
「言いたいことを言葉にする」のは容易ではありません。多くのリーダーが以下のような課題を抱えています。
・指示があいまい:わかりづらいから人が思ったように動かない
・考えがまとまらない:要領を得ないから相手に伝わらない
・話の内容がフワっとしている:説得力がないから相手に刺さらない
このような課題を解決するために、数々のビジネスリーダーを育成してきたグロービスが「言いたいことを、瞬時に伝わる言葉に変換する25のトレーニング」を紹介します。本稿は「コンピテンシーを言語化する」レッスンです。
※本稿は、グロービス,嶋田毅著『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです

コンピテンシー(Competency)は、特定の仕事や活動を効果的に遂行するために必要な行動特性を指します。通常は組織において高い業績を残している個人を観察したり、ヒアリングすることによって特定していきます。
個人が職務を適切にこなすために必要な能力の総体を表しており、職場でのパフォーマンスの質や、当人のキャリアの成功を左右する要素とされています(図4─2)。
職務によって求められるコンピテンシーは異なりますので、その職務において重要なキーワードを洗い出していくことが第一歩となります。
たとえば、商品開発担当者であれば、「自社技術の理解」「顧客志向」「リサーチ力」「アイデア創出」「プロジェクトマネジメント」「部門横断的コミュニケーション」「費用対効果に対するこだわり」などです。
ケースにもよりますが、観察・ヒアリング対象の共通項に着目し、20個程度の要素を挙げたうえで、特に優先順位が高いものを絞り込んでいくことが多いです。
コンピテンシーは、行動のベースとなる価値観や思考・性格などの要素を重要視する点が特徴です。また単なる知識とは異なり、定量化、可視化をしにくいという特徴があります。
それゆえ観察やヒアリングに基づいた具体的で丁寧な言語化が求められます。
たとえば、商品開発者の「リサーチ力」に関するコンピテンシーであれば、次のように記述したりします。観察・ヒアリング相手に共通する度合いが高かった要素に特に注目します。
「市場のトレンド、顧客ニーズの深掘りに特に時間を使っている。表層ニーズのみにとどまらず、潜在的なターゲット顧客とコミュニケーションをとることで、深層心理を探ろうとしている。競合製品の動向やその特性、顧客の評判なども満遍なく収集している。また、効果的なリサーチ手法の習得にどん欲に取り組んでいる。これらを活用することによって、新製品の開発過程において有用な情報を提供している」
端的にいえば、「それって具体的にはどういうこと?」を意識した記述が求められるのです。状況によっては、レベルごとにコンピテンシーの記述を行うこともあります。たとえば5段階で「5」の人にはこのような行動特性がある、「4」の人は...と記述するのです。
コンピテンシーがしっかり定義されていると、企業としては高いレベルの行動を再現性高く提供することが可能となります。特に会社を規模化するうえで、コンピテンシーを言語化して定義することは非常に大切な営みとなります。
■設定
あなたはある金融機関の人事課スタッフ。上司から、「優秀な営業担当者」のコンピテンシーを定義してほしいと依頼を受けました。
■回答例・解説
ここで、以下のような書き方では不十分です。
[NG例]
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高い顧客志向を持つ:顧客のニーズを正確に捉え、最適な商品やサービスを提案する能力を持つ。(以下略)
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書いていることは間違いではありませんが、ありきたりで新しい示唆がありません。「まあそうだよね」程度の表現ではコンピテンシーを言語化したとはいえません。
今回のケースでは以下のようにまとめてみました。営業は商品企画などに比べても、人材の標準化が強く求められる活動です。キーエンスのような営業の強い組織では、高いレベルの営業活動を早期にこなせるような人材育成制度が整っています。
[OK例]
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・高い顧客志向を持つ:顧客のニーズを正確に捉え、最適な商品やサービスを提案する能力を持つ。単に商品を売るだけでなく、顧客のライフステージや将来の環境変化に合わせた最適なプランを考案し、顧客に安心感を提供することができる。
