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米国のデザインスクールで叩き込まれるブレストを超える3つのアウトプット法

2020年05月18日 公開
2023年02月21日 更新

佐々木康裕(Takramディレクター&ビジネスデザイナー)

 

視点を変えアイデアを生み出すアウトプット法

次に紹介するのが、「サムワンズシューズ」という発想法です。

直訳すると「誰かの靴」という意味で、自分の立場を離れて、他の誰かの立場になって考えてみる発想法です。

例えば、電機メーカーに勤める人が新しいゲーム機を開発するとしましょう。普段であれば、自社の他の製品や、競合他社のゲームを参照しながら新しい製品の企画を考えていきます。

しかし、こうした進め方をすると、今までの業界の標準的な製品からは代わり映えしないアイデアしか出すことはできません。サムワンズシューズでは、業界が違う人の立場になってみて、「(他業界の)〇〇という会社がゲーム機を出したらどうだろう」というふうにアイデアを広げていきます。

「〇〇」には、化粧品会社である資生堂がゲーム機を作るとしたらどんなゲーム機にするか、食品会社のサントリーだったらどんなゲーム機になるか、ツタヤだったら? という感じで、通常ならあり得ないシチュエーションで考えてみます。

 

未来視点で考えアイデアを生み出すアウトプット法

3つ目が「デロリアン」という発想法です。デロリアンは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てきた車型タイムマシンのことです。この手法では、マーティ・マクフライやドク博士が、タイムマシンに乗って未来に行ったように、未来人になったつもりで、新しいプロダクトやサービスについて考えてみる手法です。

 

 

例えば、今から10年後のスマートフォンを考えてみよう、20年後のテレビを考えてみるという感じで、未来にはどうなっているのかを空想してみる、タイムマシン的な思考法です。

最近、目標となる未来を定めて、そこから逆算して今何をすべきかを考える「バックキャスト」という手法が注目されていますが、デロリアンもそれと同じです。

バックキャストは、自社は10年後どうなっているか、自分たちのプロダクトはどうなっているか、未来はどういう景色になっているか、未来はどういう社会になっているのかなどをイメージして、そこから逆算して現在あるべきサービスやプロダクトを考えるとアイデアが生まれるという発想法です。

例えば、今は自動運転技術の開発が進んでいますが、10年後には空飛ぶ自動車が誕生しているかもしれません。そうやって想像しているうちに、「空のサービスエリアができるかも」と思いついたら、製品開発につながる展望が生まれます。

ただし、デロリアンは何年後の未来にするかという設定は大事です。100年後の遠い未来にするとイメージしづらいですし、あまりにも非現実的なアイデアになりがちです。

そこは業界の一般的な時間軸で考えてみるのがいいと思います。

自動車会社は5年後に出る車の仕様は決まっていると言われているので、10~20年後ぐらいがちょうどいい時間軸です。未来の高速鉄道を考える場合、リニアモーターカーは2027年に開業する予定なので、そこまでの未来はもう「考え終わっている」ようなものです。

したがって、2040年ぐらいの設定にしないとリニアモーターカーの次の乗り物についてのアイデアは生まれません。

一方で、食品のような消費財は数カ月~1年刻みで新商品を生み出していかないといけないので、5年後ぐらいに設定する方が現実的になります

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