2026年06月27日 公開

管理職はなぜ忙しいのか。その原因は仕事の多さではなく、「
※本稿は『THE21』2025年7月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。
激務を極める管理職。あれもこれも短時間でやれ、と言われても無理なのは当然。タイムマネジメントでどうにかなるような問題ではありません。
そこで、私の著書『成果を上げるプレイングマネジャーは「これ」をやらない』の中では、業務を「やめる」「絞る」「見直す」ことを提案しています。例えば「定期的な1on1を『やめて』みては?」といった具合です。
読者の感想としてよく聞くのが、「『やめよう』なんて言っていいんですね?」という声。日本のビジネスパーソンは真面目です。「やると決められたことは、ちゃんとやるのが当然」と思っているし、そこから「やらない人はずるい」という同調圧力のようなものも生まれてしまいがち。
だからみんなやらざるを得ない、「やめたほうがいい」となんとなく感じていることでもやめにくい、という問題があります。そんな中で、いかに「やめる」「絞る」「見直す」を実践すればいいでしょうか。
まず、「やめる」について。
何を「やめる」べきかは、人によって異なります。そのため、自分がやっている仕事の中で何をやめるかの判断が必要です。私がお勧めしているのは、業務のマッピング(下図)。
生産性(ROI)を「期待される成果(R)」と「必要な投入量(時間・お金など)(I)」の2軸で示した図の中に、自分のやっている業務を置いてみるのです。
具体的なやり方としては、まずは1週間分なり1カ月分のスケジュールを見て、どの業務に、どのくらい時間をかけているかを確認します。そのうえで、生産性に応じて業務をグループ分けするのがやりやすいでしょう。
必ずしも厳密に成果や投入量を測定する必要はなく、感覚で分類しても結構です。

4分類した中で、最もよくないものは明らかで、右下の④。投入している時間が多いのに期待されるリターンが低い業務です。逆に、左上の①はかけている時間は少ないのにリターンは大きいので、大変良いということになります。
蓄積していくと面倒なのが③で、一つひとつにかかる時間は少ないのですが、リターンも小さい。なんとなく後回しにしていくうちに、気がついたら手のつけようがない状態になっている危険性もあります。
実はやめづらいのが④。前述のように、投入している時間が多いのに期待するリターンが低い業務であり、本来は一番やめなければいけないはずの業務ですが、「たくさん時間をかけている業務なのに、リターンが小さい」と認めることに抵抗を感じてしまう人が多いためです。
多くの職場で、④の典型例となっているのが、定期的な1on1です。
私は1on1自体が悪いとは思いません。必要なタイミングで行なわれるなら、効果的でしょう。問題なのは、「定期的な」1on1です。
何がいけないかというと、一つには、大した効果がない場合が多いこと。メンバーが必要としているタイミングではなく、会社が決めたサイクルで実施しているだけだからです。
では、たまたまそのメンバーが困っていたタイミングで実施できれば問題ないのかというと、そうでもありません。
よく聞くのが、メンバーが「この仕事がうまくいかないんです」と相談し、マネジャーが「わかった、自分がなんとかするから」と仕事を引き継ぐことになるケース。メンバーの仕事はなくなる反面、マネジャーの仕事が増える。
つまり、ただでさえ忙しいマネジャーに、プレイヤーレベルの仕事がさらに増えてしまうのです。
プレイングマネジャーの仕事のうち、「プレイング」の割合は3割が限界ということもわかっています。それを超えるとチームのマネジメントができなくなるのです。
マネジャーにレベルの低い仕事を与え、マネジメント不全、ひいてはチーム全体の生産性低下をもたらすような「仕事の移管」を、定期的な1on1が招いているということです。
ちなみに、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは1on1をしないことで知られています。余計な時間がかかり、生産性が下がるという弊害に加えて、「一部の幹部だけが知っている情報」があるとマネジメント上で大きなデメリットがあると考えているのです。
そのかわり、週1で行なっているのが、60人以上のメンバーを集めてのミーティングだといいます。あれほどの大企業がスタートアップ以上のスピード感で変化し続ける秘密の一端は、こういったところにあるのでしょう。
また、投入量は多い、けれども期待される成果も高い②に分類される業務にも、問題はあります。企画を立案するとか、経営計画を作るといった仕事がこれにあたるでしょう。こうした業務は「大事なことに手間をかけている」わけで、正しいことをしているように思えます。けれども、その手間には本当に意味があるでしょうか。
私は、「腹落ち」という言葉は、日本の中間管理職の忙しさの元凶の一つだと考えています。
企画や経営計画といった「大事なこと」を決めるとき、何度も集まり、何度もやりとりをして、みんなが納得するまで、全員が「腹落ち」するまで手間をかける。根底にあるのは「納得していない人は、実行してくれないから」という考え方です。
とはいえ、納得しても行動しない人は少なくありません。ならば、納得していようとしていまいと「決めたことはやろう」というルールを決めるほうが手間は減ります。こうした合理的な考え方を阻害しているのは「腹落ち」の偏重で、だから日本の管理職は忙しすぎる、と言ってもいいでしょう。
更新:07月07日 00:05