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人口72万人超でもナゼか地味...じつは宇宙開発の最先端「相模原市」の魅力3つ

2023年03月07日 公開
2024年12月16日 更新

石沢やすし

 

宇宙にまで飛んだ! さらなるブレイク確実の相模原名物

仙台といえば牛タン、広島といえばお好み焼き、といったように、その街を代表するグルメを抱える街は多い。そこで「相模原市のグルメといえば…?」

多くの人はなかなか思い浮かばないだろう。だが将来、みんながサガミハラと聞くと、この食べ物を連想してお腹が鳴るかもしれない。だから覚えておいてほしい。相模原の名物候補...それは「ハンバーグ」だ。

ただのハンバーグではない。ツアーの昼食で訪れた相模原市内の有名店『GRILL FUKUYOSHI』では、『とろけるハンバーグ』を相模原名物として売り出している。

ハンバーグといえば、卵や小麦粉といった「つなぎ」を入れて成型するのが一般的だが、『とろけるハンバーグ』にはつなぎは一切使われていない。上質な国産牛の赤身肉に、黒毛和牛の脂をブレンドすることで、肉のジューシーさと滑らかな食感を出している。

一般的な普通のハンバーグは材料を「混ぜる」が、この店では「練る」。パンの生地を捏ねる機械で練ることで、肉と脂を一体化させて、牛肉部位の最高峰といわれる「シャトーブリアン」を、ハンバーグで表現することを目指したという。

そんな説明を聞きつつ『とろけるハンバーグ』をひと切れ口に運んだのだが、未体験の食感にまず驚く。まさに肉が舌の上でとろける感じ。普通のハンバーグとは別物だ。

肉のうまみと脂の甘みがほどけていって、すぐに次のひと口を運んでしまう。150gをあっという間に完食してしまった。「あと3倍ぐらい食べたい」と思ったほどの、初めてのおいしさだった。

『GRILL FUKUYOSHI』とその姉妹店は、相模原市や近隣地域だけでなく、六本木やニューヨークにも展開。デリバリーでは全国の約100店で『とろけるハンバーグ』が提供されているという。既に多くの人がこの相模原名物を口にできるようになっているのだ。

そしてなんと、このハンバーグは宇宙にも行っているという。2019年5月にホリエモンこと堀江貴文氏の宇宙ベンチャー・インターステラテクノロジズが打ち上げたロケットに搭載され、実際に宇宙空間に到達したそう。ハンバーグまで宇宙に行くとは、さすが宇宙の街・相模原市である。

やがて、多くの人がハンバーグを食べるために相模原市を訪れるようになるかもしれない。その暁には、この記事を読んでいるみなさんは、「ハンバーグといえば相模原でしょ? 昔から知ってたよ」と、ぜひドヤ顔を決めてほしい。

『とろけるハンバーグ』は、鉄板にのせて徐々に火を通して、自分の好みの焼き加減で食べるスタイル。いわゆる「育てる系ハンバーグ」の元祖的な存在だという。

ハンバーグを食べ終わったら、ご飯を鉄板に入れて、ガーリックチップと特製塩でガーリックライスに。脂の甘みがほどよく染みて、こちらもお代わりしたくなる旨さ。

 

付加価値の高い農作物が身近で手に入る

石沢やすし

続いて向かったのは、相模原市内の中心地から車で小一時間ほどの緑区鳥屋地区。ここには、最新の人工光型設備を備えた野菜工場がある。それが「ワールドファーム」だ。

注文住宅の建築を主に手掛けていた株式会社ビルドアートが新規事業としてスタート。主にレタスなどの葉物野菜を毎日500㎏生産しているという。建築会社の技術を活かした木造の野菜工場というのが、ほかにはない特色の一つ。

相模原市は農業も盛んな市なのだが、あえて工場で野菜を栽培するメリットがある。

露地栽培では天候や害虫、菌などの影響が避けられないが、工場では温度、湿度、光、風、肥料、水や酸素とCO2の濃度まで、野菜に最適な環境のコントロールが可能。季節や天候に左右されることなく、良質な野菜を安定して生産できる。

