2025年02月26日 公開

転職におけるミドルの強みは、なんといっても経験の豊富さ。しかし「話せること」が多いからこそ、アピールの仕方が勝負を分ける。そこで面接での話し方や書類の書き方のコツについて、関連する著作を多く持つキャリアコンサルタントの中園久美子氏に取材した。(取材・構成:横山瑠美)
※本稿は、『THE21』2024年3月号の掲載記事より、内容を抜粋・編集したものです。

転職を目指すミドルには、若手に真似できない、長年の経験で培われたスキルが必ずあります。転職活動を始める前に、これまでの職務経験の棚卸しを進め、自分の強みを理解しておくことが欠かせません。
①経験の「棚卸し」を進める
新卒で入った会社でずっと同じ職務に就いている人でも、携わるプロジェクトの変遷や「このときはとりわけ頑張った」といった仕事が必ずあるはず。それらを振り返り、書き出すことから始めましょう。複数の部署を渡り歩いた人は、部署ごとに書き出してください。
厚生労働省が提供する無料のツール「ジョブ・カード」でも職務経験の整理ができますので、ぜひ活用してみてください。
②強みを「ひと言」で表す
書き出した経験を眺めてみると、複数の経験に共通する、あなたの強みが見えてくると思います。長々と説明しなければわからない強みではなく、例えば「交渉力」や「周囲を巻き込む力」のように、ひと言のキーワードで表現できる形で見つけておくのが理想です。
なお、ここで若手と同じ土俵で勝負するつもりになってはいけません。マネジャーとして培ってきた能力や、数十年にわたりプレイヤーを続けたことで得たスキルをアピールするほうが、ミドルの転職では得策と言えます。面接官の印象にも、残りやすくなるでしょう。
また、強みのキーワードは、1つや2つではなく5つ程度は準備していただきたいと思います。なぜなら「どの会社にも同じ強みをアピールする」のは悪手だから。
若手であれミドルであれ、転職活動の際に肝となるのは、求人を出している企業が「どんなスキルを求めているか」を、求人内容や公開情報から分析し、把握することです。
会社が変われば、当然求められる強みも変わります。応募先の企業に合わせて強みの組み合わせやアピールの優先順位を変え、担当者に「この人はウチにぴったりの人材だ」と思わせる必要があるわけです。
そのためには、カードゲームの「手札」のように相手に合わせた様々な見せ方、戦い方ができなくてはいけません。そうなると、やはり5枚程度は手札が欲しいように思います。
③「PREU法」でまとめる
強みを見つけることができたら、次はその強みをアピールするための「予定稿」を作りましょう。ここで意識してほしいのが「結論→理由→事例→活かし方」の順番で内容を伝える「PREU法」です。
例えば「調整力」をアピールしたいとき、ただ「調整力があります」と言うだけでは説得力がありません。重要になるのは「何を通してその力を獲得したか」「その力を発揮した事例はあるか」「それを応募先の会社でどう活かすか」の3つ。これらを漏れや滞りなく、自然に語れるようにしておきましょう。
1つの応募先ごとに2~3個ほど、その会社にフィットしそうな「強み」を考え、準備しておけば十分かと思います。PREU法については、下の図も参考にしてくださいね。


また、転職の際に多くの方がつまずくのが応募書類、特に職務経歴書です。面接に呼んでもらうには「会って話を聞いてみたい」と思われるような、わかりやすい書類づくりを心がけねばなりません。
まず問題なのが、文字の大きさが一定のまま、用紙を文字で埋め尽くす人。自分が最も伝えたい強みやアピールポイントに視線が集まるよう、文字の大きさにメリハリをつけたり、見出しを設けたりといった「仕事で資料をまとめるとき」同様の工夫を重ねてください。
また、ミドルは職務経験豊富だからこそ、こうした書類の枚数が増える傾向にあります。しかし、何ページも続けるのは完全にNG。多くてもA4で2ページにとどめるのが鉄則です。
それに、実績だけを羅列するのもいけません。先述したPREU法を応用し、その実績を挙げられた要因(理由)や、そこで得た経験やスキルを応募先でどう活かすかについても、必ず言及してください。
そして最後に、応募書類が完成したら、必ず第三者に読んでもらうことを勧めます。可能なら、自分と年齢や性別といった属性が異なる人にしてください。そのほうが、古い価値観や仕事のやり方がにじみ出ていないか、強みのアピールが単なる自慢になっていないかなど、指摘してもらいやすいからです。

