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原因分析の基本 「なぜなぜ分析」で因果関係を明らかにする方法

2025年08月26日 公開

高松康平(株式会社スキルベース代表取締役)

なぜなぜ分析

仕事で問題が発生したときは、なぜその問題が起きたのか、因果関係を明確にすることが重要です。本記事では、ケーススタディとして架空の会社「株式会社センド」の品川倉庫で発生した誤配送を例に、なぜ誤配送が起きたのかを考えながら、なぜなぜ分析の方法を書籍『課題解決の思考法 「見えていない問題」を発見するアプローチ』より解説します。

※本稿は、高松康平著『課題解決の思考法「見えていない問題」を発見するアプローチ』(日本実業出版社)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

問題を引き起こす因果関係を明らかにする

お客様からの出荷依頼

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「品川倉庫で起きた誤配送はなぜ起きてしまったのか」を原因分析をします。

品川倉庫では、お客様の依頼を受けてワインの出荷を行います。今回のミスは本来であれば、クリスマス用の包装をした特別商品を送るべきところ、通常の商品を送ってしまいました。送付後に、お客様から連絡をいただきミスが発覚しました。

なお、お客様が新しい商品の依頼をする手順は「事前準備」と「出荷依頼」に分かれます。

事前準備:新しい商品の送付方法については、事前に営業担当がクライアントから依頼を受けます。その内容を業務手順書にまとめて各倉庫に伝えます(その際に、新しい商品コードも発番します)。
出荷依頼:毎日の出荷依頼は、クライアントから各倉庫に直接メールで届きます。前日の受注分の出荷依頼が当日朝までにメールで届きます。

今回のミスに関わる社内の関係者は3名です。

・ 担当Aさん:品川倉庫で今回の出荷を担当。入社10年目
・ 担当Bさん:ダブルチェックを担当。入社2年目
・ 営業Cさん:ヨーロピアンワインの営業担当。入社15年目

ミスが発生した出荷依頼の内容(12月20日)

荷主様:ヨーロピアンワイン(株)
商品名:イタリアンワイン 12本セット
商品コード:ANHR – 0056
送付先:スーパー石井 世田谷店
送付先コード:SJI – 115

特別商品

本来は、クリスマス用の包装が行われた特別商品(赤いテープが貼ってある段ボールに入っている)を送るべきところ、通常の商品を送ってしまいました。
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原因分析とは、なぜその問題が起きたのか「なぜなぜ」と原因を追究することです。「なぜなぜ」と分析することで表層的な原因ではなく、深い原因まで認識することが目的です。

なぜなぜ5回

「なぜなぜ分析」と言えば「なぜなぜ5回」が有名です。「なぜ」を5回繰り返すことで、表層的な原因から深い原因に深掘りができるため有効とされています。

ではなぜ、「なぜ」は5回なのでしょうか?

それは現場で「なぜなぜ分析」を実践するなかで、5回の「なぜ」を繰り返すと深い原因までたどり着けたからです。

つまり、5回がちょうどよかったという経験則であるという点に注意が必要です。5回という回数は、組織で浸透させるための目安として設定されたにすぎません。

そのため、みなさん自身が取り組む際に、「なぜ」を5回やれば大丈夫であると保証されいるわけではありません。

後輩を指導する際にも、3回しか「なぜ」をやっていないので、「あと2回がんばれ!」なんて言ってはいけません。3回でいいかもしれません。

強引に5回の「なぜ」を行うと、最後のほうの「なぜ」は強引に出したものになってしまいます。最後は「天気がいいから」とか「平和だから」などよく意味の分からない原因にたどり着いてしまうことがあります。また、「なぜだ! なぜなんだ!」と問い詰めたら、後輩は相当プレッシャーを感じてしまうでしょう。

たとえ、後輩が5回の「なぜ」を出していても「よく頑張った!」と言うわけにもいきません。もしかしたら、6回~7回やる必要があるかもしれません。

「なぜなぜ」は回数ではなく、中身にこだわります。

大切なことは、最初にどんな「なぜ」を出して、次にどんな「なぜ」を出すのか。さらに、「なぜ」をどこまで繰り返せばいいのか、という点です。

 

