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なぜ売上げが下がっているのか? 「問題の原因を絞り込む」プロセス

2025年05月22日 公開

グロービス,嶋田毅(グロービス経営大学院教員)

主要な原因を絞り込む

「言いたいことを言葉にする」のは容易ではありません。多くのリーダーが以下のような課題を抱えています。

・指示があいまい:わかりづらいから人が思ったように動かない
・考えがまとまらない:要領を得ないから相手に伝わらない
・話の内容がフワっとしている:説得力がないから相手に刺さらない

このような課題を解決するために、数々のビジネスリーダーを育成してきたグロービスが「言いたいことを、瞬時に伝わる言葉に変換する25のトレーニング」を紹介します。本稿は「問題の原因を絞り込む」レッスンです。

※本稿は、グロービス,嶋田毅著『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

「2割の原因」を特定しよう

問題解決の流れ

問題解決は通常、図2-2のように進みます。まず問題を定義したうえで、Where(どこが大きな問題個所なのか≒どこが、改善感度が高いのか)、Why(なぜその問題が生じたのか)、そしてHow(どのようにその問題を解決するのか)を考えていきます。

図からもわかるように、このプロセスにおける基本は「絞り込み」です。どのような組織にもリソースや時間の限界があり、問題の原因をすべてしらみつぶしにつぶしこむのは困難です。

それゆえ、たとえばあなたが大学受験予備校の職員であれば、「他の予備校に比べて最も劣っているのは数学、特に理系数学」であると問題個所を特定し、「理系数学のベテラン講師がまとめて3人引き抜かれたのがその原因」と理由を特定します。

そのうえで「ライバルの人気講師を逆に引き抜こう」「辞めてしまった講師の動画を研究することで、うまく教えるコツを言語化し、既存講師に横展開しよう」などと対策を考えるのです。

絞り込みを行う背景には、ビジネスではパレートの法則(「80─20の法則」:2割の要素が全体の問題の概ね8割の原因となっている)が効きやすいという経験則もあります。つまり、2割の原因に対処すれば問題の8割は解決できることが多いのです。

実際、TQC(Total Quality Control)などの品質管理でもパレートの法則は多用されます。主要な原因の2割に対策を講じると、不良品は8割くらい減るのです。

「問題の本質」という言葉は人によって用いる意味が多少異なるものですが、ここではWhereとWhy、すなわち「最も改善感度が高い個所」あるいは「その問題を引き起こした最も根源的な理由」をイメージして議論を進めます。

それを正確に言語化できれば、自ずと対策も考えやすくなりますし、組織内での共有もスムーズに進み、周りの協力も得やすくなります。

なお、本稿は言語化を主に取り扱っているため、詳細な分析の方法論などは示しません。実際には会社のITシステムで収集したデータを用いたり、顧客アンケートなど、企業の内外にたまったデータをさまざまな角度から分析します。ご興味がある方は問題解決の教科書などをご覧ください。

 

演習問題1

■設定

あなたはある女性向け服飾ブランドのマーケティング担当者。ここ数年、業績は右肩下がりです。なぜ売上が下がっているのか、その原因を特定してください。

 

■回答例・解説

[NG例]
-----------------------------------------------
弊社の売上高の90%を支える20代、30代女性の売上高が急激に下がっている。
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この分析結果が正しいとして、これは問題の本質といえるでしょうか?

この例では、「90%」はあまりに大きすぎて「問題の本質」というには漠としています。その中にも濃淡があるはずなので、もう少し絞り込みを行いたいところです。

以下はもう少し別の分析の軸も加えて絞り込みを行い、言語化した例です。

なお、どの分析軸が効果的かは、実際に分析をしないとわかりません。仮説(仮の答え)を持ちつつ、しっかり分析することが必要です。

 

[OK例] 
-----------------------------------------------
売上の落ち込みが顕著なのは、アパレルよりもバッグなどです特に25歳から35歳までの女性向けの高価格帯製品が大きく落ち込んでおり、売上減の50%に寄与しています。
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このくらいまで絞り込めれば、「そこのテコ入れを行うことができれば、ダメージを半分食い止められるのでは」ということが明確になります。他の改善感度の高い個所も特定することができて、優先順位の高い個所から手を打てば、問題解決を大きく前に進めることができるでしょう。

