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人口72万人超でもナゼか地味...じつは宇宙開発の最先端「相模原市」の魅力3つ

2023年03月07日 公開
2023年04月07日 更新

石沢やすし


相模原名物・GRILL FUKUYOSHIの『とろけるハンバーグ』

「政令指定都市」といえば、首都・東京を除いた日本の大都市の代名詞で、現在20の市が名をつらねている。多くの街は名前を聞けば何らかのイメージが思い浮かぶだろう。

「札幌といえば...時計台、北海道日本ハムファイターズかな」「浜松市は、浜名湖があるよね、あと餃子も有名だっけ?」「堺市は戦国時代に千利休が活躍したところ」といった感じだ。だがそのなかで、大変失礼ながら、すぐにはイメージの湧きづらい街がある。

それは「相模原市」。神奈川県北部に位置し、人口72.5万人を誇る、横浜、川崎に次ぐ神奈川で3番目に大きな街なのだが、ゆかりのない人間には、これというイメージが思い浮かばない。

だが聞くところによると、相模原市は転入超過数が多い自治体として、全国1719市町村中のなかで第10位(住民基本台帳人口移動報告・2021年結果:総務省)という人気ぶりだそう。そして2027年には、リニア中央新幹線の新駅もできるという。

そんな「相模原市」にはいったい何があるのか? 相模原市が主催する広報ツアーに参加して、全国にはまだまだ知られていない魅力を探ってみた。(取材・構成/写真 石沢やすし)

 

相模原市は「宇宙の街」だった!

石沢やすし
相模原市中央区の株式会社オハラ本社。NASAやJAXAだけでなく国内主要カメラメーカー、家電メーカーとも取引があり、海外にも8事業拠点を有する、知る人ぞ知るエクセレントカンパニー

2010年、小惑星から物質を持ち帰るという世界初のチャレンジを見事成し遂げ、地球に帰還した「はやぶさ」。その成功をもとに次なるミッションに挑み、小惑星リュウグウから完璧なサンプルを持ち帰って日本の小惑星探査技術をより確実なものとした「はやぶさ2」。

これらの探査衛星を開発し、プロジェクトの管制を行っていたのが、相模原市の中央区にある「宇宙科学研究所」(JAXA相模原キャンパス)だ。

なぜJAXAは相模原にあるのか? 昭和10年代に陸軍士官学校が移転してくるなど、相模原市一帯は、かつて「軍都」として開発された歴史を持つ。現在のJAXAがある淵野辺には、その時代には陸軍機甲整備学校があったそう。

戦後は米軍に接収され「キャンプ淵野辺」となったが、1974年に日本に返還。国有地となっていたところ、目黒にあった宇宙科学研究所が移転することとなり、相模原は「宇宙」との関わりを持つことになった。

だが、「宇宙の街」を支えているのはJAXAだけではない。

相模原市中央区に本社を置く株式会社オハラは、カメラやプロジェクターに使用される光学ガラスと半導体関連の部材や医療用ファイバーなどに用いられる特殊ガラスの製造で業界では知られた存在だ。

いずれも不純物を極限まで取り除いた、極めて精度の高い品質が求められるが、宇宙・天体関係機器のレンズなどに使用されるガラスはその筆頭。アポロ8号(1968年)~アポロ11号(1969年)にもオハラのガラスが搭載されたという。

以来「オハラガラス」は、NASAやJAXAをはじめとする国内外の宇宙、天体関係のプロジェクトに多数採用されてきた。

ハワイのマウナケア山頂で国立天文台が運用する「すばる望遠鏡」のカメラレンズにも、オハラの光学ガラスが採用され、また現在、同じマウナケア山頂に建設が進められている史上最大の望遠鏡「TMT」にも採用されている。まさに相模原を代表する宇宙企業なのだ。

このオハラ以外にも、相模原には航空・宇宙関連のビジネスにかかわる企業が多数あるという。JAXAだけでなく、こうした民間の技術が「宇宙の街・相模原市」を支えているのだ。

石沢やすし
炉で溶かしたガラスの原料をキャストという作業により、定盤に移して冷やし固める工程。こうした作業が24時間体制で行われている

石沢やすし
溶かしたガラスは時間をかけてゆっくり冷却される。断面がオレンジ色なのは塗装などではなく、奥の炉から発せられる光が透過しているため。離れた場所の光が遮られることなくそのまま届くのは、ガラス内部の透過率が極めて高い証拠

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史上最大の望遠鏡となる「TMT」に使用されるオハラのセグメントミラー。対角1440mm×45mmの六角形を492枚使用して、「東京タワーから富士山山頂を歩くアリの姿が見える」という精度を実現するという

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