また農薬は不使用、衛生管理によって菌の数を極力抑え、パッケージを開けたら、水で洗う必要がなくそのまま食べられるレタスを実現している。

普通のレタスは買って数日もすればしおれたり変色したりするものだが、菌の少ないこのレタスは20日以上の長期保存が可能。タイやシンガポールにも船便で輸出していて、それでも鮮度は落ちないというから驚きだ。

石沢やすし
ガラス越しに見える工場内部の様子。光量が均等な新開発のLEDによって、品質の高い野菜をより安定的に栽培できる

実際に試食してみた。みずみずしく歯ごたえのいい食感が鮮度の高さを教えてくれる。レタスは4種類、ルッコラ、レッドオークといった葉物野菜が並び、様々な味わい、食感が楽しめる。

無農薬だが、虫がついていることはなく、何より、洗わずにそのまま食べられるのはありがたい。安全な野菜を手軽に用意できると、子育て世代にも好評だという。

さらに、普通のレタスよりもずっと日持ちがするというのだから、サスティナブルの観点からも優れている。時代のニーズが求めている野菜といえる。

石沢やすし
試食させていただいたミックスレタス。スマホで撮った写真でもそのみずみずしさがわかる

この野菜工場の従業員の多くが、相模原市緑区の在住者。60歳以上が半数近いという。女性比率は67.3%にのぼる。年齢や子育てのために働きたくても遠い場所では働けないという人に、地元で働ける場所を提供しているのだ。

女性従業員の方のお話では、なかなかの力仕事で大変なところもあるそうだが、「新鮮な野菜がどんどん育つのを見ているのはとても嬉しい」と、仕事に誇りを持っておられるのが感じられた。

ビルドアートには、ぜひわが街にもこの野菜工場を作りたいと、引き合いの声がかかっているそう。安心・安全でサスティナブルな野菜を安定的に供給し、地元の雇用も生み出すこの野菜工場は、相模原市からさらに広まっていくかもしれない。

ツアーの最後に訪れたのが、JA神奈川つくいが運営する「あぐりんずつくい」。自然豊かな津久井地区の農産物が手に入るファーマーズマーケットだ。

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「あぐりんずつくい」。津久井湖のそばにあり、地元産の野菜などを特産品や加工品を多数扱っている

中でも、いま売り出し中なのが、特産の『津久井在来大豆』。その名の通り、この津久井地区で古くから栽培されてきた在来の大豆で、非遺伝子組み換え大豆や地産地消が意識される中で注目が集まっているそう。

一般的な大豆に比べて甘みが強く、煮豆にするとさらに際立つという。タンパク質が少なめのため、豆腐などに加工するには技術が要るそうだが、味はとてもよいとのこと。

石沢やすし
津久井在来大豆は商標登録され、標準系統種子を定めて種子を供給するなど、ブランド化を推進している

この津久井在来大豆を使用した「津久井納豆」を購入して自宅で味わってみた。豆の大きさは中粒で、粘りは強め、やや硬めの食感。そして津久井在来大豆の売りである豆の甘みがしっかりと感じられる。これは美味しい。近所で売っていたらきっとリピートすると思う。

石沢やすし
地元特産の津久井在来大豆を使用した『津久井納豆』。ほぼ毎日のように納豆を食べる筆者だが、ぜひまた入手して食べたいと思った

「あぐりんずつくい」では、ほかにも、津久井産のお米から醸したスパークリング日本酒『HARUHIME』や、地元産の茶葉を使用したお茶入浴料など、地元の農産物の商品化に意欲的に取り組んでいるという。

相模原市は、ヤマトイモやゴボウ、ニンジン、ブルーベリーなどは神奈川県内でもトップクラスの収穫量を誇る農業の街でもある。その特産品を活かしたヒット商品がここから生まれるかも。

これといったイメージが湧かない相模原市は、実際に尋ねてみたら、先端技術やグルメ、サスティナブルな働く場や、豊かな自然を活かした特産品など、「きっと次に来る」ものがたくさんある街だった。それが実感できるから、いま多くの人が相模原市を暮らしの場として選んでいるのだろう。

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