中途採用者がいち早く職場に馴染み、即戦力として活躍できるようになるには、会社側は何をしたら良いのか? 株式会社NEWONE 代表取締役社長の上林周平氏は、メンバーの定着と戦力化には、効果的な「オンボーディング」が必要と語る。多様な人材を活かすための手法を紹介する。
人材の流動性が高くなった昨今、中途入社の新しいメンバーがチームに加わることは珍しくありません。新メンバーを迎えるとき、チームのリーダーがやるべきことは何でしょうか?
会社のルールやチームの仕事のやり方を教え込んで、新メンバーをチームになじませることでしょうか。それも必要かもしれませんが、もっと大事なことが他にあります。それは、新しいメンバーの強みを活かして、チーム全体を再構築することです。
このように、中途入社の社員を戦力として活かすための取り組みを「オンボーディング」といいます。エンワールド・ジャパンが2021年に発表した調査では、企業の約7割が中途入社者にオンボーディングを実施していると回答しています。
しかし効果的なオンボーディングができているかというと、必ずしもそうではないでしょう。
導入研修や面談などの決められたことを実施する企業は多いと思いますが、実際に現場のリーダーがどのようにメンバーとコミュニケーションをとればいいのか、何をすればメンバーの定着と戦力化につながるのかは、手探り状態であることも少なくありません。
そこでここでは、チームリーダーにおすすめしたい効果的なオンボーディングの具体的手法を3つ、紹介します。
新しく人と知り合ったとき、「この人は頼りになりそうだな」とか「明るくていいな」とか、あるいは「なんだか心配だな」などと第一印象を抱くことがあると思います。
第一印象と実態がまったく異なることは珍しくありませんが、実は意外と、第一印象に引きずられてお互いにその後の認識や行動にバイアスがかかってしまうものです。
第一印象で「元気がない」と思ったら、その後も「元気がなさそう」に思えてしまうのです。これを心理学では「初頭効果」といいます。
新メンバーをチームに迎え入れるとき、まずリーダーがやったほうがいいのは、この初頭効果をポジティブに働かせることです。
既存のメンバーと新メンバーを引き合わせるとき、お互いに軽く自己紹介を済ませて、あとは「それぞれよろしく」で終わってしまうことがあります。
お互いに大人ですからそれで悪いことはありませんが、それぞれが主観で抱く第一印象に任せると、ポジティブな初頭効果を得られないこともあるでしょう。
何事もスタートダッシュが肝心ですから、ここは意識してリーダーが介入し、初頭効果を演出するほうがチームの再構築につながります。
具体的には、新メンバーの「獲得理由」と「期待していること」をチーム全員の前で伝えることです。
「人が足りないから採用した」などという消極的な理由は伝えても意味がありませんし、「売上拡大のために加わってもらった」というような、誰にでも当てはまりそうな曖昧な理由もよくありません。
例えば「能力としては現メンバーと近しいが、新たな取り組みを何度も行ってきた経験を活かして、いまのチームに攻めのマインドを持ち込んでほしい」といったレベルまで落とし込むことが重要です。
付け加えるなら、新メンバーを迎えてチームが実現したいことを確認したり、新たな目標を掲げることも効果的です。
これにより、既存のメンバーにはどのような理由で新しいメンバーが入ってきたのかが理解でき、また新しいメンバーにとってはどういうことを期待されているのかが明確になり、チームに溶け込むきっかけを掴みやすくなります。
既存メンバーは「このメンバーが来てくれてうれしい」と感じ、新しいメンバーは「このチームで頑張ろう」と思えるよう、スタートダッシュを上手に演出してください。
更新:12月10日 00:05