次にお伝えしたいのは、共有の範囲です。
たとえば、部下Aが上司Bに問題を報告したとしましょう。上司Bは、部下Aに内容を確認し許可を得た上で、問題を共有しました。
しかし、ここで事件が起きます。上司Bが別の部署の部長Cを含む社内SNSの管理職グループ上で情報を共有した結果、部長Cの下で働く部下Dにも情報が伝わってしまったのです。これは部下Aにとって予想外でした。部下Aと部下Dは同期の関係であり、部下Aは部下Dに自分の問題が伝わるのが不本意だったのです。
部下には、絶対に情報を知られたくない対象があります。ですから、「どこまで共有していいのか」という共有の範囲を明確にしておきましょう。
社内SNSなどのコミュニケーションツールを活用して情報を共有する場合は、事前に「どこまで情報が共有されるのか」を伝える方法もあります。
「ここで情報をアップすると部長以上は閲覧できるようになっているけど、大丈夫かな」
「ということは、あの部長Cも見るわけですよね。そうなると、部長Cから話が広がる可能性がないですか?」
「そのリスクは確かに考えられるな。それなら、口頭で役員Eに伝えてみるよ」
こういった会話を通じて、部下の確認を取っていくのです。
会社に問題を報告すると、即改善に動き出す可能性があります。それが部下にとって不利益となる場合も想定されます。
たとえば、部下が特定の社員の問題行動を報告してきたとしましょう。たしかに、その社員の問題行動が原因で、下に配属された人が連続して退社している状況がありました。
上司としては、会社と問題を共有して配属を変えるなどの対策を講じたいのですが、今このタイミングで報告したらどうなるでしょう。会社は問題の改善をしてくれるかもしれませんが、「誰がチクったのか」という問題に発展するおそれもあります。そうなると、問題を報告した部下にとって不利益が生じます。
この場合は、上司として会社へ共有する適切なタイミングを検討した上で、部下と一緒に考えるのがベストです。自分でタイミングを見計らうよりも、部下と双方で確認したほうが納得感は高まります。
「たしかに、君の正義感は素晴らしいし、この問題は何とかしなければならないと思っている。会社にも伝えて策を講じるつもりだ。ただ、今すぐ伝えると、君が報告したというのがあからさまになってしまう可能性があるから、どのタイミングで伝えるべきか一緒に考えよう」
このように、双方で決めておけば、最悪トラブルが起きたとしても、部下とともに対処することができます。
確認したい項目の5つ目が「共有の方法」です。共有の方法についてはさまざまありますが、ここでは3つの方法に絞って解説します。
1.人事評価シート、面談シート
人事評価について会社に報告するタイミングを利用して、職場の問題を合わせて報告する方法です。人事評価シートなどを活用している場合は、シートに記録して提出します。この場合も、事前に部下の承諾を得ておく必要があります。
ここでのポイントは、報告の根拠となる部下の行動記録・面談記録を合わせて提示することです。経営陣は、何事も根拠となるデータをもとに判断をする習慣があります。
根拠がしっかりしていれば説得力が高まります。逆にいうと、根拠がないまま問題を報告すると、上司がただ主観的な意見をいっているだけ、と受け取られる可能性があります。
「いつ部下からどのような報告があったのか」
「その根拠となる出来事として、どのようなことがあったのか」
これらを普段からこまめに記録しておくことをおすすめします。
2. 社内SNS、コミュニケーションツール
社内SNS、コミュニケーションツールにはメリットとデメリットがあります。それを踏まえた上で、シチュエーションに応じて活用していきましょう。
社内SNS、コミュニケーションツールを通じて報告する場合は、部下と一緒に報告の文案を考えるのも良いでしょう。これは部下の合意を得るためでもあります。事前に合意を得ていれば、トラブルに発展するリスクを軽減できます。
3. 直接会社へ報告
喫緊に報告すべきとき、あるいは秘密厳守が求められるときは、しかるべき人にアポイントを取って直接報告を行います。また、報告した内容もしっかり記録しておきましょう。
この場合は1対1の報告が原則です。管理職以上が集まる会議などで報告すると、「無関心な人」「興味本位な人」「問題を拡散させる人」が入り込む余地があります。こういった人物は外して行うのが鉄則です。
更新:11月24日 00:05