2021年08月06日 公開
2023年02月21日 更新
写真撮影:まるやゆういち
2020年以降の株高に対しては、政府による金融政策の影響を挙げる声が多い。しかし、マネックスグループCEOの松本大氏はそれ以上に、「アクティビスト」と呼ばれる株主の存在に着目する。企業に対して積極的に意見を伝える彼らが、今後は株式市場にポジティブな構造的変化をもたらすというのだ。日経平均4万円台到達への可能性も含めて、詳しくうかがった。(取材・構成:塚田有香)
※本稿は『THE21』2021年9月号より一部抜粋・編集したものです。
2021年2月15日、日経平均株価は約30年ぶりに3万円の大台を突破した。この日が来るのを早くから予想していたのが、マネックスグループCEOの松本大氏だ。
同グループのマネックス証券は、日経平均株価が2万2000円を回復したばかりの17年10月に、会社として「日経平均株価は3万円へ上昇する」との見通しを発表していた。なぜこの時点で、今後も株価上昇が続くことを予想できたのか。
「私たちが『日経平均3万円』を言い始めたのは、以前に比べて日本企業の儲ける力が非常に強くなったこと、それによって株主への分配が増えたことが大きな理由でした。よって日本株もバブル崩壊後から続いた横ばいを脱し、米国株と同じように、基本的には右肩上がりを続けるだろうと予想したのです。
ただ、今年2月のタイミングで3万円台に乗ったことについては、やや下駄を履いた部分もあると考えています。
コロナ禍で世界中の政府や中央銀行が財政出動や金融緩和を行ない、市場には大量のマネーが供給されました。その結果、法定通貨の価値が下がるという現象が起こったのです。
野菜を作り過ぎると価格が下がるように、お金の価値も刷りすぎれば低くなる。すると、供給量が限られている株式や不動産の価格は、相対的に上がります。
こうした背景があるので、"下駄を履いた"と表現しましたが、長期的に見れば日本株の上昇基調に変わりはなく、今回の日経平均3万円台突破も想定通りの結果と捉えています」
「コロナ不況」と呼ばれる経済状況下で、なぜ株価が上がるのかと不思議に思う人もいるだろう。だが松本氏は「実体経済と株価は連動しない」と話す。
「バブル崩壊後、4万円近かった日経平均株価は下がり続け、2000年代には1万円を割りました。ところが株価が1/4に下がったにもかかわらず、その間の日本のGDPに極端な変化はありませんでした。つまり、実体経済と株価には連動性がない。これは歴史を見れば明らかです。
今回のコロナ禍でも一時的に株価は下がりましたが、昨年後半には上昇傾向に転じています。その時点で株に投資した人と、『実体経済と株価が乖離しているのはおかしい』と考えて投資を控えた人とでは、大きな差がついてしまいました」
この取材が行なわれた7月現在、日経平均株価は2万8000円台で推移している。今後の株価の見通しについて、松本氏はさらに上がると予想する。
「米国の株価が史上最高値を更新し続ける中、日本は出遅れている。日本の株価はまだまだ上昇する余地があります」
加えて、松本氏が好材料として挙げるのが、アクティビストと呼ばれる株主の存在だ。
「企業に対して積極的に意見を伝えるアクティビストは、日本では『もの言う株主』と呼ばれ、これまで煙たい存在と思われてきました。しかし最近は風向きが変わり、企業の変革を推進するために必要な存在として認識されつつあります。お金の供給量が増えるといった要因があくまで一時的なものであるのに対し、こちらはよりサステナブルでポジティブな構造的変化です」
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更新:12月04日 00:05