2021年07月07日 公開
2021年07月19日 更新
――そもそも、なぜ日本で起業したのでしょうか?
【ホワイトウェイ】僕はハーフで、生まれは日本なのですが、大学まで米国で過ごし、卒業後に2年間ほどのつもりで、日本で働き始めました。結局、それから20年以上、日本で暮らしています。
日本で起業したのは、日本が素敵な国なのは前提として、AIのビジネスにとって大きなポテンシャルがあるからです。人口が減り、高齢化が進んでいるので、労働力の減少をAIでサポートすることが必要です。AIが最も大きなインパクトを与えられるのは日本だと思います。
――起業する前はモルガン・スタンレーMUFG証券に勤めていたということですが、なぜ、AIで起業しようと思ったのですか?
【ホワイトウェイ】もともとコロンビア大学でエンジニアリングを専攻していて、モルガン・スタンレーでもテクノロジーを使ったアルゴリズム・トレーディングをしていました。ですから、テクノロジーへの興味は以前から強かったのですが、特に2014年頃からAIに可能性を感じるようになりました。今後、AIで新しい価値を創ることができるんじゃないかと思い、迷うことなく、AIの会社を作ったのです。
当時は、AIが、人間と同じか、それ以上の画像認識能力を持ったことが話題になっていました。その技術を何に役立てられるかを、色々な会社と話をしながら考えた結果、幅広い業界で大きなインパクトを与えるには、データ入力の分野だということがわかり、AI OCRの開発を進めることにしました。
――そこで、AI OCRの技術者を世界中から集めた?
【ホワイトウェイ】当時は、まだAI OCRという言葉も浸透していなかったと思います。AIで具体的に何ができるかよくわからないけれども、AIに可能性を感じてワクワクしている人たちが集まりました。
AIに関するセミナーなどを開催して人を集めたり、エンジニアがよく見るウェブサイトに情報をアップしたり、色々な方法で人を集めましたね。
――ユーザーを集める営業活動は、どのようにしたのですか?
【ホワイトウェイ】お客様のところに直接出向くチームも作りましたし、パートナーを増やすことにも力を入れました。
当社のサービスを売ることよりも、お客様のニーズや課題を理解することを重視していますし、パートナーとも、その先にいるお客様も含めて、Win-Winの関係を作ることを重視しています。
――当初、顧客の反応はいかがでしたか?
【ホワイトウェイ】AIに何がどこまでできるのか、興味を持っていただき、実際に手書きの汚い字でも読み取れるのを見て、「こんなことまでできるんだ」と業務効率化に役立つことを理解していただいた感じです。
この2~3年は、AIができることが具体的に明らかになってきて、業務の中で具体的にどう使えるかをイメージできる方が多いですね。
――顧客のターゲティングはしていたのですか?
【ホワイトウェイ】規模ごとに戦略は立てていますが、規模が大きくいても小さくても使えるサービスなので、あらゆる規模の顧客に使っていただきたいと思っています。
――創業以来、特に苦労したことは?
【ホワイトウェイ】当社はインターナショナルな会社だとお話ししましたが、初めは、様々なコミュニケーションスタイルや価値観の人たちが集まったことでコミュニケーションが難しくなり、それがチャレンジでしたね。それを乗り越えられたことが、当社の強みになったと思います。
――米国で育ち、外資系企業で働いてきても、そこに難しさを感じたのですね。
【ホワイトウェイ】そうですね。20カ国からメンバーが集まっていますし。
Cogent Labsはワンチームで建設的にミッションに向けて動くことを推奨しているので、様々なコミュニケーションスタイルの人たちを受け入れるカルチャーを徐々に作り上げられたんじゃないかと思います。
――社長自身がミッションについて話す機会も多い?
【ホワイトウェイ】常にそういう話をしていますし、入社する人は、ミッションをわかったうえで入ってきています。
――最後に、これからの展望についても聞きたいと思いますが、海外展開は既にしている?
【ホワイトウェイ】韓国で実際にビジネスをしています。
――今後、さらに広げていく?
【ホワイトウェイ】はい。知的労働者の生産性を向上するというのは世界共通の課題で、どの国にもニーズがあります。ビジネスのポイントとしては、各地域のパートナーとしっかりと組むことだと思います。
――海外市場では競合する会社が増えると思います。
【ホワイトウェイ】世界的に見ても文字認識の精度が高いので、競争できる自信はあります。
Tegakiは、クラウド版に加え、ネットワークに接続しないセキュアな環境下で利用が可能なオンプレミス版も提供しています。
他にも、APIを通じて海外のベンダーが提供する様々なソリューションとも手軽に連携できる柔軟性も、海外市場において強みになると考えています。
――海外進出の他に、今後、特に力を入れていくことは?
【ホワイトウェイ】帳票などをデータ化するOCRだけでなく、そこから情報を構造化して取り出すことを、当社ではIDP(Intelligent Document Processing)と呼んでいますが、さらに、それによって次のワークフローを自動化することにも取り組みたいと考えています。
キーワードはCognitive Automationです。より複雑な認知・認識まで、AIが自動で行なうのです。例えば、手書きのアンケートの回答の読み取りから、回答者のインサイトを取り出すところまでを自動化する、というようなことです。
その先で、人々の生活の質を高める、という当社のビジョンが実現すると思います。
更新:11月22日 00:05