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社を挙げて「転売ヤー」になる愚…バブル世代のおじさんに注意せよ?

2021年03月01日 公開
2023年02月21日 更新

小阪裕司(オラクルひと・しくみ研究所代表)

小阪裕司

「やっぱりマスだ」の原点回帰ほど危険なものはない

しかしここで、久しぶりに爆発的な「マス」のニーズを喚起する商品が出た。それが「マスク」である。あるいは消毒用アルコールなど除菌用品もそうだ。これこそまさに、久々に登場した、老若男女あまねく欲しがる商品だった。

だが、逆に言えばこうした商品は、災害レベルのことが起きない限りは生まれない、ということになる。オイルショックの直後にトイレットペーパーがなくなったという話と同じだ。

つまり、企業がコントロールして作ったヒットではない。「マスク特需」に沸いた企業はあくまで、時代の流れに追随したということだ。

私がここで危惧しているのが、マスクが飛ぶように売れた状況を見て、「やっぱりマス向けの大ヒット商品作りが重要だ」という先祖返りが起きてしまうことだ。マスの時代は明らかに終わろうとしているのに、それにすがりついてしまっては、ますます生き残れなくなってしまう。

特に、バブル期を知っている世代の人などの中には、「マス商品がバカ売れした時代」を忘れられない人たちがいる。今回のマス的なコロナ特需で妙に張り切っているこの世代の人がいたら、要注意だろう。

 

社を挙げて「転売ヤー」になるという愚

もちろん、時代の要請を的確に読み、マスを狙っていくという道を、私は否定するものではない。だが、それは結局、いわゆる「転売ヤー」と同じなのではないだろうか。

転売ヤーとは、どんなジャンルでもいいので売れそうなものを真っ先に購入し、「ヤフオク!」などのサイトで転売する人のことを指す。マスクを超高額で販売したり、ファン向けの非売品のノベルティを即座に出品したりして物議をかもすことも多い。

だが、そのことの道義的な是非をいったんおいて考えれば、「安く買って高く売る」というのは、ある意味ビジネスの基本ともいえる。だが、そのために彼らは常に最新情報を追いかけ、時には朝早くから並んでモノを手に入れなくてはならない。

しかも、一歩間違えばすぐに値崩れしてしまう。この手のビジネスは、需要に対して供給が足りていない場合にのみ成り立つものだからだ。マスクがまさにそうで、一時はひと箱3000円とかで売られていたマスクが、今は数百円で街のあちこちで売られている。

会社として、店として「フローを狙う」ということは、悪く言えば「社を挙げて転売ヤー活動をする」ことと同義だが、果たしてそれは持続可能なことなのだろうか。そしてこの「顧客消滅時代」に、果たしてやるべきことなのだろうか。

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