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部下へのフォローは平等じゃなくていい! 管理職に問われる“絞る力”

2026年06月28日 公開

中尾隆一郎([株]中尾マネジメント研究所代表取締役社長)

「THE21」中尾氏

管理職を苦しめるのは仕事量よりも「平等意識」かもしれない。限られた時間で成果を出すための、部下フォローの新常識を、㈱中尾マネジメント研究所代表の中尾隆一郎氏に解説してもらった。(取材・構成:川端隆人)

※本稿は『THE21』2025年7月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

部下のフォローは必要な人に「絞る」べし

「やめる」の次に考えるべきことは、「絞る」。やるべきことを絞って集中することです。

ここでも、まずは今やっている業務を分析・検討する方法が有効です。

自分が担当するチームのミッションをすべてリストアップします。これらを上部組織(課やチームにとっては部や事業部、部や事業部にとっては全社)のミッションやビジョンと照らし合わせてみましょう。

検討した結果、上部組織のミッション、ビジョンと関係が深いのは重要なミッションです。ここに限られた資源を投入する。つまり「絞る」のです。

一方、関係が深くないミッションは「やめる」対象です。やめることで浮いた時間は、重要なミッションに割り振ることができるわけです。

以上は、やるべき「コト」を「絞る」話です。もう一つ、「ヒト」を絞ることも重要です。

「月に1回、メンバー全員と1on1を行なう」といった制度がよくないのは、「メンバーを平等にフォローすること」をマネジャーに要求するからです。助けを必要としているメンバーも、問題なく仕事をこなしているメンバーも、同じようにフォローしていたら時間が足りなくなるのは当然でしょう。

チームの中でもフォローする相手を絞ってみる。特に助けを必要としている部下に対して、面談などの重点的なフォローをするようにすれば、それだけ時間の余裕ができるわけです。

「THE21」中尾氏

 

常識を「見直す」ことで仕事の意味が変わる

「定期的な」1on1に否定的な私ですが、それでもリクルート時代は、異動するたびにすべての部下と必ず1回は1on1を行なうことにしていました。

といっても、この1on1の目的は、メンバーを理解することではなく、「私」をメンバーに理解してもらうことです。

マサチューセッツ工科大学教授、ダニエル・キムさんの「成功循環モデル」によれば、メンバーとの「関係の質」が高まれば「思考の質」「行動の質」「結果の質」が高まる。つまりチームのパフォーマンスは向上する、とされています。

「関係の質」を高めるためには、お互いの背景を理解することが重要です。私がどんな人間なのかをメンバーに理解してもらえば、「中尾さんがこう言っている、その背景にはこういう意図があるんだな」といったことが伝わりやすくなるでしょう。

そんなわけで、部下との1on1の前には、自分を理解してもらうための助けとして、職務経歴書や自己紹介文をあらかじめ送ったうえで面談に臨むようにしていました。

このように、1on1を、「部下をフォローする場」から「自分を理解してもらう場」と解釈し直してみる。現在実施していることを、これまでの常識を離れて「見直す」ことで、さらに生産性を高めることができるのです。

 

チームの生産性UPはホワイトボードを囲むことから

プレイングマネジャーとして仕事の「やめる」「絞る」「見直す」を実践できるようになったら、次はチーム全体にもそのやり方を広げていきましょう。

簡単な方法としては、最初に見た「期待される成果(R)」と「必要な投入量(I)」によるマッピングを、チーム全体の業務についても行なってみてはどうでしょう。メンバー全員でホワイトボードを囲んで、というスタイルがお勧めです。

これによって、チーム内で「やめる」べき業務を洗い出せるという直接の効果があることはもちろんですが、メリットはそれだけではありません。

同じチームに属してはいても、メンバー同士は「誰が何をやっているのか」「どんな業務にどのくらい時間をかけているのか」といったことを意外なほどわかっていないものです。

みんなで集まって業務をマッピングする中で、これらが見える化されます。すると「〇〇さん、そんなに時間かけてたんだ。このツールを使えばもっと簡単だよ」「なんだ、その資料なら、もうあるから作らなくていいよ」といった情報共有ができ、チーム全体の生産性を高めることができるのです。

ちなみに、私は資料作りなどでも、チームで集まって、画面を共有しながら作業をすることがよくあります。「そんなやり方があるんだ」「今使った関数、何?」というように、他人の手順を見える化することで、お互いの生産性を高める良い機会になるのです。

チームの次は、会社全体への拡大もありえます。

プレイングマネジャーが忙しすぎることは、どの会社でも気づいているはず。だから人を採用しよう、という話になることが多いですが、これからは人を採用することがどんどん難しくなるでしょう。新戦力は採れない、という前提で解決策を模索せざるを得ないのが現実です。

とはいえ、今いる中間管理職にこれ以上無理をさせたら、体調を崩して離脱、最悪の場合離職、といった結果を招きかねません。そうなると他の中間管理職にさらなる負荷がかかってしまいます。事態は深刻です。だからこそ、「プレイングマネジャーが忙しすぎる」問題は本来、会社として取り組まなければいけない問題なのです。

こうした現状の中で、まずはプレイングマネジャー自身が「やめる」「絞る」「見直す」を試してみることが重要です。この記事や私の本を上司に見せて味方につけるのもいいでしょう。実践してみてうまくいった方法があれば他のチームに横展開したり、最終的には全社の制度を変えられるようにもっていく。そのきっかけ作りと考えれば、やりがいもある仕事ではないでしょうか。

「THE21」中尾氏

プロフィール

中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう)

㈱中尾マネジメント研究所代表取締役社長

2018年までリクルートホールディングスに在籍。リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルート住まいカンパニー執行役員などを歴任。約11年間、リクルートグループの社内勉強会において、「KPI」「数字の読み方」の講師を担当する。著書に『成果を上げるプレイングマネジャーは「これ」をやらない』(フォレスト出版)などがある。

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