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メールに時間がかかる社員に必要な、やり取りを「1往復半」で終わらせる意識

2024年10月15日 公開

平野友朗(一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事)

 

【相手に意図が伝わる②】件名のつけ方

メールの件名は具体的にする

送信相手のメールボックスの中は様々なメールで溢れ、あなたの部下の送ったメールは埋もれているかもしれません。メールは開封されなければ返事はこないし、動いてももらえません。相手を動かすためにはまず、メールの開封を促す「具体的な件名」が重要です。

仕事ができる人は、「件名」を自分の言葉で工夫して「重要である」ことを示しています。つまり件名に、相手がメールの重要度や優先順位を判断するのに必要な情報を盛り込んでいるのです。

例えば、「お知らせ」「お願い」「ご報告」「ご相談」「ご確認」などの短い件名は、簡潔ですが言葉足らずになりがちです。件名だけだと「何の」がわからないので、相手も判断に困ります。

そこで、「通知」「依頼」「報告」「連絡」「相談」などに加え、「何を」までセットで書かせるようにしましょう。これにより、相手は重要度を意識しながら開封して処理することが可能となります。

また「~について」「~の件」などの件名も、「何をどうしたい」のか「何をどうしてほしい」のかがわからないので、「どうしてほしい」までセットで書かせるのが良いでしょう。

例えば、上図の一番下の件名のように具体的な件名に変えれば、端的に送り主の目的を伝えられるので、開封を促すだけでなく、迅速な反応を引き出すこともできます。

 

【相手に意図が伝わる②】返信がない場合の対処法

仕事ができる人は、メールを送信した後も、相手に過度な期待はしません。これは決して冷たい考えではなく、人間なのだから、間違えるかもしれない、忘れるかもしれない、抜け漏れがあるかもしれない、それも当然だと考えているのです。

だからこそ、相手から返事がないからといって「返信がありません」「なぜ返信しないのですか」とストレートに伝えたりはしません。そもそも相手を責めるようなことではないし、そんなことをしても、関係を悪化させるだけです。

では、どうすれば良いかというと、相手とチャットやメールでやりとりをする間柄なら、「○○の件についても、よろしくお願いいたします」のように、他の用件のついでに相手に確認するのです。

また、相手が外部の人や上司で、メールでやりとりをする場合は、「先のメールで、ご不明な点はありませんか」「こちらでお手伝いできることは何かありませんか」など、気遣いのフレーズを使いながら、メールの存在をさりげなく伝えます。

ただ、どの場合でも、今のタイミングなら十分間に合うという段階で、余裕を持って確認することが大事です。

 

【信頼を勝ち取る①】曖昧な言い回しを避ける

曖昧な言葉

社内などの見知った人同士であれば、以心伝心で互いの心が通じ合う部分も多いため、メールで「あれは、どうなっている?」というような曖昧な問いかけであっても、明確な回答がもらえたりします。

例えば、「なるべく早くお願いします」「できるだけ早く対応してください」などの期限を示す言葉でも、社内であれば期限のイメージが共有できているので「承知しました」と答え、その後も何事もなく、仕事を進められるでしょう。相手から催促されることもなければ、遅くて気分を害することもありません。

しかし、これが許されるのは感覚が近い人同士の場合のみです。仕事に慣れていない若手社員がやると、トラブルのもとになります。

例えば、「後ほどお電話します」と16時頃に届いたメールに書いてあって、相手から電話があったのが翌日の9時半だったとしたら、あなたはどう感じるでしょうか。当日のうちに電話が来るかと思っていたのに、翌日だったのですから、「忘れていたのかな」「忙しかったのかな」「後回しにされたのかな」と、相手の対応にひっかかりを感じるのではないでしょうか。

受け手が理解した言葉の意味と実際の対応が異なると、そこに違和感を覚えるのは当たり前です。これが続くと、不信感につながります。仕事に対しての信頼も失われてしまうでしょう。

こうした場合、互いに違う人間なのですから、わかり合うためには、曖昧な言葉より厳密な表現をとり入れたほうがスムーズです。

ただし、厳密な言葉を使いすぎるのも考えものです。いつも時間や期限に追われながら仕事をしなければならなくなりますし、相手にプレッシャーをかけ過ぎてしまうかもしれません。 時と場合によって、曖昧な言葉、やや厳密な言葉、厳密な言葉、それぞれを使い分けさせましょう。

 

【信頼を勝ち取る②】メールは「1往復半」を心掛ける

「メール作業にあまり時間をかけないほうがいい」は、その通りですが、「メールのやりとりは、少なければ少ないほうがいい」というのは大きな間違いです。「メールは1往復で終わらせたほうがいい」と考えて、受領の連絡をしないでいると、相手はちゃんとメールが届いたのか不安になります。実は受領の連絡こそが、相手に安心感を与え、信頼を獲得するのに役立っているのです。

例えば、部下にパワーポイントの資料作成を依頼する例で、1往復と1往復半の違いを見てみましょう。

●1往復
部下にパワーポイントでの資料作成を依頼 → 依頼された資料を作成し、あなたに提出

●1往復半
部下にパワーポイントでの資料作成を依頼 →  依頼された資料を作成し、あなたに提出 → 作成のお礼を伝え、やりとりが終了

どうですか。1往復半のやりとりのほうが、思いやりを感じませんか。仕事ができる人のメールは常に1往復半です。自分から依頼したものならば、自分でメールを終わらせます。メールは情報伝達の手段であると同時に、コミュニケーションの手段です。使い方によっては、好印象につながったり、信頼獲得につながったり、安心感につながったりもするのです。

またそれだけでなく、1往復半でやりとりをすることで、かえって仕事の効率も上がります。

先ほどの例で言うと、部下が資料を提出して、そのメールを「受けとりました」と、あなたが返信しなければ「いつ見てくれるんだろう」と気になります。あなたが見ていなければ対応は完了しないので、「修正してください」と指示が来る可能性を踏まえて、待たなければなりません。

返事がないのは複数の理由が考えられるため、相手は判断に迷います。その後の工程にも影響があるかもしれず、組織として時間をロスし、仕事の効率が落ちるのです。しかし1往復半であれば、この問題は防げます。

メール作業の基礎知識

いかがだったでしょうか? ビジネスメールは日常作業の一環。最低限の力を使って最大の効果を狙えるよう、スキルを高めていっていただければと思います。

 

著者紹介

平野友朗(ひらの・ともあき)

一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事

ビジネスメールスキルの標準化を目指し、日本初のビジネスメール教育事業を立ち上げる。個人のメールスキル向上指導、組織のメールのルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などを手がける。行政機関、企業、学校などへのコンサルティングや講演・研修回数は年間150回を超える。さらに「ビジネスメール実務検定試験」を立ち上げ、ビジネスメール教育の普及に尽力している。

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