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国際競争力低下の一因...中国、韓国の2倍まで高騰した“日本の電気代”

2023年12月13日 公開

渡邉哲也(経済評論家)

2024年以降の世界と日本経済

2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻を契機に、国際的な緊張が高まっている。コロナ禍がようやく収まりつつある中で、次に来る「リスク」をいち早く知り、手を打っておくことが重要だ。毎年『世界と日本経済大予測』シリーズを刊行し、その「的中率」にも定評がある渡邉哲也氏に、2024年以降の「世界と日本」の先行きを聞いた。

※本稿は『THE21』2024年1月号掲載記事を再編集したものです。

 

2024年の国際情勢と、 注目すべきポイントは?

台湾総統選

――まず、多くの読者が気になるのは、パレスチナ問題やロシアのウクライナ侵攻などに代表される、国際情勢の緊迫化かと思います。 ここ数年で国際情勢が著しく悪化してしまった、そもそもの原因はいったい何なのでしょうか。

【渡邉】ひと言で申し上げれば、グローバリズムの時代が終わり、再び冷戦時代が訪れようとしている、ということでしょう。その大きな流れの中で、様々な地域で「デカップリング」が進んでいるということです。

――デカップリング、ですか。

【渡邉】はい。今からおよそ35年前、1989年に冷戦が終結しました。そのあと何が起きたかと言えば、グローバリズム――つまり「人・モノ・カネ」の移動の自由化です。

しかし、新冷戦とも呼ばれる米中関係の悪化によって、壁が取り払われたはずの「人・モノ・カネ」が、再び分断に向かっている。そこにコロナ禍が拍車をかけたわけです。

そして今、コロナ禍に各国が実施した各種の規制が解かれるとともに、どんどん衝突が表面化していっています。ロシアのウクライナ侵攻もガザの紛争も、どちらも同じシナリオの中で起きている出来事と言えるでしょう。

――ロシアのウクライナ侵攻からそろそろ2年が経ちますが、やはり2024年中に戦争終結......といったことは難しいのでしょうか。

【渡邉】厳しいでしょう。戦争が終わるということは、どちらかが負けを認めるということ。いくら攻め込まれても、プーチン大統領がその交渉に応じるかどうか。かといって、ここからロシアがウクライナを押し返すとも思えませんし。

――となると、今後世界はいよいよ、米中を軸にした「冷戦状態」に突入する、と。

【渡邉】断定はしませんが、ほぼそうなると言っていいでしょう。 すでにロシア西方や中東には火がついてしまいましたから、残るは我々の住むアジアのみ。アジアで衝突点となり得るのは、南シナ海、東シナ海、台湾、朝鮮半島です。これらのどこかで何かが起きれば、完全な「冷戦」が始まります。

――よく耳にする「台湾有事」の他にも、そんなに火種があるんですね。

【渡邉】その通り。むしろ台湾有事より、フィリピン近海で事が起こる可能性のほうが高いかもしれません。少なくともアメリカは、衝突が避けられないとしたら、せめてそちらに誘導したいように見えます。

――知りませんでした。それはいったいなぜですか?

【渡邉】フィリピン沖の海運の要衝・バシー海峡のある島に、アメリカ軍基地を造る計画があるんです。そこを前線基地として「その周辺の島々を巡る戦い」で済ませられれば、条件的にもアメリカが優位ですし、各種のリスクも抑えられますから。

――なるほど。アジア情勢で言うと、年明け早々には台湾で総統選がありますよね。これはどんな結果になりそうですか?

【渡邉】選挙は水物ですから何があるかわかりませんが、現時点(注:取材は11月中旬)では、現与党・民進党で現職副総統を務める頼清徳氏が優勢です。頼氏は対中強硬派で、その頼氏が優位に立っているのは、私たち西側にとって歓迎すべきこと。

ただ、同時に投開票となる立法院(一院制・全員改選)の選挙は、もしかすると野党が勝つかもしれないと言われています。台湾の総統選の情勢は今後も要チェックです。

――頼氏と言えば、先日日本の麻生(太郎)元総理、そして台湾現総統の蔡英文氏とともに「対中戦略」での変わらない連携を確認して、話題になっていましたね。

【渡邉】まさにそれが、伸び悩んでいた頼氏の支持率を押し上げた要因の一つです。同じ時期に米国も訪問しており、そちらとの親密さもアピールできているように見受けます。

――まとめると、台湾にしてもフィリピンにしても、当面そこを介した米中のにらみ合いが継続する、という理解で問題ないでしょうか。

【渡邉】はい。にらみ合いや冷戦で済めばマシなほうで、実際にはそれでは収まらず、「ホット・ウォー」となる可能性も十分あります。そうなれば「第三次世界大戦」の様相を呈することになりかねません。我々は今、そういう世界に生きているという自覚を持つ必要があるのです。

――話がそこまで壮大になると、私たち自身に何か打てる手があるか、わからなくなってきます......。

【渡邉】さほど難しいことではありません。つまり「グローバリズムの終結」に備えよ、ということ。近い将来、中国やロシアといった「敵対勢力」の国々からは完全な撤退を余儀なくされる、あるいは一方的に締め出される、そういうリスクがあるということ。それを念頭に仕事や消費行動を考えていけば、リスクを大きく軽減できることでしょう。

 

デカップリングは何をもたらすか?

――しかしそうなると、日本企業は苦しい舵取りを迫られますね。

【渡邉】確かに舵取りは難しいですが、このデカップリングは決して日本にとって負の影響ばかりではありません。

例えば、世界的な半導体メーカーのTSMCは、2021年に「熊本に製造拠点を作る」と発表しました。製造拠点を中国などの西側以外の国に置くことのリスクが明らかとなったことで、製造業の「日本国内回帰」の波が来ているのです。 そもそも、ここ30年以上に及ぶデフレは、グローバリズムが要因になっている部分がありました。

――なんと。てっきりグローバリズムは「望ましいもの」と思っていたのですが。

【渡邉】もちろん良い面だってありますが、人・モノ・カネの移動が自由になれば「一物一価」の現象が起こります。例えば、日本メーカーが日本で作った製品が、日本メーカーが中国で作った製品の安さに淘汰されてしまうのです。

そして最終的には、中国メーカーが中国で作った製品に呑み込まれてしまう。 グローバリズムが引き起こした「外国からの安い産品と安い人の流入」こそ、日本が長年苦しむデフレの大きな要因になっているのです。

――確かに、物価にせよ賃金にせよ、どうしても「安いほう」が基準になるものですよね。

【渡邉】そもそも、製造拠点を海外に移すということは、その分のGDP(国内総生産)を他国に譲り渡すということですから。デカップリングによって日本への製造回帰が進むこと自体は、日本にとって大きなチャンスとなるわけです。

特に半導体のように、すでに各国で輸出等の規制がスタートしているモノについては、2024年がターニングポイントになるかもしれません。これは、企業はもちろん投資などを行なう個人の方々も、頭に入れておくべきポイントです。

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著者紹介

渡邉哲也(わたなべ・てつや)

経済評論家

1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業の運営などに携わる。国内外の経済・政治情勢のリサーチおよび分析に定評がある。主な著書に『世界と日本経済大予測』シリーズ(PHP研究所)などがある。

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