今も昔も、「雑談が苦手」という悩みは尽きないもの。たとえば、「初対面で何を話していいかわからない」「話がつまらないと思われていないか不安」「とにかく沈黙が訪れるのが怖い」などなど...。
しかし、放送作家でありながら、科学的に研究されたトークメソッド「インプロ(即興力)」の養成講師として活躍する渡辺龍太氏によれば、雑談上手と雑談下手の違いは「紙一重の違い」に過ぎないと言う。
そこで今回は、そんな渡辺氏の著書『雑談がおもしろい人、つまらない人』(PHP研究所)の中から、「雑談が続く人、続かない人の違い」について語っていただいた。
温泉やバーなどに行くと、卓球台が置いてあることがあります。そんなとき、「卓球やろうよ!」と軽いノリで友人とラリーした経験のある人は大勢いるでしょう。そのときに、こんな人がいたらどう思いますか?
A 「じゃあ、いくよ!(Bが取りやすい球を出す)」
B 「おりゃ!(スマッシュを放ち、バチーンと大きな音が響き渡る)」
A 「うわ! スゴいね。いきなりスマッシュ?」
B 「まあね。卓球はつい真剣になっちゃうよね」
A 「そ、そうだね!(と言いながら、球を拾ってくる)」
B 「どんどんきて!」
A 「じゃあ、いくよ!(再び、Bが取りやすい球を出す)」
B 「おりゃあ!(再び、Bの激しいスマッシュが炸裂)」
A 「ほ、本当すごいね……。」
B 「これで2 −0だね。どんどんいこう!」
A 「う、うん……。(無言で球を拾いに行く)」
ハッキリ言って、とても嫌ですよね。温泉で汗をかくほど真剣に卓球をしたい人、酒が入った状態で激しいスマッシュのやり合いがしたい人なんて、ほぼ皆無でしょう。こういう場所では、疲れない程度に「ラリーを続けること」を楽しむものです。
実は、卓球のラリーは、雑談と似ています。雑談においては、お互いのキャラクターを把握することが何より求められますが、そのために必要なのが、疲れない程度にラリーを続けることなのです。
しかし、中にはBさんのように、雑談中にやたらスマッシュを打ちたがる人がいます。会話におけるスマッシュとは、やたら場違いな笑いを取ろうとしたり、必要以上にうんちくを語ろうとしたり、相手の間違いを過剰に訂正したりするような行為です。
そんなことばかりやられたら、相手は疲れてしまいます。これは、「話すことは好きなのに、思っているほど盛り上がらない」という人にありがちです。
さて、インプロにおけるコミュニケーションの基本をよく表している名言があります。それは、タモリさんの「やる気のあるものは去れ」という言葉です。
この言葉は、やる気のありすぎる人は、物事の中心ばかり見て、その周辺で起きているおもしろいことに気がつかないという意味です。雑談もこれと同じです。つまり、真面目に「常にスマッシュを狙う」ような話し方をしていると、周りから煙たがられてしまいます。
それより、肩の力を抜いてテキトーに話せばいいやというくらいの意識で、雑談はするべきだということです。そうすると、コミュニケーションの本筋から少し外れた「本当におもしろいこと」に気づいて、気の利いたトークや話題がどんどん出てくるはずです。
更新:12月10日 00:05