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「自分定年」とは? 限りのある人生を後悔なく生きる術

2025年02月19日 公開

有山徹(4designs(株)代表取締役CEO)

自分定年とは

自分の残りの人生があとどれくらいかを考えると、「やりたいこと」や「やるべきこと」がいろいろ思い浮かぶと思います。仕事についても同じで、いつまで働きたいか?働きたくないか?をイメージし、

「自分定年」を設定することで、進むべき道が見えてくるといいます。経営コンサルティングやキャリア支援事業を行なう4designs株式会社代表取締役CEOの有山徹氏が解説します。

※本稿は、有山徹著『なぜ働く?誰と働く?いつまで働く? 限られた人生で後悔ない仕事をするための20の心得』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

人生は有限である

1年で夏は1回きり。学生の頃の夏は、甲子園を目指して野球に打ち込んでいました。あの頃と同じ夏は二度とないだろうし、今年と同じ本を書く夏も、(たぶん)もうないでしょう。

はたして私にはあと何回、夏が来るだろうかと考えてみました。

仮に90歳まで生きるとして、あと45回くらいです。元気に動き回れるうちに、と限定すると残り35回、もしくは25回かもしれません。子どもと遊べる夏をと考えると、もっと少なくなります。

そんなふうに考えたら、「あれ? 意外と少ない!」と少し焦りました。

それなのに実際は、いつのまにか「今年も夏が終わってしまった」とちょっと後悔することが少なくありません。毎日仕事をしていると1か月なんて、あっという間に過ぎていきます。45回あったはずの夏が、もう44回にカウントダウンです。

限りある人生の大切さは、誰もがなんとなくわかっています。でも、本当に死に直面しない限り、自分の人生に限りがあることを、腹の底からリアリティを持って感じるのは、難しいですよね。

今日と同じように明日がやってくるし、今週と同じように来週は始まるし、今年と同じように来年も生きる。つい、そう思ってしまいます。

そこで「思い切り夏を楽しめるのは、人生であと20回かも」と考えると、少しだけ、人生の輪郭がくっきりとしてきます。

満開の桜を見られるのも20回、クリスマスにケーキを食べるのも、年末に見る歌番組も、20回です。いやもしかすると、それよりもっと少ないのかもしれません。明日人生が終わってしまう可能性も、ゼロではないのです。

親と離れて暮らしている方ならば、「親と会えるのも、あと何回だろう」と考える方もいます。それなのに、日々親とのコミュニケーションを大切にしているかというと、案外そうでもなく毎日が過ぎているものです。

 

もしあと10年しか働けないとしたら?

仕事も同じです。いつまで働けるか、という視点で考えてみることは少ないと思います。むしろ、「いつまで働かなきゃいけないんだ」と、うんざりしている人のほうが多いかもしれません。

いずれにしても「いつまで」という区切りは、具体的には意識していないはずです。働ける期間はあと20年、あるいは10年、もしかしたら数年かもしれません。転職するチャンスは何回もないでしょう。その中で情熱を燃やせるような仕事をする機会は、もっと少ないはずです。

このまま仕事を続けていいのかと迷いながら、気がつくと何枚もカレンダーをめくって、年明けに誓った「今年こそは」が、年の瀬には「来年こそは」に変わっていたりします。

思い当たる節があるなら、たとえばこう考えてみてください。

もしも、あと10年しか働けないのだとしたら、明日からも同じように過ごしていくだろうか?

私は"自分定年"という言い方をしていますが、自分で区切りを作ってみると、人生の解像度が上がっていきます。50歳でリタイアするとか、75歳までは働こうとか、何歳でもいいのですが、とにかく自分なりに定年を決めれば、心も頭も体も動き始めます。

「今から1年後、あなたは今日から始めていれば良かったと望んでいるだろう」

1970年代に活躍したアメリカの女優、カレン・ラムの言葉だそうです。

『トム・ソーヤーの冒険』を書いた小説家のマーク・トウェインも、近い意味合いでこんなことを言っています。

「20年後、あなたはやったことよりもやらなかったことを後悔する」

さらにスティーブ・ジョブズは2005年に米スタンフォード大学の卒業式で行った有名な演説でこう言いました。

「私は毎朝、鏡の中の自分に向かって、『今日が人生最後の日だったとしたら、今日の予定をやりたいと思うだろうか』と問いかける。『ノー』の日が続いたら、何かを変えなければいけない」

私たちは普段、直感よりも論理で答えを求められる場面が多く、さまざまな情報に振り回されては、人生の本質からどんどん離れてしまっているのかもしれません。結局、どんなに頭で考えるよりも、心で感じるほうが自分を動かすパワーになるのです。

 

自分定年を決めることで自分の進むべき方向が定まる

ここまでを読んで、少しだけ、心がキュッと締め付けられた人がいるかもしれません。

アメリカのベストセラー作家であるダニエル・ピンクは『THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)の執筆にあたり、1万6000人もの"後悔"の体験談を調査したそうです。そして、やった結果に対する後悔より、やらなかったことへの後悔のほうが、より強いことがわかったといいます。

仮にそれが事実だとしても、未来をあきらめる必要はありません。少しだけでも何かを変えたい。より良い人生に向かっていきたい。だけれど、何をすればいいのかわからない。

もしあなたが今、そんなモヤモヤを抱えているのなら、ぜひ「自分定年」を設定してみてください。
以前は定年というと会社が決めるものでしたが、今は何歳まで働くかなんて本当に人それぞれです。
70歳までは働くという人もいれば、80歳を過ぎてもがんばりたい人もいるし、逆に60歳までにリタイアしたい人だっているでしょう。

あなたは、何歳まで働いていたいでしょうか?

自分定年を決めると、自分の進むべき方向が定まってくる効果もあります。今はやりたいことが特にない人でも、たとえば75歳まで仕事をしていたいと決めたら、「その歳になったときにどんな仕事ならできそうか」という視点が生まれます。

今ほど体力はないし、会社員でもない。そうなれば、高齢でもできるアルバイトなどを探すか、個人でできる仕事を受けるという選択肢も出てくるでしょう。では個人で仕事を受けるには、残された時間で何をしないといけないのか。そんなふうにして、あなたの進む方向が見えてくるはずです。

著者紹介

有山徹(ありやま・とおる)

4designs株式会社 代表取締役CEO/一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事

2000年に早稲田大学卒業、大手メーカーに就職後、経営コンサルティング会社を経て一部上場のIT企業、デジタル広告企業、ベンチャー企業での管理本部長や経営企画にて戦略策定並びに大手外資系PEファンド傘下でのIPOプロジェクト等の全社プロジェクトを推進。
2019年に人的資本経営コンサルティング、キャリア支援事業を行う4designs株式会社を創業。2020年3月、法政大学キャリアデザイン学部 田中研之輔教授と一般社団法人プロティアン・キャリア協会を設立。
設立4年で約30万人・上場企業200社以上に現代版プロティアン・キャリアを伝えプロティアンメソッドを通じた人的資本経営支援サービス「プロティアンキャリアドック」は2024年HRアワードの優秀賞受賞。大人だけではなく中高生のキャリア教育にも取り組んでいる。

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