もちろん、不人気な物件だと家賃を下げざるを得なくなったり、不動産価値が下がってキャピタルゲインが減るなどのリスクはあります。
しかし、失敗しないためのポイントを押さえたうえで物件を購入すれば、成功確率を上げることができます。
不動産投資は、大きく分けると、上図のように8つの形があります。「一棟」とは、マンションやアパートなど一棟丸ごとへの投資。「区分マンション」は、分譲マンション一戸、もしくは数戸への投資です。
それぞれ「新築」と「中古」があり、さらに、それぞれに「都心」と「地方・郊外」があり、8つに分けられます。
それでは、不動産投資の初心者にお勧めなのは、どのような物件なのでしょうか。一棟と区分マンションについては、一棟のほうがオーナーの自由度が高く、収入も多くなります。
しかし、購入価格は当然高額ですし、管理を管理会社に任せるにしても、一棟のほうが手間暇がかかります。会社員の方はやはり最初は手堅く、区分マンションを選ぶのが現実的ではないでしょうか。
新築と中古は、中古のほうが安いため、リスクを考えれば中古を選ぶほうが堅実でしょう。
都心と地方郊外に関しては、不動産投資の最大のリスクはやはり「空室リスク」です。その点では、賃貸需要が旺盛な都心のほうが安定しています。東京都心は高額で手が出ないという人は、大阪や福岡などの都市で探すのも1つの手です。
下記の7つのポイントは、都心で中古の区分マンションを買う場合の「物件選びのポイント」をまとめたものです。すべてがそろう物件はなかなか出てきませんが、物件選びの際はぜひ参考にしてみてください。
【「堅実な物件選び」7つのポイント】
(1) 立地:20年後、30年後でも、人が住み続ける立地。
(2)駅距離:誰もが名前を知っている駅から徒歩7分以内が理想。
(3)専有面積:独身者のニーズが高い25㎡前後。20㎡以下の狭い物件は避ける。
(4)マンションの総戸数:40戸以上。戸数が少ないと毎月の修繕積立金が割高になりやすい。
(5)築年数:家賃の下落率が低いのは、築10~20年。1981年の「新耐震基準」以前の物件は避ける。
(6)設備:一般的なマンションに備えられている設備がそろっている。
(7)間取り:部屋の間取りがシンプルなもの。好みが分かれる間取りは、空室リスクが高い。
不動産投資を始めるに当たって、物件選びと同じくらい大切なのが、パートナー選びです。私が知る限り、不動産投資に成功している人のほとんどは、良い不動産会社、良い営業マンに出会っています。
まず不動産会社ですが、それぞれ得意不得意があります。有名企業であっても、賃貸や分譲がメインで投資用物件は片手間で扱っているような会社は避け、投資用物件を専門で扱っている会社を選びましょう。
また、提携金融機関も不動産会社を見分けるポイントの1つです。メガバンクや地方銀行など、10行以上の提携金融機関があれば、優良な不動産会社と言えます。
近年、金融機関が不動産会社を精査するようになっています。つまり、取引金融機関が多いということは、その会社の信用と実績がそれだけ証明されていることになります。
投資家が融資を受けやすいノンバンク系としては、オリックス、ジャックスと提携している不動産会社も信頼できます。逆に、取引金融機関が2~3行だけという不動産会社は要注意です。
また、購入した物件の管理を任せる管理会社についても見極める必要があります。なぜなら、管理会社のスキル・能力で稼働率が変わるから。管理会社選びが収益に直結するのです。
一般的には、投資用物件の販売と管理を一括して行なっているケースが多く、こうした場合は特段問題ありません。注意が必要なのは販売だけの会社。
物件を売りっ放しにして管理は別会社に丸投げという会社もあります。物件の資料を見る際には、管理会社が販売会社と同じグループ内にあるか、あるいは販売会社の中に管理機能が併設されているか確認しましょう。
もし、管理会社が別の場合は、その会社が3000戸程度の物件を管理しているかを確認します。3000戸程度を管理するにはそれなりのノウハウが必要なので、1つの目安になります。
信頼できる不動産会社が見つかったからといって、それだけで安心してはいけません。同じ会社の中にも、様々なレベルの営業マンがいるからです。
優秀な営業マンはいきなり物件を勧めたりはしません。まずは色々な質問を投げかけ、投資目的や将来設計、資金状況等についてヒアリングしてくれます。
そのうえで、「このような物件のほうが、お客様に適しているのではないですか」「今は物件を増やす時期ではなく、繰り上げ返済を優先しましょう」といったように、その人に最適な提案をしてくれます。
さらに、その営業マン自身が不動産投資をしていれば、なおいいでしょう。こうした人が身近にいれば、良質な情報を得られますし、物件管理も安心して任せられます。
実は彼らは今売ることに困っていません。良い物件の供給が限られており、お客さんが順番待ちしている状態だからです。そのため、やたらと条件が厳しく、100点を目指す完璧主義の投資家は、物件を紹介してもらえず、1番大事な時間を無駄にしてしまう傾向があります。
かといって、何でもおまかせなのもダメ。理想の80点ぐらいのところでうまく折り合いをつけられる人が、1番うまくいっている印象があります。
私たちは不動産投資のセカンド・オピニオンサービスを手がけています(多くの投資家に知ってもらいたく、当面の間、無料)。こうしたサービスも活用して、堅実な不動産投資を始めていただければと思います。
【山本尚宏(やまもと・なおひろ)】(株)WonderSpace代表取締役。1982年、神奈川県生まれ。2006年、東京大学理学部数学科を中退。在学中に司法試験の勉強を開始(短答式試験合格)。その後、オーセンスグループ(株)(現・弁護士ドットコム(株))などを経て、2014年、(株)不動産投資の教科書を設立。投資家に「本当に良質な不動産投資会社だけをお勧めする」という経営理念のもと、業界の健全化に貢献すべく日々奮闘中。著書に、『99%失敗しない、不動産投資のはじめ方』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
山本氏が代表を務める「不動産投資の教科書」では、「収益用不動産セカンド・オピニオンサービス(AI無料診断レポート付き)」を手がけている(相談無料。ただし年収500万円以上、会社員・公務員の方限定)。
https://saru.co.jp/fudousan-kyokasho/lp-secondopinion
(『THE21』2022年9月号特集「普通のサラリーマンが60歳までに『お金の自由』を手に入れる方法」より)
更新:11月22日 00:05