2024年11月11日 公開
組織やチームの成長、個人のキャリアを大きく左右する要素として、主体性が重要視されています。しかし、主体的な社員を育て、主体的なチームを創り、ビジネスを成功に導くためには単に社員一人ひとりに働きかければよい、というものではありません。
そこで年間300社を超える企業に対しビジネスコンサルティング&研修プログラムの企画・開発・実施までを行っている株式会社HRインスティテュート代表取締役社長の三坂健氏が、組織の強みや個性を活かし、企業風土や文化といった環境を整えながら、社員が主体的に活躍するチームを創る方法を3回に分けて解説します。
第1回の本稿では、そのヒントとなる「ワークアウト」という手法に焦点を当てます。
ビジネスリーダーの多くは「主体的な人材を育成したい、チームを創りたい」「主体的に行動する組織やチームを創れる"後継者"を育てたい」といった想いや問題意識を持っています。そこで、各社研修プログラムを実施したり、外部のコンサルティングを受けたりしながら問題解決を図っていることと思います。
私たちは、年間300以上の企業からそのような相談を受け、各企業に合わせたコンサルティングと研修プログラムの企画・開発・実施を行ってきました。その中でたどり着いたのが、ここで紹介する「ワークアウト」というプログラムです。
「ワークアウト」はもともと米ゼネラル・エレクトリック(GE)で採用されている問題解決や風土改革のための手法の一つでしたが、弊社HRインスティテュート創業者である野口吉昭が、そこに加えて日本企業の特徴である「現場力」という観点を組み合わせました。そこから30年、時代に合わせて洗練し続けているプログラムが、私たちが定義するワークアウトです。このワークアウトで重要になるのが、
・「らしさ」を重視する
・「質のよい」経験学習サイクルをまわす
という2つのコンセプトです。
ワークアウトでは、その企業「らしさ」を最大限に重視します。「らしさ」を意識し、それを軸とした組織づくり、人材育成をすることで、競争優位性が高まるとともに、社員の自律的な行動が促され、結果として社員がその会社に留まる大切な理由の一つとなります。
また、「質のよい」経験→解釈→判断→行動のサイクルを通じて、日々推進される事業、そして現場での経験や関わりをよりよいものにし、何よりもその組織や人材に気づきを与え、成長を後押ししていきます。
これらを継続することで指示待ちの現場に変革がもたらされ、社員が主体的に考え、行動するカルチャーが組織の中に形成されていくのです。
ワークアウトを実践して得られるものは数多くありますが、特に大きなポイントが2つあります。
1つは戦略を立案する、新商品のコンセプトを立てるなど、組織を動かす当事者である社員が主体となって考え、行動し、「具体的なアウトプット」にたどり着くことを目的としている点。もう1つは、そのアウトプットを導く過程で人材を育成する点です。
言い換えると、結果を創出するコンサルティングだけではなく、人材を育成する研修だけでもない、その両方を同時に実現するための「プロセスコンサルティング」であるということです。
ワークアウトを通じて、社内に主体的な人材が育つとともに、社員同士、そして社員と経営トップが対等に会話し、共に考え、行動し、検証を重ね、意思決定を下す、といった「ミドルアップダウン」の文化が形成されていきます。ミドルアップダウンとは、ボトムアップでもトップダウンでもない組織的な意思決定のプロセスです。
さらに、こうした「人材」と「文化」に加えて、ワークアウトを通じて育まれるものはもう一つあります。それが「事業」です。人材を育てることは事業を育てることにもつながります。具体的に、ワークアウトのテーマ設定、つまり先に述べた「具体的なアウトプット」には様々ありますが、大きく分けると次の3つになります。
①既存事業の進化......例:営業戦略、マーケティング戦略など
②新規事業の構築......例:新商品、新サービスのコンセプト開発など
③事業を支える本社業務の進化......例:採用基準、人事制度の刷新、業務改善など
こういうことが現場から主体的かつ自発的に行われるようになることが、ワークアウトの成果です。そして、こうしたテーマに分類される具体的な問いを通じて、考え、実行と検証を繰り返しながら人材が育っていきます。つまり、実践と育成を掛け合わせたものになるのですが、その結果として人材だけでなく、事業も育成されていくのです。
更新:11月18日 00:05