2022年01月28日 公開
2023年02月21日 更新
しかし、そういうとこんな声が聞こえてきそうです。
「わざわざリサーチなんかしなくても、結局勘が当たることも多いよね。経験に基づく勘のほうが精度も高くて、効率がいいんじゃない?」
「リサーチって古いんじゃない? デザイン思考とかアート思考とか、右脳的な直感やセンスがビジネスでも大事と言われ始めているのに、時代と逆行するのでは?」
「いちいちリサーチしていたら変化のスピードについていけないのでは? 意思決定にのんびり時間をかけられるような時代ではないし、直感で即断即決することのほうが大事じゃない?」
経験に基づく勘や直感が大事というのはその通りですが、その「勘・直感」だけを拠り所にして決めた「ターゲット」と「セールスポイント」は、当たるときもあれば当たらないときもあるというのが現場での実感です。
何より危険なのは、時代が変わると「ターゲット」も「セールスポイント」も変わってしまうことにベテランが気づかないと、大きな誤ちをおかしてしまうことです。
「調べる」ことをせずに「勘・直感」だけを頼りに突き進む。それは暗闇の海に船をこぎ出すようなもので、どっちに進むのが正解かわからないままがむしゃらに進んでいるようなものです。無駄打ち・遠回りをしてしまったり、失敗の道を突き進んでしまったりしてしまうと、売れるモノも売れなくなってしまいます。
一方、「勘・直感」に加えて、リサーチを通じて確かな判断軸を持つことで、意思決定の精度は確実に上がります。
そうはいっても、こんな声も聞こえてきそうです。
「いくらリサーチをしても、『スマートフォンが欲しい』というニーズは出てこなかったとよく言われない?」
「イノベーションはリサーチからは生まれないんじゃないの?」
アメリカの自動車会社の創業者であるヘンリー・フォード氏が残した有名な格言に、「もし顧客に何が欲しいかと聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう」という言葉があります。
スティーブ・ジョブズ氏は「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」と言いました。
しかし、ここから、「リサーチをすること」そのものに意味がなかったと判断するのは早計です。なぜなら、これらの言葉から学ぶべきことは、「ただ漫然と『何が欲しいか』を質問するやり方に問題があるに過ぎない」ということだからです。
詳しくは拙著をご覧いただければと思いますが、イノベーションを起こしたいときには、イノベーションのための必要なリサーチがあります。
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更新:11月22日 00:05