「なぜなぜ分析」には正しい順番がある

メールのご送信

「なぜなぜ分析」の本質は「近い原因」だけでなく、「遠い原因」まで認識することです。

近い原因とは、直接的な原因です。遠い原因とは、間接的な原因です。

近い原因とは、問題に直接的に影響をおよぼしている原因です。たとえば、どんな行動があったのかです。遠い原因とは、近い原因の背景に存在した原因です。組織や外部環境などが考えられます。

メールの誤送信の例で考えてみましょう。

最初に書き出す原因は、近い原因なので「宛先を見間違えた」「ボタンを押し間違えた」といった行動です。その下の階層には、「焦っていた」という個人の原因がきます。その下の階層には「忙しかった」という組織の原因という流れになります。

「宛先を見間違えた」までしか原因を深掘りしないと、あとで解決策を考えるにしても、「宛先を見間違えないように気をつけよう」と意識するしかありません。その背景に存在する遠い原因が変わらない限り、また同じようなミスが起きてしまいます。

「近い原因」から「遠い原因」までを認識することでミスを撲滅することができます。

センドの事例でも同じです。

ミスが起きた(結果)→ 設備投資ができていない(原因)。

これは、いきなり「遠い原因」を書いてしまっています。

「設備投資ができていない」というのは遠い原因です。設備投資ができていないからと言っても必ずしもミスが起こるわけではありません。

ミスを起こした近い原因は「スタッフが取り間違えた」と言ったスタッフの行動がくるべきでしょう。

その原因を「なぜなぜ」と深掘りしていけば、「設備投資ができていない」という原因にたどり着くかもしれませんが、それはあくまで「遠い原因」です。

このように説明することは簡単ですが、いざ書き出そうとしても、どれが近い原因でどれが遠い原因なのかを見極めることは意外と難しいものです。

では実際に、どのように「なぜなぜ分析」を書いていくとよいのでしょうか?

問題の種類によって考えられる原因はある程度、パターン認識できます(詳細を学びたい方は、拙著『会社の問題の9割は「4つの武器」で解決できる』をご確認ください)。

業務ミスが起きた場合にはステップ1で「問題定義」をして、次にステップ2で「問題分解(どこどこ分析)」をして、悪い場所を見つけます。ステップ3の「原因分析」で、「なぜなぜ分析」を行います。業務改善担当の視点を活用すると、どんな順番で「なぜなぜ分析」をすればいいかを考えやすくなります。

原因分析の最初にくるのが、「行動の原因」です。

・ ミスが起きた原因には、どんな行動があったのか?

たとえば、担当者が商品を取り間違えたことが考えられます。また、ほかのスタッフも担当者が商品を取り違えて送ってしまったことに気づいていなかったことが考えられます。

行動の原因が特定できたら、もう少し遠い原因を探りにいきます。「その行動の背景には、どんな原因があるのだろうか?」と考えを進めていきます。ここで探るべき原因は「スキル・知識・マインド・ルール」の4つです。

次のような問いかけになります。

・スキル面で原因はなかっただろうか?(できなかったのではないか?)
・知識面で原因はなかっただろうか?(知らなかったのではないか?)
・マインド面で原因はなかっただろうか?(やる気がなかったのではないか?)
・ ルール面で原因はなかっただろうか?(そういう決まりや規定がなかったのではないか?)

最後に確認するのが「体調・人間関係・環境・制度」の4つです。これらが一番深いところにある原因になります。

・体調が悪かったのではないか?
・人間関係が悪かったのではないか?
・仕事環境が原因だったのではないか?
・制度の原因があったのではないか?

人間はミスが起きると、原因を「忙しかったからだ」などと環境のせいにしたくなりがちですが、「忙しかった」は遠い原因の1つでしかありません。

忙しいからと言って必ずしもミスが起きるわけではありません。問題を引き起こした近い原因があって、その背景に遠い原因の存在があったという因果関係をとらえていきます。

実際に「なぜなぜ分析」を行う際に、「業務改善担当の視点」のすべての要素を書き出す必要はありません。該当するような原因がなければ、次の種類の原因を探りにいけばよいですし、同じ原因で2回連続の「なぜ」を書くこともあります。あくまで、原則としてこの順番で原因を探っていくと理解してください。

なお、問題の種類によってどのような視点で考えるかは異なりますので、どのような問題のときでも「業務改善担当の視点」が活用できるわけではないのでご注意ください。

 

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