気遣いを示してみました。

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それはおめでとう。うちのような玩具メーカーにとって子どもは宝だからな。宝を1人増やしてくれて本当に嬉しいよ。出産や子育ては大変だけど頑張ってね。産休や育休の間はこちらでしっかりAさんの仕事分はカバーするから、心配せず子育てして。
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さらに工夫した例が以下です。

[OK例]
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それはおめでとう。うちのような玩具メーカーにとって子どもは宝だからな。宝を1人増やしてくれて本当に嬉しいよ。出産や子育ては大変だけど頑張ってね。「子育ては親育て」ともいう。Aさんも子育てを通じて、さらに人間として円熟味を増すはずだ。
帰ってきた時のAさんの成長も楽しみだよ。産休や育休の間はこちらでしっかりAさんの仕事分はカバーするから、心配せず子育てして。
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「子育ては親育て」自体はすでに使い古された慣用表現ですが、それでも使い方で価値は出るものです。

直接創造性につながる訳ではないかもしれませんが、常日頃からこうした言い換えを意識することは、単に創造的思考が鍛えられるだけではなく、チームビルディングや良き職場環境の醸成にもつながります。
そしてそれは結局、創造的な発想をしやすい環境にもつながっていくのです。

 

演習問題2

■設定

あなたはテレビ局のスタッフ。「若者のテレビ離れ」が重大な問題となっている。多面的に物事を考えるべく、若者のテレビ離れの原因を、別の表現で考えてみたい。

■回答例・解説
以下の例はどうでしょうか。

[NG例]
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テレビ視聴者の高齢化
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これはテレビ視聴者に占める若者の比率が減ったことを単純に言い換えただけで、新しい示唆にはつながりません。若者にアクションをとりたいと考えるのであれば、もっと別の角度から見た言い換えが必要でしょう。
ここでは2つの言い換えをしてみます。

[OK例]  
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若者の双方向メディア志向の強まり
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この表現は、若者が多様なメディアに関心を持っているという点に着目しています。特に、若者がテレビのような一方向のメディアから、よりインタラクティブ(双方向)で、能動的関与ができ、また刺激的な体験が味わえるメディアにシフトしていることを示唆しています。

[OK例]
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若者のコンテンツ消費パターンの変化
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これは、よりコンテンツに着眼し、若い世代が異なる形式のコンテンツを消費しているという見方を提供するものです。かつて「最強のコンテンツは彼氏/彼女からのLINE」という表現もされました。

これは、若者がテレビという媒体に向いたコンテンツ、特に予定調和的なものや、編集されて切り取られたものを好まなくなっていることを示唆します。一方で、マルチアングルのライブ放送など、コンテンツの工夫次第では、改めて若者を振り向かせることも可能かもしれないという意識をもたらします。

いずれの言い換えも、単に若者がテレビを見なくなったという視点ではなく、メディアやコンテンツの利用・消費の変化というより広い視点でこの現象を考えるきっかけをもたらしてくれます。

 

■コツ・注意点

言葉を言い換える際には、その言葉が使われている文脈をしっかり理解することが重要です。文脈を無視して言葉を言い換えると、意味が全然変わってしまったり、不適切な表現になる可能性があります。

たとえば、子どもを大切にしようという文脈で、「無知な動物」などと言い換えることは不適切です。「スポンジのように何でも吸収する生き物」のほうがはるかに適切でしょう。特にビジネスにおいては皆にポジティブな方向に向いてもらうことが大切だという意識を持ちましょう。 

また、その言い換えが受け手にとって理解しやすいものであることも大切です。あまりにも斬新すぎる表現は、かえって混乱を招くことがあります。たとえばAI(人工知能)を、データから知見を得る能力を強調して「情報のシェフ」と言い換えてもその意味は伝わりにくいかもしれません。
余計な説明をしなくても「なるほど、そうだよね」と思ってもらえるレベル感を意識したいものです。

 

【グロービス】
グロービスは1992年の設立以来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。

「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびにオウンドメディア「GLOBIS 学び放題×知見録」により、これを推進しています。
さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。

企業サイト:
グロービス:https://globis.co.jp/
グロービス経営大学院:https://mba.globis.ac.jp/

 

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