2021年07月08日 公開
それから10年余りが経ち、トップとなった今も、「下を見て仕事をする」姿勢は変わらない。
「上司におもねらないことはもちろん、自分自身も偉くなろうとしないことが大事です。『俺が社長になってやる』という自信満々なタイプの人は意外と社長になれません(笑)。部下の声に聴く耳を持たず、部下の可能性を活かそうともせず、自分の力だけを信じ込む高圧的な人物は、いつか判断を間違い、失敗するのです」
会社を良くし、社員を幸せにするという責任感を持つ人間こそがリーダーとして信頼を得ていく、と語る。布施氏はまさにその道をたどったことになるが、最終意思決定者となった今、リーダーシップのあり方は、中間管理職時代とはどのように変わったのだろうか。
「意思決定をする際の、決断の拠りどころを常に意識しています。それは当社において、お客様を第一に考えること、そしてCSV(Creating Shared Value)経営、すなわち社会課題に取り組み、世のためになる働きをして利益を生み出すこと。この二つに則っているかどうかを、絶えず考えます」
これまで一貫して考えてきた「部下の幸せ」と、現在見据えている「世の幸せ」は相互に連関する、と語る。
「世に貢献している実感を持てば、社員は誇りを持って仕事ができます。結果、生産性が上がり、さらに世に役立てます。コロナ禍にあって、ご家庭で『一番搾り』を購入する方々が増えています。
そんな方から『つらい中、明日の活力をもらっている』とお手紙をいただくことが多く、それがまた社員の支えになっています。私の役割は、この好循環を、決断と戦略をもって作り出すことです。リーダーとは、『人を幸せにする仕事』なのです」
更新:11月24日 00:05