 

演習問題2

■設定

(演習問題1の続き)「高価格帯のバッグが、特に25歳から35歳までの女性に売れなくなってきており、売上減の50%に寄与している」ということがわかりました。では、どのような理由が考えられるでしょうか。

 

■回答例・解説
まずはNG例を見てみましょう。

[NG例]
-----------------------------------------------
弊社の高価格帯製品が訴求力を失っている。 
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 これでは何も言っていないのと同じです。もう少し詳細に述べないと適切な解決策はとれません。 

 

-----------------------------------------------
弊社の高価格帯のバッグなどが、25歳から35歳までの女性にとって、「欲しいと思われないブランド」になってきている。
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1つ目に比べるとマシになりましたが、それでもやはり漠然とした部分が大です。もう少し具体化はできないでしょうか。

ここではトヨタ自動車の「なぜを5回問え」を応用してみましょう。これは、何か問題が起きている時に「なぜ?」を5回繰り返すと、本質的な理由に迫れるというものです。

たとえば、次のような感じです。なおこの例では7回「なぜ」を聞いていますが、5回という数字に必ずしもこだわりすぎる必要はありません。本質的な原因にまでたどりつければ十分です。

 

----------------------------------------------- 
「Aプロセスで不良品が多い」
「なぜ?」
「Aプロセスでカギとなる人材が数人同時に辞めたから」「なぜ?」
「他に良い転職先があったから」
「なぜ?」
「Aプロセスの技術を活かせる、他業界B社の工場が日本に参入してきたから」
「なぜ?」
「日本では安くて良い人材が確保できるから」
「なぜ?」
「我が社の給与がずっと据え置きだったから」
「なぜ?」
「高付加価値なのに顧客に価格転嫁できなかったから」
「なぜ?」
「役員以上、顧客に価格転嫁するという経験がない人間ばかりだから」
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この考え方を活用し、質問を繰り返すことで、ターゲット層に訴求しにくくなった理由を言語化したのが以下です。

 

[OK例]
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もともと欧米風のデザインを売りに成長していたが、それがここ数年の新しい潜在顧客層には「二番煎じ的ブランド」と見られるようになってきた。 
また、既存顧客からも、数年前にヒットしたBブランドの製品ラインが、「少し前に流行ったブランド」と認知されるようになってきた。Bブランドの刷新を怠ったことが効いてきている。さらに、消費の二極化が進む中、購買力のある顧客は上級の海外ブランドに流れている。
一方で、購買力のない層は、弊社より少し低価格帯のC社やD社に流れている。この挟み撃ちにあい、ブランド訴求力の欠けた我々の商品は苦戦を強しいられている。
バッグ類そのものが売れなくなっている点も大きい。特に我々の主力のハンドバッグにその傾向が強い。C社やD社はトートバッグなどに注力することで市場の逆風に立ち向かっている。
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ここまで具体的にされれば対応策も考えやすくなるでしょう。

 

■コツ・注意点

問題の本質を言語化する際には、原因と結果の関係を意識することが大切です。ある要素が、問題の本質的な原因なのかということを証明するのは大変ですが、それでも多くの人が「その説明なら違和感がない」と思えるエビデンスや根拠が必要です。 

さらに、問題の本質に迫るには、1人だけで考えるのは効果的ではありません。特に大きな問題、たとえば組織横断的な問題であれば、他部署の人間とコミュニケーションすることは非常に有効です。それにより、新しい視点を得ることができますし、大きな見落としを避けたりすることも可能となります。

 

【グロービス】
グロービスは1992年の設立以来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。

「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびにオウンドメディア「GLOBIS 学び放題×知見録」により、これを推進しています。
さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。

企業サイト:
グロービス:https://globis.co.jp/
グロービス経営大学院:https://mba.globis.ac.jp/

 

プロフィール

グロービス

グロービスは1992年の設立以来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。

「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびにオウンドメディア「GLOBIS 学び放題×知見録」により、これを推進しています。

さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。

企業サイト:
グロービス:https://globis.co.jp/
グロービス経営大学院:https://mba.globis.ac.jp/

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