・優れたコミュニケーション能力:商品の内容や利益をわかりやすく説明するための伝える力を持っている。特に、複雑な条項などを、あらゆる顧客に理解しやすい言葉で伝える能力に長けている。
・高い学習意欲:法制度の変更、新しい商品の発売、競合商品のレベルアップなど、常に環境は変化している。そのため、知識を継続的にアップデートし、それを営業活動に反映させる努力を日常的に行っている。
・誠実な対応:金融商品は顧客の大切なお金に関わるうえに、彼らのライフプランにも大きな影響を与える。誠実さをベースに、顧客の利益を最優先に考え、それが姿勢にも表れている。「自分のノルマを達成するために売る」という姿勢を感じさせない。
・自己管理:優秀な営業担当者ほど多くの顧客を持ち、スケジュールも埋まりがちとなる。それゆえ、計画をしっかり立てたうえで効率的にタスクを管理している。ストレス解消なども適切な方法で行っている。
・振り返りの姿勢:1日の仕事を日報などにまとめ、振り返る習慣を持っている。それを翌日以降に活かすことで日々の活動をレベルアップさせている。
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■設定
あなたは学習塾の講師育成担当者。優秀な小論文担当講師のコンピテンシーを言語化してください。
■回答例・解説
これも具体化が不足している例から見てみましょう。
[NG例]
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専門知識の深さと向上心:小論文の書き方、論理的思考、文章構成の技術など、小論文に関連する深い知識を持っている。
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これも間違ってはいませんが、「具体的にはどういう能力か」が欠けています。
今回のケースでは以下のように書くとわかりやすいでしょう。講師や教師という仕事は往々にして個人の力量に任される部分が大ですが、やはり優れた講師には共通するコンピテンシーがあるものです。
[OK例]
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・専門知識の深さと向上心:小論文の書き方、論理的思考、文章構成の技術など、小論文に関連する深い知識を持っている。また、社会学、哲学、歴史、政治、科学など、特に小論文のテーマとなることが多い多様な分野に対する広範な好奇心を持つとともに、日々文章に関する力や感性を磨く努力をしている。
・コミュニケーションスキル:生徒との効果的なコミュニケーションを図り、指導を適切に行うことができる。生徒の文章の表層にとどまらず、そのように書いた生徒の意図を探ってそれを理解しようとしている。
・的確なフィードバック:生徒の作文に対して建設的かつ効果的なフィードバックをスピード感をもって提供できている。良い点と改善点を明確にし、生徒が改善を図れるよう、言語化してそれを伝えることができる。また、それぞれの生徒のモチベーションを高め、自発的な学習を促進するように心がけている。
・高いエネルギーレベルとユーモアのセンス:講師自身の情熱や熱意が、生徒の学習意欲を高めている。一方でユーモアもあり、クラスの雰囲気を和やかにすることにも長けている。
・組織への貢献:自身の能力向上にとどまらず、学習塾の教育プログラム全体を意識し、全体の底上げに貢献しようとしている。教材選定やカリキュラムの改訂にも積極的に関与している。他の講師の意見を聞き、そこから学ぶ姿勢も高い。
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このくらいの言語化がなされていれば、採用や育成に関しても大きなヒントが得られるでしょう。
ちなみにグロービスでも新人講師の採用に関しては、いくつかの項目にわたって望ましいレベルを言語化して示しています。それによって採用や育成が安定し、成長を実現しながらも、高い満足度の教育サービスを安定的に提供できているのです。
■コツ・注意点
コンピテンシーの言語化に当たっては、1人のスーパースターにだけヒアリングを行うと、往々にして他人には真似できないようなものになってしまうことがあります。
スーパースターは参考にしつつも、十分に高いレベルのパフォーマンスを残している数人にヒアリングすることで、広く応用可能なレベルのものにすることを心がけましょう。
【グロービス】
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更新:07月23日 00:05