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エンジニアたちはなぜ「松下幸之助の言葉」に心を動かされたのか

2022年10月07日 公開
2023年01月18日 更新

渡邊祐介(PHP理念経営研究センター代表)

 

「できないでは、できない」志ある物づくりを

松下幸之助が、「物づくり」の前提として「人づくり」を訴えた要素は何だったのだろう。

中根氏はアメリカで大ヒットした世界最小ラジオの開発失敗の話をしてくれた。幸之助の期待とは裏腹に、小型水銀電池が開発できず、サイズが大きいままのラジオを開発したが、やはりヒットしなかった。幸之助は納得しなかった。

「きみらは、お客様の立場に立って考えることの本当の意味がわかっていない」と語気を強めた。中根氏は、物づくりに対する心構えが甘かったと述懐していた。

私が、「幸之助という人はカイゼンをよく促すけれども、真意はそこではなく、本来、こんな便利なものをつくれる、またはつくらなければならないと考えるのでは」と言うと、中根氏は大いに納得、頷いてくれた。

「そう、あの人は部品を手にすると、すぐに『何工程でできた?』と尋ねる。『4工程です』と答えると、『いや、2工程でできる』と断言する。そしてそれはいつも間違いではない」

そこから見えてくるのは、技術のレベルではなく、結局高い目標に挑んでやろうという志。だから、人づくりが前提なのだ。

「技術者ほどできないという理論を知っている」という自動車王フォードの言葉がある。幸之助はこの言葉を真理と評価しながら、さらに「できないでは、できない」と述べている。

 

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