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読みにくければ、文量を半分に...新聞記者による「失敗しない文章」の極意

2022年10月13日 公開
2023年01月18日 更新

野上英文((株)朝日新聞社 記者)

野上英文

書いているうちに話の流れが不自然になり、筆が止まってしまう──そんな失敗をしたことはないだろうか。朝日新聞記者で、今夏『朝日新聞記者がMITのMBAで仕上げた 戦略的ビジネス文章術』を上梓した野上英文氏によれば、「見出し」と「リード」の付け方を知るだけでそうした失敗が激減し、文章をスラスラ書けるようになるという。

※本稿は『THE21』2022年11月号特集「生産性2倍の『文章術』」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「見出し」「リード」で書く前に指針を立てる

野上英文

論旨の明快な文章を書くためには、書き始める前に冒頭の「見出し=タイトル」「リード文=書き出し」を固めることが重要です。「何を伝える文章か」の指針をあらかじめ定めておくことは、論理の流れを安定させることに直結します。

この「見出し」と「リード」とは、「その文章で一番伝えたいこと」の端的な要約です。こう言うと「まだ書いていない文章を要約するなんて、骨が折れそうだけど...」と思う方もいるでしょう。しかし、伝えたい内容は、書く前から頭に漠然とあるはずです。

それなら、まずそれをしっかり整理して「何を伝えたいか」はっきりさせる。そうすることで、その後の文章を書くための「指針」が生まれます。最初のステップにじっくり時間をかけることで、それ以降の論理展開でつまずくことを防ぐ、ということ。まさに「急がば回れ」というわけです。

もちろん、最初に置く見出しやリードは完成品ではなく、あくまで「自分が上手に書くため」の仮のものでOKです。それを出発点に書き進め、あとからより良いものを思いついたらそちらに差し替える。わざわざ全体のアウトラインを先に熟考する必要もありません。

ただ、いくら「自分用の仮置き」といっても、やはり読み手を想定し、要所を押さえた見出しや書き出しにする意識は必要です。誰が読んでも要点のわかる良い文章は、良い見出しがあって初めて生まれます。

せっかく準備に手間暇かけるなら、その効果をしっかり実感したいものです。そこで、ここからは「良い見出し」「良いリード」の書き方を解説します。

 

「主題」と「要点」が揃った見出しで読み手をつかむ

野上英文

良い見出しとは、「(1) 何の話か」「(2) 伝えたいことは何か」が「(3) ひと目で」わかるもののこと。(1)~(3)のどれか1つでも欠けていては、相手の興味をこちらに向けさせることはできません。

例えば、会社で部下から「明日の○○社との取引の件...」と延々現状を説明されても「それで?」と思いますよね。逆に「この間の依頼の件、お断りしておきました!」と言われたら「何の話だっけ?」となるでしょう。「どういう用件で、何を伝えたいか」を、最初にセットで示すことが肝心なのです。

例えば、新聞などニュースの見出しも

「首相、○○訪問 核廃絶の決意あらためて表明」などと、「主題&最重要事項」で構成されていますよね。前半だけでは「それで?」ですし、後半だけでは何の話か意味不明。

でもこうして2つが揃えば、何があったか端的に理解できるのです。しかも、こういった見出しは「読んでわかる」のではなく「見てわかる」よう、文字数も極限まで抑えられています。

それはニュースの話では、と思う方もいるようですが、最近は多くの人が情報に対してかなり「短気」です。上司への報告や相談、企画の提案といったものでさえ、何が言いたいかひと目でわかる「良い見出し=タイトル」が求められています。ですから、この「見出しの鉄則」をぜひ覚えてほしいのです。

どんな文章でも、まず「書きたいこと」を整理し、「何についての話か=主題」と「最も伝えたいこと=最重要事項」の揃った見出しを考えてみてください。

とはいえ、そんな細部にそこまで時間は割けないよ、という方も多いでしょう。そこで、明日からできる実践法を1つだけご紹介します。それは、メールの件名に「~について」を使うのをやめることです。

これは「主題のみのNGな件名」を誘発する元凶。「明日の○○社との取引会議について」という件名より、「○○社との契約準備と要対応事項のお伝え」などとしたほうが、何のメールか、どのくらい緊急なのかなどが即座にわかりますよね。ちょっとした工夫ですが、これはぜひ試していただきたいと思います。

 

読み手を5秒で引き込む「結論+結論」の書き出し

野上英文

次の「書き出し=リード」ですが、この部分の役割は、見出しでつかんだ「読み手の関心」を、そのまま離さず本文へと誘導すること。そのために効果的なのが、2つの結論を簡易な接続詞で重ねる「二段論法」のスタイルです。

これは、例えば「今日は雨が降っている。(だから)外出するときは傘を持っていく」のような「結論+結論」でできる単純な構造のこと。単純ゆえに、読み手も内容をすぐ理解して、さらりと話題に入っていきやすいかたちです。

その強みを少しでも活かせるよう、この2つの結論はなるべく簡潔にまとめることがカギになります。2つを結ぶ「接続詞」についても、逆接以外は基本省略OKです。この記事でも、各小見出しの最初の段落を二段論法にしてありますので、ぜひ参考にしてみてください。

そして、最も重要なのが、書き出しの内容を「見出し」と一致させること。時々、結論や主題と無関係の印象的な箇所を見出しやリードに取り入れる方がいますが、それはエッセイなどで使われる「変化球」の書き方です。

ビジネスの文章では、読み手に一瞬たりとも「ん?」と思わせない「王道ストレート」の書き方で、最も伝えたいことを最初に伝えてしまいましょう。

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「3A分析」で見出しとリードを最終確認 >

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