2020年03月18日 公開
2022年06月07日 更新
――前出の「腐り芸人セラピー」は、その一例でもある。ほのぼのしたバラエティー番組にうまく対応できない、ひねくれた「腐り芸人」として、ハライチの岩井勇気さんやインパルスの板倉俊之さんにスポットを当て、新しい魅力を引き出した。
「もともと素の岩井君は『腐り芸人』的な物の見方をしていて、僕は面白がっていたのですけど、本人はそれをテレビの前で出してもウケないと思っていたらしいんです。僕は単に『その部分を出して大丈夫だよ』と言っただけですが、それが面白い企画になりました」
――他にも、『ゴッドタン』の看板企画「マジ歌選手権」は、東京03の角田晃広さんが歌を自作していて、それがダサ面白かったことをヒントにした企画だし、「キス我慢選手権」も、劇団ひとりさんのアドリブの上手さから「本人を追い込んだら面白いのでは」と生まれた企画だ。
「チャラいキャラクターのEXITが、『実は真面目』という一面を出したのも、『ゴッドタン』です。兼近大樹君やりんたろー。君は、打ち合わせをしているとものすごく真面目なので、収録中に思いつきで『ネタはしっかりした真面目な作り』とカンペを出したら、ハネちゃったんですね。当初のイメージと真逆のキャラクターなので、本人たちにとって良かったのか悪かったのかはわかりませんが(笑)」
――佐久間氏は、芸人だけでなく、後輩スタッフの「開けていない箱」も開けている。同局の人気ゲーム番組『勇者ああああ』を板川侑右プロデューサーが企画したきっかけは、いつもゲームの話をしているのにゲーム番組の企画を出さないことを佐久間氏が指摘したことだった。
また、ADの真船佳奈氏がADマンガ『オンエアできない!』(朝日新聞出版)で漫画家デビューしたきっかけは、他のテーマの作品ばかり書いていた真船氏に、「ADのことを書いたほうがいい」と指摘したことだ。
「真船は『甥おいっ子がかわいい』みたいな漫画を書いていたので、『自分しかできないことで、ムリしないでできることをやったほうがいいんじゃないの』と言っただけです。本人に合っている特徴のことを、業界ではよく『仁(にん)』と言いますが、売れるためにはその『仁』を見つけることがすごく大切だと思います」
――ただし、佐久間氏は、ムリに価値観を押しつけるようなことはしないという。
「芸人の中には、開けていない箱を開けてしまうとキャラクターが変わってしまい、やりづらくなる人もいます。だから、開けていない箱を開けるときは、ほとんどの場合、『いつもと違った打ち出し方をしますけど、いいですか?』と本人に確認を取ります。面白ければいいというわけではなく、あくまで相手にとってプラスになる形でやろうと考えています」
更新:11月22日 00:05