さらに、ラクに相手と会話を続ける上で、非常に役に立つキーワードがあります。
それは、「私も!」というフレーズです。
雑談は、お互いのキャラクターを知る作業と書きましたが、お互いのキャラクターの中に共通項を見つけて、「私も!」と感情の共有ができると、その会話に心地よさが生まれ、仲間意識が芽生えます。
だから、雑談がおもしろい人は、些細なことでも自分と相手との共通点を見つけると、「私もです!」と言って、感情を共有しようとします。
しかし、雑談がつまらない人は、この「私も!」というフレーズが出てきません。なぜなら、そうした人は、相手と自分は基本的に相容れないものだという考えを持っていることが多いからです。
だから、相手が自分と同じような感情を抱いたエピソードを聞いたときも、「へぇ、そうなんですね」と無愛想に言うか、「まあ、誰でも経験することかもしれませんね」と言って、話題を無駄に一般化してしまい、「私たちだけの共通点」というニュアンスを決して出さないのです。
あるいは、相手が「私も!」と共感してくれても、素直に受け入れずに、「いやいや、そんな単純なものじゃないですよ」と、必要以上に自分を卑下してしまったりします。たとえば、次の会話を見てください。
A 「私、実は1浪なんです。その1年は、人生で一番勉強したなって思います」
B 「そうなんですか! 実は私も1浪なんです。後がないから不安感でいっぱいで、勉強しないと落ち着かないみたいな、そんな気持ちになりますよね(しみじみと共感)」
A 「(少し機嫌が悪い感じで)いやいや、1浪って言っても、Bさんは◯◯大じゃないですか。私は▲▲大なんで、勉強したっていっても、まったくレベルが違いますよ」
B 「え、いやでも、どこの大学とか関係ないじゃないですか(笑)。浪人のときに一生懸命がんばったって話なんですから」
A 「(やや怒り気味に)そこは重要ですよ! 所詮、最後は結果ですから……」
B 「そ、そうですか(苦笑)……(この人、めちゃくちゃめんどくさいな……)」
いかがでしょうか。これでは雑談が盛り上がるはずはありませんね。
さて、インプロの基本中の基本に、「Yes, and」という考え方があります。これは相手の発言や感情などを、「Yes」と一旦受け入れ、その後で自分の意見やプラスアルファの情報を加えることで、台本のないトークでも盛り上がる、という技術です。
今回の場合、Aさんは、Bさんの「私も!」という発言を、「大学が違うじゃないか」と思っても、一度受け入れるべきでした。そして、「そうですよね。気持ちという意味では同じですよね! まあ、大学のレベルはまったく違いますけど(笑)」と一言いえば、このような事態は避けられたはずです。
相手の話を聞くときは「私も!」と「Yes, and」で、お互いの共感の度合いが高まる方向に会話を進めてみましょう。
更新:11月24日 00:05