2021年07月14日 公開
コロナ禍で最も大きなダメージを受けている業界の一つがエンターテインメント業界だ。また、日本はエンターテイメントの分野でも"ガラパゴス化"してしまっているという。原宿から世界へカルチャーを発信し続けるアソビシステムの創業社長・中川悠介氏に、これからのエンターテインメントのあるべき姿を聞く。(取材・構成:林加愛)
※本稿は、THE21編集部 編『2030年 ビジネスの未来地図』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
オンラインやバーチャルの環境の普及によって広がる可能性の一つは、世界への進出です。
日本独特のガラパゴス化の傾向は、エンターテインメント業界にもあります。例えば、音楽のダウンロード販売が一般的になっても、CDを買う人がいます。
ガラパゴス化したのは、国内市場が大きく、十分な内需があったからです。しかし、コロナ禍によって国内市場は一気に縮小しました。アフターコロナを見据えても、人口減少によって、国内市場は以前よりも小さくなっていきます。
そうなると、海外に打って出なければなりません。今後はYouTubeやSpotifyなどでの音楽配信により注力し、グローバルな発信が加速するでしょう。
競争の激しい世界市場でも、日本のコンテンツは戦える力を十分に備えていると、私は考えています。
日本の強みは、クリエイティビティと繊細さです。
エンターテインメントに限らず、日本人の表現には、細部のニュアンスに至るまで作り込んだ魅力があります。自動車や家電もそうですし、アニメもそうです。これらが海外で成功した例があるのですから、クリエイティビティと繊細さが世界に通じる日本の強みであることは確かです。
海外で活躍している日本人の美容師やネイリストも数多くいます。
音楽やファッション、MV(ミュージックビデオ)などのアートワークにおいても、繊細さは日本のオリジナリティを示す重要なファクターになるでしょう。
社会的な視点、特にSDGsの意識を持つことも、ますます求められます。
これは、単に世界的な潮流に追随するという話ではありません。
タレントやアーティストなどの表現者たちは強い影響力を持っています。その一人ひとりが高い意識を持って発信していくことには、大きな社会的意義があります。
日本人は概して社会問題に関心が薄く、海外で起こっている紛争や人権侵害、地球を危機にさらしている環境問題についても、どこか他人事のように捉えています。芸能人が政治的な発言をするとネガティブな反応が起こるのも、その表れの一つでしょう。
しかし、コロナ禍では、すべての人が例外なく危機にさらされました。国や地域の違いを超え、同じ不安を共有している今の状況は、日本人が社会への無関心から脱却する大きなきっかけとなるでしょう。その原動力として、エンターテインメント業界も大いに寄与できると考えています。
それにはまず、業界に身を置く人々がきちんと学ぶことが大事です。発電が地球にどんな影響を与えているのか、といった現状を知り、問題解決の方法を探らなくてはなりません。
当社では、スタッフが学びを深めていますし、電力を再生可能エネルギーに変えるといった取り組みもしています。それだけでなく、タレントを対象とした講座も随時開いています。
再生可能エネルギーや無駄のない消費のあり方を知ってもらうことで、個々の表現者たちが自らの考えを持ち、社会の中での立ち位置を明確にし、責任を持って行動できるよう働きかけています。
SDGsの目標の一つである「ジェンダー平等」も、エンターテインメント業界が強く推進するべきテーマです。
あらゆる性別に門戸を開くこと。性別ではなく「個性」でその人を見ること。業界に身を置く人は、その姿勢を一貫させるべきです。
そうして魅力的な表現者を送り出していくことも、社会貢献の一つとなるでしょう。
更新:11月24日 00:05