職場で問題が起きているとき、真因を把握し解決に向かうために、部下の本音を聞き出す必要がある。そして、上司一人の権限では改善できない問題であれば、会社に報告しなければならない。
しかし、報告の仕方を間違えると、部下から「チクった」と見なされて、かえって信頼関係を損ねることに…。会社との問題の共有の仕方について、人事コンサルタントの大橋高広氏に聞いた。
※本稿は、大橋高広著『リーダーシップがなくてもできる「職場の問題」30の解決法』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
昨今は、社内SNSの活用が一般化してきたこともあり、「情報はとにかく共有するのが善」という風潮があります。
しかしながら、情報共有のプレッシャーが社員を精神的に追い込んでいる側面もあります。私は、これから先、「社内SNS疲れ」が社会問題化していくのではないかと予測しています。
そもそもの話として、上司は部下からの相談内容について、会社と共有しないのが原則です。「部下が上司に相談した内容はすべてオープンな情報」という考えは間違っています。部下の許可がない会社への報告はただの嫌がらせです。
一方で、会社と情報を共有しないことには改善が進まないのも事実です。つまり、上司には、適切なプロセスを経て情報を共有する責務があるわけです。
そこでまず確認していただきたいポイントがあります。共有の許可です。部下に許可を取ってから会社に報告するということです。
ただし、単純に手続きとして部下の許可を取ればいいわけではありません。中には「上司から無理矢理許可を取られた」という認識を持つ部下がいるからです。極端なケースでは、パワハラとして訴えようとする部下もいるかもしれません。
上司が持っている「常識」と、部下が持っている「常識」とはまったく異なります。
今の上司が若かった時代は、これといった説明がなくても上司がいい出したことはとにかくやる、という意識が強かったと思います。
しかし、今の若者は、「目的が何であるか」を非常に気にします。目的がわからないことには、たとえ上司からいわれても、おいそれとは受け入れられないのです。
ですから、上司はまず自分の常識を一回棚卸ししましょう。その上で、部下の常識に合わせて説明していく必要があります。
「今回聞いた話については、職場の改善につながるし、ひいては会社の発展につながる内容だから、会社にも私から共有させてほしい」
実は、こういった説明では積極的な理解が得られる可能性は低いでしょう。部下本人のメリットが見えないからです。
「もし職場の改善が実現できれば、君も早く帰ることができるようになるよね。そうしたら希望していた海外赴任に向けた勉強時間も生まれるんじゃないか」
たとえば、こんなふうに本人のメリットを明確にしていくと、部下の納得感も高まります。
共有の許可を取ることができたとしても、すべての情報を共有していいわけではありません。
部下にしてみれば、「共有していい情報」と「共有してほしくない情報」があります。そこで、共有する内容についても事前に確認しておきましょう。当然、この場合も「共有する理由」を伝えるのがマストです。
共有できる範囲とできない範囲をきちんと線引きできる上司は、部下からの信頼も厚くなります。信頼を構築することが、問題があったときに真っ先に相談してもらえる関係づくりにつながります。
更新:11月24日 00:05