2022年01月28日 公開
2023年02月21日 更新
じつはイノベーションを起こしている企業ほど、当たり前のようにリサーチをたくさん行っています。
例えばYouTubeは、当初は動画を使った出会い系サイトとしてサービスを開始しており、人々が自分のプロフィール動画をアップしてくれるということを想定していました。「ユーザーが自分の性別と『探している』性別や年齢を選択すると、YouTube 側がランダムに動画を選ぶ」といった形式になっており、最初の設計ではユーザーは見る動画を選べない仕様でした。ところがユーザー数は伸び悩んでしまいます。
そこでプロダクトの使われ方を把握するリサーチを行い、データを精査します。その結果、明らかになったのは、ユーザーはこのサイトを友人やペット、おかしな落書き、ネット上で流行っていることといった、あらゆる種類の動画をシェアするために使っていることでした。
このリサーチ結果から、YouTube は「セールスポイント」を出会い系サイトではなく「動画共有サイト」に特化させるべく方向転換します。恋人紹介という要素をすべて無くし、視聴回数を伸ばすための「関連動画」機能の追加、シェア機能の使いやすさの向上、そしてYouTube の動画プレイヤーをユーザー自身のサイトに埋め込む機能の追加といったことを行っていったのです。
その結果、YouTube が世界的なサービスになったことは言うまでもありません(※参考文献:『YouTube の時代 動画は世界をどう変えるか』ケヴィン・アロッカ著/NTT 出版)。
このように、0→1で生んだ粗削りなアイデアを、1→100 に育てて無敵なアイデアに磨き上げるプロセスでリサーチは力を発揮します。むしろ、リサーチをしなければ適切な修正ができず、イノベーションは生まれなかったと見られているケースのほうが多いのです。
もちろん、YouTube のようにデジタルで提供される商品・サービスのほうが、データを使ったユーザー動向を分析しやすいというのは事実です。ただ、現状をちゃんと調べて、正しい「ターゲット」と「セールスポイント」を発見したり、次にどんな手を打てばいいのかを考えたりする力がヒットをつくるために必要であることは、アナログであろうと、デジタルであろうと変わりません。
「リサーチが使えそうなことはわかったけど、リサーチそのものが難しい……」
「アクセスできる情報が多すぎて、何からどう調べればいいかわからないし、うまくできない……」
そう感じる人も多いかもしれません。
「ファクトだ、データだと言われるけれど、データ集めや解析はプロや理系じゃないとうまくできない……」
「結局、時間切れになって直感に頼るやり方に戻ってしまう……」
これらは実際に私のクライアントからあがった声の例です。
私自身も新人の頃は、情報の山の中から肝心な「商品をヒットさせるために必要な情報」をピックアップできず、解釈できていない生のデータをそのまま持っていって、先輩から「So what?(それで?)」と言われてしまうことがよくありました。「お金をかけて実施した調査で、何も発見できなかった……」なんていう失敗もたくさんしました。
なぜ、リサーチはとっつきにくいのか。それは、リサーチの「用途」と「手法」があまりにも多岐にわたり、調べられる対象が無限にあるからです。網羅的に、体系的に整理しようとすると、あっという間に重厚な辞書のようなものになってしまいます。たくさんありすぎて、消化不良になってしまうのです。
更新:11月22日 00:05