2021年01月21日 公開
2022年12月26日 更新
「はるやま」や「P.S.FA」、大きなサイズの「フォーエル」などを運営する、紳士服大手の〔株〕はるやまホールディングス。その社長を務める治山正史氏が、2020年10月、『きちんと楽ちん「テレウェア」』(小学館)という著書を出版した。その意図や、コロナ禍への対応についてなど、話を聞いた。
――『きちんと楽ちん「テレウェア」』は、具体的な服装のコーディネートを、写真も豊富に使って解説した本です。東証1部上場の大企業の社長がビジネス書を書くことはあっても、実用書を書くことはあまりないと思いますが、出版の意図は?
【治山】新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークが普及し、職場がオフィスから自宅など様々なロケーションに変わりました。働き方のコペルニクス的な大転換を迎えたと思います。
それに伴って、ビジネスウェアも大きく変化しました。しかし、「では、テレワークではどんな服装をすればいいのか?」と言えば、基準がなかった。そのために混乱が起きていました。クールビズが始まったときと同じ状況ですね。
実際、我々のお店に来られたお客様から、「テレワークが始まったのだけれども、どんな服を着ればいいのか?」というお問い合わせが非常に増えました。「画面に映るのは上半身だけだけれども、パンツはどうすればいいのか?」「ネクタイは着けるべきなのか?」「ジャケットは必要なのか?」「Tシャツでもいいのか?」といったお問い合わせです。
そこで、「基準を作りたい。我々としてできることは基準を作ることではないか」と思ったのです。
――それまでなかった基準を、新たに作ったのですね。
【治山】一読して「参考になったな」と思っていただけるだけでなく、クローゼットの中に入れておいて、誰にでも実用的に使っていただける本にしました。
例えば、「PART2」ではシーン別にコーディネートを紹介しています。「今日はリモート商談がある」という日なら「リモート商談コーデ」のページを開いていただき、「今日はデスクワークに集中しよう」という日なら「デスクワーク集中コーデ」のページを開いていただいて、参考にしていただければと思います。
根幹は、タイトルにもあるように、「きちんと楽ちん」です。仕事で着る服は、やはり、きちんとしましょう。ただ、オフィスに出社するわけではなく、自宅などで仕事をするので、楽ちんにしましょう、ということです。
そのうえで、もう少し具体的に、テレワークの服装に求められることをまとめたキーワードが「スマイリー」です。「スイッチウェア」「マナーウェア」「イージーケア」「リラックス」の頭文字を取りました。
自宅で仕事をするときは、気分を変えるスイッチを入れないと、効率が落ちます。ネクタイを締めるのでも何でもいいのですが、そのスイッチが入る服装をする必要があります。
そして、仕事ですから、画面の向こうの相手に対するマナーも重要です。
イージーケアというのは、汚れにくい、皺になりにくい、といったこと。集中して効率を上げるためには、リラックスできることも大切です。
さらに、クローゼットの中を仕分けすることもお勧めしています。テレワークに相応しいアイテムと、テレワークには向かないアイテムに、仕分けをするのです。テレワークに相応しいアイテムを「材料」にして「料理」をすれば、様々なコーディネートを楽しめます。
もう1つ、この本の特徴を挙げさせていただくと、丸首やVネックなど、服装の「形」が相手に与える印象についても解説しています。「色」が与える印象について解説している本は多いですが、「形」については、私の知る限り、ほとんどありません。
――こうした基準は、コロナ禍でテレワークが普及してから作った?
【治山】そうです。ただ、「服装の料理本」を出したいということは、もともと考えていました。料理本は、献立に悩んだときに手に取って、材料とレシピを調べるものですよね。そんな使い方をしていただける、「3分間クッキング」ならぬ「3分間ルッキング」の本を出したいと思っていました。
――コーディネートの例で使われているアイテムは、コロナ禍以前から御社が販売していたものですか?
【治山】ほとんどが従来からあった商品ですが、一部、テレワークを意識して新たに作った商品もあります。
更新:10月14日 00:05