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課題解決に重要な「情報認識」 ノートに書いて現状を把握する方法

2025年08月25日 公開

高松康平(株式会社スキルベース代表取締役)

情報認識の手法

課題解決の第一歩は、今の状況を正しく理解することです。ただし、単に「何が起きているか」を知るだけでは不十分。未来を見据えたうえで、現在の立ち位置を把握することが重要です。本記事では、「現状が分かる」ために必要なステップを書籍『課題解決の思考法 「見えていない問題」を発見するアプローチ』より解説します。

※本稿は、高松康平著『課題解決の思考法「見えていない問題」を発見するアプローチ』(日本実業出版社)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

分かるために要素を抽出する

情報認識とは

「分かる」ための最初のステップが「情報認識」です。「情報認識」では、大量の情報からテーマに合った要素を抽出し、具体的な言葉で記述します。

「情報収集」という言葉のほうがよく耳にすると思いますが、いきなり情報は集めません。

目の前にある情報を自分の頭で認識するという意味で「情報認識」と名づけています。

「情報認識」のプロセスは、これから考えていくための下準備と言えます。料理でも素材を準備してから、調理するように、考えるための素材をテーブルに準備していきます。これは、自分の思考を進めるための作業ですので、人に見せるためのものではありません。

では、どのように進めたらよいのでしょうか? テーマに関する資料を読んで、重要と思われる要素を書き出してみましょう。

書き出すことで、大量の情報そのままよりも分かってきます。要素が減るからです。

世の中に存在する情報のすべては頭の中に入り切りません。要素をたくさん書き出したら、グルーピングをします。さらに、グループごとに名前をつけます。まとめることで、理解が進みます。これが「情報認識」のプロセスです。

・中期の経営計画
・業績データ
・お客様の声
・クレーム情報
・競合ホームページ
・業界新聞 など

単に眺めるだけではなく、書き出していくことで自分の頭で理解できるようにします。大量の情報を読み込みながら気になる事実が出てきたら、メモを書き出していきます。

沢山の情報から要素を抽出する

(書き出したメモの例)

・物流倉庫部門は「食品」「化粧品」「アパレル」の3つの商品群で構成される
・食品は増収。化粧品は増収、アパレルは減収
・物流の市場規模は横ばい
・食品企業からは、品数を増やしたいという相談があるが、応えられていない。
・食品企業からは、食品ロスの対策を求められている
・競合S社は、食品物流にAI需要予測システムを導入
・ファストファッションの流行でアパレル企業は品数を増やしている
・エコ対応物流・パッケージングへのニーズが増加
・燃料費の上昇の影響で運送費用増加
・人手不足が深刻化している

要素を抽出して、いきなり打ち手の議論に入ってはいけません。

また、通りすがりの経験豊富な先輩から、「こうしたらいい」とアドバイスをもらったとしても、鵜呑みにしないほうがよいでしょう。

過去の経験から、こんな取り組みをしたほうがいいと親切にアドバイスをしてくれたのかもしれませんが、それが今回のケースにあてはまらない可能性もあります。まだ、何も分かっていません。

 

書き出すことは粗くて構わない

もしあなたが、「日本経済の成長のための提案をつくってほしい」と言われたとしましょう。ふつうは、そんな壮大なテーマの依頼をされても困ってしまいますが、まずは、今起きていることを書いてみましょう。知っていることはたくさんあるはずです。

「最近は、円安が進んでいる」
「中国に遅れをとっている。そう言えば、GDPのランキングはさらに下がったというニュースも見た気がする」
「『失われた30年』という言葉はよく聞くな」
「日本からはイノベーションは生まれない」
「その一方で、最近は国のベンチャー支援は活発になっている」
「地方経済は苦戦している」

書き出すことは粗くて構いません。どんどん書いていきます。

最初のアウトプットはしょぼくていいのです。最初から立派なパワーポイントの資料なんてつくることはできません。

資料をつくることは誰かのためですが、この作業は自分のためのメモです。

思考力がある人は、いつも落書きをしているように思います。ただし、会社の中で触れる資料は完成版となりますので、その人がどのような思考でたどり着いたかが見えないものです。

どんな立派な資料も、最初は粗い情報認識からはじまっています。すぐに分かる人なんていませんし、最初から分かっている人がいたら、それは「知っている人」です。とにかく気になる要素を書き出していきます。

そのために、すぐに書き出せる環境を整えておくことが大切です。

自分の認識を一番素直に表現できるのは、やっぱりペンです。スマホやパソコンで自分の思いを書き出すこともできますが、ペンの感覚を超えるものはないでしょう。

古い人間だと思われるかもしれませんが、今もペンが使われ続けている理由は思考の伝達率が高いからです。

最近はリモートワークが増えたことで、紙やホワイトボードに書き出す機会が減っていますが、私はお気に入りのペンとノートを買って書きたくなる環境を用意しています。

研修で「とにかく書き出してください」と受講生の方々にお伝えすると、「事実と言えるか分からない自分の認識も書いていいのか」という質問をいただくことがあります。

「認識」とは、自分がどう思っているかです。

正確性にこだわることなく、とにかく気になる要素を書き出してください。

・何が起きていると思っているのか?
・それはなぜだと思うか?
・何が必要だと思うか?

それが本当に正しいかは、また別に調べるとして、みなさんの認識も含めて書いてみましょう。

 

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