THE21 » ライフ » 近視を甘く見てはいけない...医師が教える「失明リスク」を防ぐ習慣

近視を甘く見てはいけない...医師が教える「失明リスク」を防ぐ習慣

2024年08月22日 公開

窪田良(医学博士,窪田製薬ホールディングス[株]CEO)

 

2時間遠くを見ると近視が防げる

近視を進行させないために

ここはやはり、手術に頼らず良い目を維持したいもの。それには、近視の原因を少しでも遠ざけることが必要です。もうおわかりだと思いますが、近視の原因は「しょっちゅう近くを見る」ことにあります。

これは目にとって不自然な作業です。目は元来、遠くを見るように作られているからです。太古の人間にとっては、遠くの獲物を早く見つけて捕らえたり、遠くの天敵に早く気づいて逃げたりする力が、生存のために不可欠でした。

その時代が何百万年と続いたのに対し、本やスマホの画面など近くを見るようになったのは、ここ数百年のこと。 近視は、近~現代人ならではの症状であり、乱視や遠視と違って「環境要因」で起こるもの。つまり、環境を変えることで、改善が期待できるのです。

「とはいえ、近くを見ないで暮らすのは無理」と思われるでしょう。確かにその通りです。デスクワーカーなら仕事中は近見作業の連続ですし、プライベートでも本を読んだりスマホを見たりするでしょう。

しかしその環境でも近視を進行させない方法があることが、最近わかってきています。それは、「外で遠くを見る」ことです。

台湾の小学校では、1日で合計2時間、屋外活動をすることが義務づけられています。光を浴び、遠くを見る時間を持つことが、近視の予防や進行防止に有効だ、という研究結果に基づく施策です。

実際、この取り組み以降、台湾の子どもの近視の割合は着々と減少中。2時間遠くを見れば、他の時間で近くを見続けても効果は出るのです。大人の方々にも、ぜひ実践していただきたい方法です。

ただし屋外でも、近くに物がある場所はNG。近くの何かが視野にあると、目はそこにもピントを合わそうとするからです。ですから、一番近いものでも5m以上離れている状態を意識しましょう。ベランダに出たり、広い公園のベンチで景色を眺めたり。ちなみに「空」は、一面の青空だと遠近感がつかめないので、いまひとつ効果ナシ。雲が浮かんだ空なら理想的です。

なお私の会社では、2時間の屋外活動と同じ効果が期待できる「クボタグラス」という眼鏡を開発しました。1日90分間かけるだけで、「眼鏡の度数を替えなくて良くなった」「眼軸の伸びが止まった」などの声が多数届いています。

クボタグラス

 

市販の目薬やサプリの効果にエビデンスはない

最後に、巷によくある「目の誤解」についても、お話ししておきましょう。

眼鏡を作る際、度数の設定をあえて「0.7」程度に抑える方がいますが、私はあまりお勧めしません。子どもの場合は1.2や1.5など、最高視力を出す度数にすることがベストとされています。「見え過ぎると近視が進む」は、都市伝説に過ぎません。

また疲れ目対策に、市販の目薬を使用される方も多いでしょう。しかし処方薬以外の目薬で、薬理作用があるものはごくわずかです。 目を洗うカップ式の薬も同様です。ブルーベリーやルテインなどのサプリメントにも、目が良くなるというエビデンスは今のところ出ていません。

つまるところ、皆さんが日常生活の中でできる良い習慣は、やはり遠くを見ること。仕事の合間のリラックスタイムに、目もひととき解放しましょう。リフレッシュ効果で、仕事の能率も上がります。そして将来にわたって、目の健康を守ることができるでしょう。

 

著者紹介

窪田良(くぼた・りょう)

医学博士、 窪田製薬ホールディングス(株)CEO

慶應義塾大学医学部卒業。1995年に緑内障の原因遺伝子・ミオシリンを発見。虎の門病院勤務を経て2000年に渡米、ワシントン大学助教授として勤務。02年、創薬ベンチャー・アキュセラを創業。16年に窪田製薬ホールディングス(株)を設立、創薬と医療技術の研究開発を行なう。米NASA・HRP代表研究員。  

THE21 購入

2024年10月号

THE21 2024年10月号

発売日:2024年09月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

医師が語る、40代からの健康診断で必ずチェックすべき「4つの数値」

森勇磨(産業医/内科医)

容姿の衰えの原因にも...「脳の老化が早い人」がしているNG習慣

加藤俊徳(脳内科医/医学博士/加藤プラチナクリニック院長)

残業続きの人は“常に酩酊状態”かも...精神科医が説く、睡眠不足の悪しき影響

樺沢紫苑(精神科医)
×