2022年01月08日 公開
2023年09月25日 更新
――初めてのガーナで、児童労働は目にしましたか?
【田口】本人の意思に反して、親元を離れさせられて、強制的に働かされるということは、国際機関や政府の取り組みもあって、かなり少なくなってきています。
ただ、子どもが時間がある時にカカオを収穫するというようなことはあります。貧しくて、働かなければならないから、学校に行けない、という話もよく聞いていましたが、「どうせ農家になるのに、学校で勉強して何になるんだ」と、子ども自身の意思で親のお手伝いをしているケースもあります。
私が日本で知っていたことは、事実の断片でしかなかったんだなと感じました。どこまでがお手伝いで、どこからが児童労働なのか、よくわからなくなって、モヤモヤとしました。
そして、児童労働を見かけたら無理やり止めるのではなく、根本的には農家である親の収入を上げないと状況は変わらないと思いました。家の収入が上がれば選択肢が増えるはずです。
――NGOなどに参加するという方法もあったと思いますが?
【田口】それも考えましたが、農業技術や政府との交渉の問題もあって、カカオの品質や価格を上げることに取り組んでいるNGOは、特に日本に輸出するカカオについては、ありませんでした。
もともとリーダータイプでもないし、起業を考えていたわけでもないのですが、自分がやりたいことを100%できる場所がないかなと思っていたので、ソーシャルビジネスのプロジェクトを進めることにしました。
――最初のガーナ渡航から帰国するときには、ビジネスを考えていた?
【田口】帰国してからは、持ち帰ったカカオを使って、チョコレート作りのワークショップを開いていました。そこで、「ガーナには大変な問題もあるけど、皆、心が温かくて、笑顔が素敵で、どんなときに幸せを感じるか尋ねると『毎日だよ』と答える」というような話をしていました。
ワークショップは友達を集めるところから始めたのですが、好評をいただき、知らない方にも参加していただけるようになりました。
同時に、ショコラティエの方々へのインタビューもしていました。
そうしているうちに、「日本の人たちに、もっとガーナのことを知ってもらいたい。ガーナのカカオ農家にもショコラティエの声を届けたい。その架け橋になれるんじゃないか」と思うようになりました。
――そこから、どのように動いたのでしょうか?
【田口】ショコラティエが求めるカカオの品質をしっかりと聞いたり、輸入商社の方にガーナからのカカオの輸入の協力をお願いしたりしました。
そして、2019年3月にガーナに戻って、「こういう品質だと高く売れる」という話をしました。話だけではわかってもらえないので、実際に様々なカカオでチョコレートを作って食べ比べてもらい、品質改善に取り組み始めました。
私がいなくてもチョコレートが作れるように、ミキサーを2つ置いた小さな工場も作りました。先ほどお話しした、私が寝泊まりしている工場です。工場があることで、地域全体でチョコレートについて考えるようにもなりますから。
更新:11月17日 00:05