2022年01月08日 公開
2023年09月25日 更新
MAAHAのチョコレート。アフリカのデザインをモチーフにしている
――商品の製造は、どのように?
【田口】工房を借りるのにもお金がかかるので、当社のメンバーの3階建の自宅の1階を改装して工房にし、保健所の許可をとりました。
私が商品の製造に関わることも多いのですが、バレンタイン前など、忙しいときには、何人かパティシエさんにも入っていただいています。
――その他の御社のメンバーは?
【田口】共同創業者の高橋(佳愛)は、今も立花商店でカカオの輸入を担当しながら、当社の仕事もしてくれています。
デザイナーは、数々の実績がある方なのですが、大企業の仕事は制約もあるので、ゼロイチの仕事をしたいと協力してくれています。私の大学のゼミの先輩で、ガーナまで映像を撮りに来てくれた映像作家がいるのですが、その方から話を聞いて興味を持ってくれました。
その他、チョコレート作りのワークショップに参加していただいた方もいます。
私が日経のラジオに出演したのを聞いてインターンに来てくれた学生は、それまで海外に行ったことがなかったのに、先日ガーナに一緒に渡航し、私が日本に戻った後も現地に残り、楽しそうに過ごしていました。ガーナに行くと、皆、ガーナのことが好きになるんです。
ガーナには課題もありますが、「かわいそうだから助けたい」という気持ちだけでは、活動が続かないと思います。カカオの品質向上やチョコレート作りで彼らをサポートしつつ、彼らから精神的な豊かさや価値観を学ぶという循環ができればいいなと思っています。
――ガーナ側のスタッフは?
【田口】一番サポートしてくれているのはコフィさんという方で、最初から家に泊めていただいている方です。カカオ農家に生まれたのですが、収入が低いので引き継ぎたくないと思っていたところで出会い、共に今のプロジェクトを立ち上げました。
――ちなみに、ご両親はどう思っているのでしょうか?
【田口】父がポーランドに飛び込んだのは、日本人がいないところがよかったからだそうです。そこには共感できるので、血を引いているなと思います。
母は比較的保守的なのですが、父についてポーランドに行って、ポーランド語を勉強したくらいですから、タフだなと思いますね。
とはいえ、アフリカは危険なイメージがあるので、一人娘が行くのは父も不安がっていました。了承がもらえず、成田空港で「やっぱり行きます」と電話をして飛行機に乗りました。
でも、徐々にプロジェクトが形になっていくのを一番喜んでくれています。クラウドファンディングも百貨店との取引も、最初に報告しているのは両親です。一番の理解者ですね。
マラリアには3回かかりましたが、危険から身を守る方法も身につきましたし。
――マラリアに3回も?
【田口】かかるたびに意思が強くなりました。200円ほどで治療薬が買えるのですが、それを払えない人もいるわけです。これが払えなければ死んでいたかもしれないと思うと、手が震えましたね。
それに、死に向き合う状況になると、「今死んだら、何も達成できていない」「こういう人たちに囲まれて、こういう言葉をかけられて死にたい」という想いが強くなりました。どうやって人生を歩むか、考えさせられる経験でした。人にお勧めはできませんが(笑)。
――最後に、今後の展開についてお教えください。
【田口】コロナ禍のうえ、電話をかけても電波が悪くて、エンプレーソからのカカオの輸入は止まっていたのですが、状況が落ち着いてきたので、冒頭でお話ししたように、コンテナでの輸入に向け、現在下準備をしています。
2022年のバレンタインでは、西武池袋本店の他、日本橋三越本店や伊勢丹新宿店、全国の高島屋、なんばマルイでも商品を扱っていただくことになりました。
MAAHAはリブランディングして、パッケージもアフリカのデザインをモチーフにしたものに変えました。それぞれに深い意味があって、彼らなりの豊かさが伝わればと思っています。
輸入したカカオは、MAAHAブランド以外の商品にも提供する予定です。現在もカフェで提供する商品や高島屋とのコラボ商品など、OEMの案件を10件ほどいただいていて、今後も広げていけたら嬉しいです。
ときどきインスタライブでお客様にお見せしているのですが、現地でのチョコレート工場の建設も進んでいます。加工を日本でしている現状では、カカオ農家への還元は売上の2%ほどなのですが、現地の工場でチョコレートを作って日本に輸入し、販売すれば、70~80%を還元できると思います。
2023年のバレンタインデーには100%メイド・イン・ガーナのチョコレートを提供したいですね。
《写真撮影:まるやゆういち》
更新:11月17日 00:05