時代によってビジネスパーソンに求められるスキルや知識は大きく変化します。昨今では、新型コロナウィルスの流行に伴いIT化が急速に進み、世の中の流れや人々の働き方も大きく変わってきています。
ビジネススクールのグロービスは、「2030年に向けて世の中の流れはますます加速し、その時になってから学び始めるのでは遅すぎる」と指摘します。そして、こうした変化を察知する感度を磨くには、世の中の構造や背景に対する理解と予測が欠かせないといいます。
ここでは、ビジネスパーソンが新時代を生き抜くために、個人が身に着けておきたいスキルや思考法を紹介します。
※本稿は、グロービズ著『MBA 2030年の基礎知識100』(PHP研究所)から一部を抜粋し、編集したものです。
VUCA(ブーカ)の時代をサバイブするうえで学ぶべき内容は、どんどん変化していきます。ここでは、学ぶべき内容と学び方の変化について、2030年における在り方を議論します。
まず学ぶべき内容ですが、ビジネスパーソンであれば、やはりMBAで学ぶような戦略、マーケティング、アカウンティング、ファイナンス、HRM(人材マネジメント)、OBH(組織行動とリーダーシップ)といった基礎的な経営学の基本は習得したいものです。
その際にポイントとなるのは、極力、体系的に学ぶことです。これまで多くのビジネスパーソンは、OJTを通じて、あるいはその時々の関心に応じて、書籍を読んだりセミナーに参加したりして学ぶというケースが多かったと思います。
これはある程度仕方がないのですが、こうした「オンデマンド」的な学びは、実は効果が薄れてしまいます。経営学のあらゆる知識や素養は互いに連関しており、相互補完的だからです。
例えば、人を動かすというテーマについて、OBHだけを学んでも効果は薄いです。同時並行的に、HRMや管理会計などを学ばなくては、効果が限定的になります。だからこそ、体系的に学ぶことが必要なのです。教育を提供する側の経営大学院なども、それを踏まえて、教育内容や教科書の内容をアップデートすべきと言えるでしょう。
まずは、経営の全体像のエッセンスを的確につかめるような題材を準備することが期待されます(おそらく、それは実現されるでしょう)。
学び方のポイントは、スマホも活用するなど、うまくITツールを使いこなすことです。幸いなことに、2030年までには、インターネットで学べる教材が多数出現することが予想されています。積極的に活用しましょう。
また、書籍を読むという学び方は相変わらず有効なので、あるテーマについて学習したいのであれば、それに関連する良書を数冊は読むと、立体的に把握ができます(良書はレビューなどを参考に選ぶといいでしょう)。
独学では限界がありますので、他者と議論することも大切です。これもリアルの場だけではなく、インターネットを活用すると効果的です。往々にして人間の視点は固定化しがちです。他人の視点や実務での経験なども学びの糧にするといいでしょう。
一番重要なことは、学んだことを実際に使ってみて、フィードバックを得、バージョンアップさせながら定着させることです。例えば、エクセルを用いた分析などは、手を動かさないと絶対にモノになりません。機会を捉えて、実務で使いながらレベルアップさせましょう。
自身の周りにいる「うまい人」にコツを聞くことも効果的です。「我以外皆師なり」という言葉もあります。全体像を意識しながらも、「このテーマはこの人のやり方を参考にすればいい」という対象を見つけると効果的です。
一度学んだことのアップデートも忘れないようにしてください。例えば、マーケティングというテーマ1つ取っても、ITの進化などでやれることがどんどん変わっていきます。大枠の体系を理解したうえで、「HOW(やり方)」の進化に目を向けましょう。
そのためにも、世の中で起こっていることの新潮流については、ある程度意識を向けるといいでしょう。大枠の体系を早期に身につけたうえで、最先端の変化を取り入れ、バージョンアップすることが、今まで以上に求められるようになるのです。
まず、2030年と現在で、キャリアデザインを考えるうえで変わる前提を理解しましょう。
1つ目に、転職や副業がより当たり前になるという点があります。かつては(特に大企業の場合)、メンバーシップ型の雇用で定年まで働くというケースが当たり前でした。しかし、こうしたシステムはほぼ限界に来ています。
給与だけは高いけれど価値を生み出せない社員を雇い続ける体力は、多くの企業には残っていません。企業そのものの存続可能性も大きく揺らいでいます。若手であっても、1つの企業が定年まで面倒を見てくれるわけではないという意識が必要でしょう。
2つ目は少子高齢化です。かつては55歳定年で、その後しばらくしてからの年金で人生設計を立てることも可能でした。
しかし、2030年から遠くない未来には、70歳まで働き、年金受給はさらにその数年後という時代になるでしょう。その時代に向けた人生設計が必要です。
3つ目はテクノロジーの進化です。少子化は社会にとってダメージではありますが、テクノロジーで補える部分は大です。テクノベートの力を常につけながら、長いビジネス人生を乗り切っていくことが必要です。
こうした時代に必要になるのは、自分の年齢やライフイベントと、想定される世の中の動きを同時並行で見据えながら、その時々で自分がどのような能力を持っておくべきかを考えることです。
例えば、2025年に30歳の人であれば、2030年には35歳、2035年には40歳、2040年に45歳となります。その時々で世の中はどのように変わっていくでしょうか。特にテクノロジーは指数関数的に進化します。
その時にバリューを出すうえで、自分にはどのような力が備わっていないといけないかをしっかり考えておかないと、時代に取り残された残念な人になってしまいます。
35歳で第1子が欲しいのであれば、出産・育児なども視野に入れつつ能力開発に努める必要性も出てきます。50代前半でその子どもが大学受験を迎える、といったシミュレーションも必要です。もちろん、テクノロジーがすべてではありませんから、それ以外の部分で価値を出すということも意識しましょう。
例えば、他者が真似しにくい能力(財務や営業力など)がずば抜けていれば、これも大きな変化の時代を切り抜けられる可能性を増します。仮に「100人に1人のスキル」を2つ持っていたら、大きな武器になるでしょう。
では、そうした能力を手にできる見込みが立った次に、何を考えればいいのでしょうか。それは、俗に言う「志」の部分になるでしょう。
若い人にとってはピンとこない話かもしれませんが、人のモチベーションを高めるのは、やはり社会貢献も意識した志です。金銭的な側面だけを考えて働く人生は窮屈ですし、味気ないものです。長い時間、イキイキと働けるようにするためにも、何らかの志を持ち、自分を鼓舞することが必要です。
もちろん人によって価値観は違いますから、仕事ではない部分でやりがいを見つけるというやり方も、もちろんありです。自分が何に価値を置きたいのか、表現を変えると、自分が譲れない(捨てたくない)重要な価値観は何なのかを、改めて認識すべきです。
キャリアデザインは、1人で考えていては息が詰まることもあるので、参考になる知人と交わることも大切です。それは人脈を広げることにもつながりますし、それ自体が生きがいの1つになることも多いからです。多面的な人的ネットワークを築くことも大切です。
更新:11月21日 00:05