ミドル世代を採用する際、企業の採用担当者が気にしがちなのが「この人は、ウチにいる年下上司や社員とうまくやっていけるのか」という点です。そのため、ミドルの面接では「あなたは弊社の平均年齢よりだいぶ上ですが、どう思いますか」といった質問が頻出します。
そこで大事なのは、相手の言葉をいったん受け入れること。ここで「まだ衰える歳ではありません。若い者には負けないですよ」などと、妙にやる気を前面に出したり、ムキになったりするのは逆効果です。面倒な人と思われかねません。
この質問をされたときは、まず「自分の年齢」を客観的に捉え、若い人と協働して仕事にあたりたいと考えていることを、自己PRも織り交ぜながら伝えるのが最適解。とっさの返しは難しいので、こういったよくある疑問・質問への答えは、前もって準備しておきましょう。

面接でミドルにありがちなのは、自分の過去の実績や「武勇伝」を長々話してしまうことです。中にはパワハラまがいの手法で実績を上げたことを自慢げに語ったりする人もいて、そうなると目も当てられません。
面接官は応募者に気持ちよくしゃべらせて、人柄を見抜くのに長けた人たちです。過去の実績を聞かれたときや、面接中に「今日はやけに話しやすいな」と思ったときは、面接官による「トラップ」が張られていると疑ったほうがいいでしょう。実績は軽く語るに留め、それを「この会社でどう活かすか」を中心に、簡潔に語ることを意識してください。
また、転職においては当然清潔感や笑顔、ビジネスマナーといったことが必須ですが、ミドルの場合はそれらに加えて「偉そうでないか」「デキる感を出しすぎていないか」にも、気をつける必要があります。
特に、部長以上の役職を経験した人や「自分はハイパフォーマー」という意識がある人は要注意。どこか「お客」のような態度が見えて、面接官を怒らせるケースもしばしばです。新卒の頃の謙虚な姿勢を、意識的に取り戻していただければと思います。
この仕事をする中で、転職に成功するミドルの方には、ある特徴があると感じています。それは「過去の肩書きや自分のこだわりに、必要以上に固執しない」ということです。
私の知る中で、かつて企業の部長や役員をしていたのに、退職後は大幅に給料が下がる銀行の駐車場管理の仕事に応募し、採用された方がいました。
私も少し驚きましたが、週3日の駐車場管理という名目で採用されたにもかかわらず、しばらく経つとその能力を見込まれて、銀行の業務も一部請け負うようになり、結果的に待遇も良くなったとか。このように、無用な頑固さを捨て去れば、転職先で仕事が自然と広がっていく、といったこともあるのです。
長年の職務経験は、学生や若手にはない「誇れるもの」であることは間違いありません。ですが一方で、転職活動ではそうしたものを「リセット」できる素直さも、ときには必要になることを知っておきましょう。
最後になりますが、転職活動は誰にとっても精神的負担の大きい活動です。悩みは溜め込まず、家族や友人、そしてキャリアコンサルタントにどんどん相談してください。私たちの仕事には、そういったことも含まれていると思っています。
【中園久美子(なかぞの・くみこ)】
キャリアクレッシェンド代表。経理専門学校を卒業後、大手通信社勤務を経てパソコン講師として活動。子育てや夫の転勤に伴い、何度も転職を余儀なくされた経験をもとに、2012年にキャリアコンサルタントの資格を取得。17年に独立し現職。面接指導を得意とし、これまでに1万人以上への指導実績を持つ。著書に『それでも採用される! 転職面接の受け方・答え方』(日本実業出版社)などがある。
更新:03月03日 00:05