2020年01月17日 公開
2023年02月24日 更新
例えば「ギフト・地域ワーク」にはボランティアや地域の活動、NPOなどがあり、「学習・趣味ワーク」には勉強会や社会人大学院、趣味のサークルなどがある。それぞれが学びの場となるが、「そうは言っても、どこへ行けばいいかわからない」という人もいるだろう。そこで、越境先をマッチングするサービスもある。
「『二枚目の名刺』というNPO法人は、会社で働く人たちとNPOを仲介するプログラムを提供しています。社会人を対象とした説明会で様々なNPOが自分たちの活動についてプレゼンし、興味を持ったNPOがあれば3カ月間のプロジェクトに参画して、本業と併行して週末や平日の終業後などに活動を行ないます。こうして実際に体験したうえで、『自分もメンバーに加わりたい』と思ったら、その後も継続して参加してもいいわけです。
最近は会社主導で社員を越境させる取組みも増えていて、大手企業からベンチャー企業へ一定期間レンタル移籍したり、現職を続けながら週に何度か他社の業務を経験させたりしている会社もあります。自分の会社にこうしたプログラムがあれば、手を挙げてみるのもいいでしょう」
自分に合う越境先が見つからなければ、自ら作ってしまうという方法もある。
「ある会社員の男性は、越境先を求めて異業種交流会などに参加したものの、自分のような普通の会社員には居心地が悪いと感じることが多かったそうです。そこで誰でも気軽に参加できる読書会を開いたところ、様々な業界・業種の会社員たちが集まるようになりました。
故郷とのつながりから越境の場を作った事例もあります。
福岡県宗像市の出身者が立ち上げた『リトルムナカタ』というコミュニティは、東京にいながら故郷を応援したいと考える人たちの集まりです。
最初は『宗像を盛り上げるイベントを東京でやったら楽しそう』という軽い気持ちで友人たちに声をかけ始めたところ、たまたま東京へ出向中だった宗像市の職員ともつながりが生まれ、副市長まで巻き込んだ大々的なイベントを成功させるまでになりました。
このように、越境をあまり大ごとに考えず、まずは自分が『楽しそう』『やってみたい』と思えることから気楽に始めるのが一番です。義務感ではなく、自発的にやるから学びになるのです」
こうした越境的学習によって得られるものは想像以上に多いという。
「特に大きいのは、『自分は何ができるのか』を見つめ直す良い機会になること。越境した先では、会社の名前や肩書きは通用しません。将来、プロジェクト型の働き方が主流になると、『あの人がいればミッションや目的を達成できる』と思ってもらえるものがなければ、メンバーとして招聘されません。ですから、会社の名刺が通用しない場を経験し、『自分の専門性やスキルはこんなところでも役立つのか』『会社の中では役立ったことが、ここでは通用しないのか』といった気づきを得て、自分を棚卸しすることが、未来のキャリアを切り拓くカギになります」
さらに、越境的学習は人生の幸福度にも影響する。
「会社から離れて自分を見つめ直すと、本当にやりたいことがクリアになります。自分のやりたいことができるのが、本当の幸せですよね。副業を解禁したある企業では、副業経験者の本業での成果が向上し、会社からの評価も軒並み上がりました。それは、会社の外で本当にやりたかったことに取り組み、人生やキャリアへのモチベーションが上がったから。つまり、個人が幸せになったから、結果的に本業にも良い影響があったのです。
本当にやりたいことを見つければ、人生の選択肢が増えます。一つの会社の中で出世するという成功モデルだけを追いかけるのが幸せなのか、本業以外にも楽しく過ごせる場所をたくさん持つことが幸せなのか。その答えを出すためにも、ぜひ会社の外への越境をお勧めします」
《取材・構成:塚田有香》
《『THE21』2020年1月号より》
更新:11月24日 00:05