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ゴーン氏は必ず「次の手」を打ってくる……日本政府が決して放置してはならない理由

2020年01月10日 公開
2020年01月15日 更新

法木秀雄(早稲田大学ビジネススクール元教授)

彼の本質は「名声を得ること」にある

もう一つ、強く感じたことは、彼の倫理観の欠如だ。より正確には「自分のことしか考えていない人物」であることが改めて浮き彫りになった。

私は近著『「名経営者」はどこで間違ったのか ゴーンと日産・20年の光と影』において、ゴーン氏の行動原理を「WHY」というキーワードから読み解いた。これは、「WHAT」(なにをやるのか)ではなく「WHY」(なぜやるのか)からスタートするのが優れたリーダーの条件だという、サイモン・シネック氏のリーダーシップ論である。

ゴーン氏の初期の成功は、「日産・ルノーを世界トップ企業にする」という「WHY」をゴーン氏が持っていたことにより、日産社員の共感を得ることができ、元々持っていた実力を引き出すことができたことが、大きな要因だった。

しかし、ゴーン氏が絶対的な権力を手にする中で、そのWHYがいつの間にか「世界的な名声を得る」「大富豪となる」という個人的な欲求にすり替わってしまった。それが権力集中と独裁を生み、最終的には失墜の原因となった。

今回の会見を見て改めて、彼の行動原理がやはり「世界的な名声を得る」というところにあることを再確認した。

彼の倫理観の欠如は、自分の非を棚に上げ、自分を陥れたとして具体的な人物名を挙げて批判したことにも表れている。

私は日産に長年勤め、今でも多くの知人がいる。名指しされた人の中では西川廣人前社長と川口均前副社長を直接存じ上げているが、非常に立派な倫理観を持った人物だと言い切ることができる。

少なくとも、日本の法律を破り海外へ逃亡した人間に、彼らを批判する資格はないだろう。

 

際立ったゴーン氏のプレゼン力と、「日本語だけ」だった政府

さて、そんな会見内容ではあったが、これが世界中に流れてしまった以上、日本政府は早急に対策を講じる必要がある。

会見後すぐ、日本の森法務大臣が批判の声明を出したのは正しかったと思うが、さらに、ゴーン氏のようなプレスカンファレンスを開き、メディアからの質問を受け付けるとともに、発信そのものも英語で行うべきだと考える。

ゴーン氏の会見が世界中で注目された要因の一つは、英語とフランス語を巧みに使い分ける彼の語学力、プレゼン力も一因だ。

日本語のみでの発信ではどうしても、注目度は格段に落ちてしまう。

その点、韓国政府などは英語での発信を巧みに行っていると感じるが、日本はどうもこの点で弱いように思う。

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この会見は「最初の一手」に過ぎない >

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