2023年12月15日 公開
2024年に控えるアメリカ大統領選では、トランプ氏とバイデン氏の再対決となる可能性が目されている。バイデン氏の支持率が低迷する中、果たして共和党の当選は起こり得るのか? 毎年『世界と日本経済大予測』シリーズを刊行し、その「的中率」にも定評がある渡邉哲也氏に、2024年以降の「アメリカ大統領選」の先行きを聞いた。
※本稿は『THE21』2024年1月号掲載記事を再編集したものです。
――世界の先行きを占う2024年の一大イベントと言えば「米大統領選」。この動向はどうなるとお考えですか。
【渡邉】台湾の総統選挙もそうですが、民主主義というものは本当に厄介(笑)。1年後の選挙を正確に予想するのは困難ですが......少なくとも「バイデン氏の再選は難しい」ことは間違いありません。 やはり、現在の支持率があまりに低すぎる。
現在、米国議会は共和党が多数を占めており、バイデン氏は共和党に相当譲歩しなければ予算を通せない状況です。民主党の肝いりだった「GND(グリーンニューディール)」や「ESG」重視路線は、今や見る影もありません。
23年末時点で81歳という年齢も、再選を目指すうえではネックです。 かといって、民主党内にはバイデン氏に代わり得る大統領候補もまだ現れていないのですが......。
――となると、共和党の候補にも注目ですね。
【渡邉】共和党側の大統領候補の最右翼は、今のところトランプ前大統領です。民主党優位の州で起きている数々の刑事訴追が逆風のように報道されることもありますが、候補を選ぶ共和党員の間では、まるで問題にされていません。
ただ、共和党支持者以外に目を向ければ、尖ったキャラクターに拒否感を持つ人が多いのは事実。もし共和党支持者が「本選」を見据えた候補者選びをすれば、フロリダ州知事のロン・デサンティス氏などが候補となる可能性もありそうです。
――仮に共和党の候補が勝ち、政権交代となった場合、どんなことが起こるのでしょう。
【渡邉】トランプにせよデサンティスにせよ、路線に差はありません。共和党が勝てば、まず「ESG」やそれに類する協定、法案などは、多くが骨抜きにされるでしょう。
――トランプ氏が大統領だった頃、アメリカはパリ協定から離脱したことがありましたが、それと同じことが起きると。
【渡邉】まさに、その繰り返しになると思います。シェールガス・オイルが取れるようになり、採掘や輸送のための設備も整えて「さあこれでアメリカも立派な資源産出国になれた、儲かるぞ」というときに、政権交代したバイデンがすべてひっくり返してしまったわけですから。
トランプに限らず、共和党の候補であればそこは同じ方針だと思います。 国際的に見ても、例えば「巨大リチウム電池」であるEVに安全上の問題が指摘されるなど、環境一辺倒の施策は見直されつつありますし。
――エネルギーと環境についてはわかりました。国際情勢の面では何か変化はありそうですか。
【渡邉】まだ推測でしかありませんが、その場合中東情勢には、良い変化があるかもしれません。 というのも、イスラム教のスンニ派とシーア派の対立を利用して、イスラエルとUAE、イスラエルとサウジアラビアの国交回復を模索していたのが、トランプ政権のポンペオ国務長官だったからです。シーア派のイランを共通の「敵」として、ユダヤ教とスンニ派をくっつける算段でした。
ところが、まとまりかけたところで「対イラン融和」を唱えるバイデンが大統領となり、ひっくり返されてしまった。 そんなわけで、もし政権が共和党に変われば、この「アラブ社会とのパイプ」が、再び太くなる可能性もあるのです。
もちろんアラブ諸国が、大統領が変わるたびに言うことが変わるアメリカと、再び交渉の席に着いてくれるかは、未知数と言わざるを得ないのですが(笑)。
更新:12月10日 00:05