2022年12月16日 公開
では、「ワクワク」「ならでは」「できる」というパーパスをどのように見出していくのか。私がここでいつも行なうのが、「デイドリームセッション」というワークショップである。
デイドリームとはつまり「白昼夢」。「あらゆる制約を取り払って、本当にやりたいこと・なりたい姿を考える」場を作るのだ。
仙北谷のケースでは、匠(シニア)と若手、それぞれ3人ずつのチームを作った。匠チームは勤務歴の長い品質管理のトップなど。そして若手チームには現場の班長クラスの人や、入社したばかりの女性なども参加した。
より具体的には、「顧客・顧客の顧客にとって」「社員にとって」「社会(コミュニティ)・地球(未来のこどもたち)にとって」の3つのテーマで、自分たちのありたい姿やなりたい未来を挙げていってもらう。
ホワイトボードにこの3つの枠を設け、そこに思いついたキーワードをどんどん付箋に書いて貼っていってもらう(図1参照)。
その際、抽象的な言葉だけでなく、その具体的なシーンまで思い浮かべてほしい。例えば「人の喜びを支援する」という言葉なら、具体的にどのように支援してどう喜んでもらっているのか、そのシーンを描いてほしいということだ。
私はよく「インスタグラムにアップするようなつもりで」と説明している。その際には先ほど申したように、「あらゆる制約を取り払って考える」のが重要だ。
しかし、これが意外と難しい。特に経験豊富なベテランほど、何か思いついても、「これは前にもやったがうまくいかなかった」などと現実がついつい顔を出す。そんなときに私が伝えるのは「入社した際のことを思い出してください」ということだ。
入社当時、どんな思いを持っていたか、何をやりたいと思っていたか。仙北谷でも最初はやはり、匠チームからはなかなかアイデアが出てこなかった。
一方、若手チームからはどんどんアイデアが出てきたのだが、それを見た匠チームが「俺たちの思いはもっと濃いものだ」と熱くなり、徐々にアイデアが出てくるという好循環が生まれた。
さらには、最初は見守っていた社長も会議に飛び入り参加。匠の骨太さと若手のエンタメ性がうまく融合していった。
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更新:11月21日 00:05