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デジタル化の遅れは取り戻せるか...日本を停滞させた「その場しのぎ」の風潮

2021年12月08日 公開
2023年10月31日 更新

Lars Godzik〔Ginkgo創業者/パートナー(共同経営者)〕、太田信之〔OXYGY株式会社 代表取締役/アジアパシフィック代表パートナー〕

 

和をもって貴しと為すことが大切

日本の管理職の中には、自分達が休暇をとらないため、従業員も同じように休暇をとるべきではないと考える人がまだまだいます。よって、従業員は、周囲の目を気にして、チームの調和を乱すことを恐れ、年次休暇を取得しようとしません。

こうした考え方には、違和感があるように感じる人も多いかもしれませんが、日本は19の経済地域の中で、休暇承認のレベルが一番低く、更に悪いことに、従業員への休暇奨励においては世界最低レベルという残念な結果は数字としての事実です。

これは、どんな理由から来るのでしょうか?休むという行為で、迷惑、罪を作りたくない、そうしたことをする人には思われたくないという、他者の目を気にする日本的会社文化が大きく影響しています。

日本のビジネスコミュニケーションにおいては、最大優先事項は、関係性の維持です。例えば、多くの参加者がいる公の場(会議など)で、上層部に疑問を投げかけるということは非常に珍しいことです 。

「失敗から学ぶ」環境をつくることが、効果的なアジャイル組織を作る重要な要素でもあるにもかかわらず、自分の意見を表明することが、容認されるどころか奨励もされないというのは、大きな障害です。

仕事に起因する圧力はとても強いため、評判を落とさないようにすることは、いつのまにか家族や自分の健康よりも大事だと思い込むような状況になっています。

仕事において効率的に休みをとることは、心身の健康を保ち、余暇や友人、家族との時間を通して元気の源をつくるための重要事項であり、本来議論の余地のないことです。不明瞭の度合いによっては、若くて、より専門性があり知識のある従業員が、個人の能力を発揮する妨げにもなります。

集団主義的なマインドセットは、チーム精神や人間関係においては好まれますが、新しい課題に取り組むための生産的な議論においては、非常にやっかいなコストとなります。

 

■著者プロフィール

Lars Godzik
ドイツで創業されたIndustry 4.0、DXを専門とするコンサルティング会社、Ginkgoの創業者でパートナ ー(共同経営者)。ドイツ企業だけでなく、日本、アジアの大手企業のDX変革に造詣が深く、多数のスタートアップ企業、デジタル企業の役員、顧問を歴任している。

太田信之(OXYGY株式会社 代表取締役/アジアパシフィック代表パートナー)
1966年、東京都出身。国際基督教大学卒業後、ソニーに入社。イタリア駐在時にマーケティング部門でマネジャーを務める。その後、GEにて事業開発や事業統合の業務を経験。複数のコンサルティングファームを経て、外資系コンサルティングファームのValeoconManagement Consultingのアジア代表に就任。同社経営陣の一員として、M&AによりOXYGYを設立、アジアパシフィック代表を務める。2019年から現職。専門セクターは、ライフサイエンス、製造業(特に素材、部品、食品)。実施内容は会社、事業単位でのトランスフォーメーション。

 

 

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