2021年10月12日 公開
今回紹介するのは、アウトドア総合メーカー「モンベル」が販売する、屋外で利用可能な墨書用具セット「野筆セット」です。
私は文房具が好きで、普段から色々な文房具を購入したり使ったりするだけでなく、文房具店などで「文具浴」を楽しんでいます。
特段購入すべき文房具がない場合でも文房具店を訪問し、森林浴の要領で、文房具が並んだ棚の間をなんとなく歩いて過ごすと、ある時は心が落ち着き、またある時は刺激を受けるなど、心地よいひと時になります。
文具浴は新たな文房具との出会いを得ることも目的の一つですが、文房具との出会いは文房具店だけでなく、画材店、キッチン用品、工具売り場など領域違いの場所でも得ることがあります。
今回紹介する「野筆セット」も、文具浴のついでに立ち寄ったアウトドアショップで出会った「文房具店に並ばない文房具」の一つです。
アウトドア活動の邪魔にならない小型のラウンドジップ型ケースの中に、墨書に必要な筆・墨・硯・水差しを整然と収容しています。
特に硯は特徴的な形状をしています。通常の硯は、墨を擦る「墨堂」、墨を貯める「墨池」、周囲を囲む硯縁などから構成されますが、「野筆セット」の硯は厚さ4mmの完全な一枚板で、この形状こそがアウトドア用の携帯性の良さの源になっています。
私は特段書道に興味を持っているわけではないのですが、「野筆セット」の薄板型の硯を一目見ただけで使ってみたいと感じ、購入してしまいました。
「野筆セット」はモンベルと製硯師・青栁貴史さんが共同開発した商品です。硯の文化・製法・材料等に造詣が深い青栁さんが選択した材料は宮城県石巻市雄勝町産の雄勝石で、伊達政宗にも献上され絶賛されたという逸話もある和硯の名材料であり、「玄昌石」という特別な別名もついています。
使用する際は、硯の上に数滴水をたらして静かに墨を擦れば、はがきや一筆箋等に短文を書くには十分事足ります。
特に屋外活動をする場合は、清流や湧き水を水差しにとって使えば、書を楽しみ思い出に残ることでしょう。
薄板状なので、システム手帳のポケットリフィルに収容し、持ち運ぶのも良いかもしれません。
様々な文房具の中で筆記にかかわる筆墨硯紙は「文房四宝」と呼ばれ、特に珍重されています。その中でも硯は実用性だけでなく、装飾を施した観賞用品としても重要視されています。
「野筆セット」の硯のデザインは極限まで単純化されていますが、そのシンプルさゆえにかえって末永く手元において愛でたくなる趣を持っています。
書をたしなむ方はもちろん、書になじみのない方も、「野筆セット」を使って様々な場所で気楽に書を楽しんでみるのは如何でしょうか。
《写真提供:〔株〕モンベル》
更新:11月21日 00:05