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デジタルグリッド「買い手にとって安く、売り手にとって高い再エネを実現」

2021年02月07日 公開
2022年10月20日 更新

【経営トップに聞く 第44回】豊田祐介(デジタルグリッド社長)

デジタルグリッド

「2050年カーボンニュートラル」を菅義偉首相が表明するなど、ますます注目を集めている再エネ(再生可能エネルギー)だが、「再エネは不安定だし、高い」というイメージを持っている人も多い。

そんな中、再エネの普及に向けて、これまでになかったサービスを2020年2月に始めたベンチャー企業がある。デジタルグリッド〔株〕代表取締役社長の豊田祐介氏に話を聞いた。(写真撮影:まるやゆういち)

 

再エネの普及を阻んでいるものは何か?

――2020年10月に菅義偉首相が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」と表明しました。

【豊田】高度化法(エネルギー供給構造高度化法)では、その前の2030年度に、再エネと原子力を合わせた非化石電源比率を44%以上にする方針が定められています。そのために政府は、再エネを約700億kWh、原子力を約2300億kWh増やすことを目指しています。

これは非常に高い目標です。2012年にFIT制度ができたことで再エネの普及が急速に進みましたが、それでも2010年度と2019年度を比べると、1091億kWhから1853億kWhへと、762億kWhの増加に留まっています。あと10年で、これまでの10年と同じくらい再エネを増やさなければ、目標を達成できないわけです。

しかも、この間の増加分の大部分を占める太陽光発電の電力の買い取り価格は、2012年の40円/kWh(10kW以上の場合)から、2020年には12円/kWh(50kW以上250kW未満の場合/250kW以上は入札)へと、大きく下落しています。

太陽光発電によって得られる売上が減っているので、このままでは太陽光発電への投資が進まなくなり、さらに目標達成が難しくなります。

――なぜ、そんなに買い取り価格が下がっているのですか?

【豊田】発電コストが大きく下がったからです。太陽光パネルは半導体なので、ムーアの法則が働いて、指数関数的に性能が良くなりました。また、シンプルな構造なので、中国で安価に製造され、大量に輸入されたことも要因です。

私は2012~16年頃に投資銀行でメガソーラーの案件に携わっていたのですが、当時と比べると、今は5分の1の価格で2倍の発電効率のパネルが買えます。

「再エネは高い」というイメージを持っている方が多いと思いますが、太陽光発電は10円/kWhくらいでも採算が合うほどコストが下がりました。火力発電と比べても、価格競争力は十分にあります。

――それなら、FIT制度がなくなってもよくなったのでは?

【豊田】そう簡単にはいかないんです。

電力会社は、特に家庭向けに、FIT制度の期間終了後の再エネも購入しているのですが、その価格は、2019年の東京電力で7.7円/kWh(税抜)でした。新規に太陽光発電をする場合、この価格では採算が合いません。

なぜ安くしか買ってもらえないのかというと、太陽光発電や風力発電は出力の調整が難しく、電力会社にとって扱いづらい電源だからです。

電気は、発電した分をただちに誰かが使ってくれないと、周波数が乱れて、最悪の場合、停電してしまいます。ですから電力会社には、自社の顧客の需要量と発電量を30分単位で一致させる「30分実需同時同量」が義務づけられています。

24時間365日、需要の変化を常にモニタリングしながら、発電所の出力を調整しているのです。再エネは、この調整がしづらいわけです。

電力会社に安くしか買ってもらえないのなら、自分たちで直接、顧客に電気を販売すればいいのかと言うと、それほど単純な話でもありません。需給管理のオペレーションは、ノウハウを持っている電力会社でないと、自分たちではとてもできないからです。

これからFIT制度が終了して、新規開発案件に取り組めない再エネ事業者が続々と出てきますし、期間終了と共に事業から撤退していく事業者も出てくる可能性があります。

――一方で、再エネを使いたい事業者は増えていますね。

【豊田】2017年に当社が設立されたときは、再エネ100%で事業活動をしようという「RE100」に参加している日本企業は〔株〕リコーだけだったのですが、今(取材時)は〔株〕セブン&アイ・ホールディングスやアサヒグループホールディングス〔株〕なども参加し、46社にまで増えています。

Appleは2018年に99%再エネを達成していて、自社製品の部品のサプライヤーにも、その部品を再エネで作ることを求めています。日本でも積水ハウス〔株〕が同様の取り組みをしていて、再エネの輪がさらに広がっています。

しかし、再エネを大量に調達するのは困難でした。電力会社から再エネを買うと、価格にプレミアがついて、10~30%も電気代が上がるからです。家庭なら大したことはないかもしれませんが、大規模に事業を展開している事業者にとっては、かなり大きな負担になります。

日本にある再エネは、FIT制度が始まる前からある水力発電の電気と、FIT制度による電気の2種類でほとんどを占めるのですが、2019年度にFIT電気として販売されたのは4.41億kWh。FIT電気全体のわずか0.5%です。高いから売れないのです。残りの99.5%は、火力発電など、他の電気と一緒にされて販売されています。

 

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