老後にお金で苦労しないためには、収入のWPPをしっかりと押さえておくと共に、支出の管理も大切です。
支出は大きく「日常生活費」「自己実現費・一時出費」「医療費・介護費」に分けて考えてください。
自己実現費とは、趣味や旅行など、自分がやりたいことのために使うお金です。一時出費には、家のリフォーム代や子供の結婚資金の援助などがあります。
多くの人は、支出を抑えようとするときに、自己実現費を削ろうとします。でも、これは間違い。何のためにこれまで一生懸命働いてきたかと言えば、働いて得たお金で人生を楽しむためです。ですから、これを減らしてしまうのは本末転倒です。
削るべきなのは、日常生活費の中でムダが発生している部分です。
中でも最も大きなムダが、保険料です。
保険とは、契約者が少しずつ出して集めたお金を、不幸な目に遭った人に回してあげる相互扶助の仕組みです。自分のお金では賄えないような事態に備えて、保険料を払うことで保障を得るのが、その役割です。
つまり、保険の目的は保障なのです。にもかかわらず、貯蓄や資産運用のように保険を利用している人がいます。これは大きな間違いです。
18年に行なわれた生命保険文化センターの調査によれば、世帯年間払込保険料は、世帯主が60~64歳の家庭では約44万円、65~69歳の家庭では約34万円に達しています。
子供が小さいときであれば、万が一に備えて生命保険も必要でしょうが、大きくなって独立してしまえば、ほとんど必要はないでしょう。解約して貯蓄に回すべきです。
同様に、日本は公的医療保険が充実していますから、民間の医療保険も、まず必要ありません。
その他、入会しているのにほとんど利用していないスポーツジムなどの会費、新聞や雑誌の定期購読費、携帯電話の使っていないオプションなども削減の対象です。
「日常生活費」「自己実現費・一時出費」「医療費・介護費」のそれぞれについて、お金の出所を変えておくこともポイントです。
日常生活費は、毎月必ず発生しますが、月々の支出額にそれほど大きな変動がなく、三つの支出の中で最も予測がつきやすいものです。これには公的年金で得た収入を充てましょう。
公的年金は、安定した金額のお金が死ぬまで毎月確実に給付されます。公的年金の給付範囲内で日常生活費を賄うようにすれば、基本的な生活に困ることはありません。
自己実現費・一時出費には、定年後も働き続けることで得たお金を充てます。頑張って働けば、その分、趣味や旅行に注ぎ込めるお金が増えるわけですから、働きがいがあるというものです。
医療費・介護費は、いくらかかるか、一番予測がつきにくい支出です。医療費も介護費もほとんどかからずに亡くなる方もいれば、要介護状態が10年以上続く方もいます。
わからないからこそ、これには退職金や貯金を充てるようにします。
逆に言えば、退職金や貯金を医療費・介護費以外に使うことはできるだけ避けるべきです。
ましてや、「退職金で投資家デビュー」は絶対にやるべきではありません。
繰り返しますが、老後のお金について、必要以上に不安を抱くことはありません。ここまで述べてきたことを意識すれば、老後不安とは無縁の生活を送ることができます。
更新:04月13日 00:05